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13. 侯爵家と伯爵家の格の違い


うっわぁ~すごい………………


私は目の前の巨大な客船を前に立ち尽くしていた。


『私と過ごす1週間は客船の旅なんていかがですか?◯月◯日迎えの馬車をリンベル伯爵家へ向かわせます』


数日前に届いたリアムからの手紙には客船の旅への誘いの文言が書かれていた。


この世に生を受けてから16年、剣を習うことに夢中で家族ともバカンスに出かけた事はなかった。知識として、我国が海に面し、小さな島が点在している事は知っていたが、初めて見る海と客船、そして賑わう港町の雰囲気に圧倒されていた。


この世界にも豪華客船が存在するのねぇ………



「リンベル伯爵家のアイシャ様でいらっしゃいますね。わたくし、こちらの船のクルーチーフをしている者です。ウェスト侯爵家のリアム様より客船内の案内を申し遣っております。リアム様は既に乗船されておりまして、ロイヤルスウィートにてお待ちですので、お部屋までご案内致しますね」


桟橋に着いた馬車から降りると、目の前の豪華客船のクルーチーフを名乗る男性が待っていた。彼に続きタラップを登り乗船すると目の前には豪華な装飾が施されたロビーが目に入る。


乗船前の慌ただしい雰囲気を横目にロビーを抜け通路を進む。


流石に船の中は限られたスペースにいくつもの部屋が作られるだけあって廊下は狭い造りとなっているが、等間隔に備えつけられた電灯の明るさのお陰か、思った程の圧迫感はない。


「こちらのフロアの奥にはメインデッキがございます。出航時はメインデッキにてセレモニーを行いますが、お泊まりになるロイヤルスウィートはバルコニーがメインデッキにせり出しておりますゆえ、お部屋からでも出航セレモニーはご覧頂けます」


クルーチーフからの船内説明を聞きながら進むと螺旋階段が目の前に現れる。


「この階段の上のフロアは、ロイヤルスウィート専用となっております。専属のコンシェルジュが随時こちらに待機しておりますので何なりとご用を申しつけくださいませ」


ロイヤルスウィート専属だと言うコンシェルジュを紹介され、階段を登ると先ほどの通路とは明らかに違う豪華な造りの廊下が見える。踏み入れた廊下の床にはビロードの絨毯が敷かれ、両サイドには凝った装飾のランプが等間隔に備え付けられている。


「先ほどロイヤルスウィート専用のフロアと言われましたが、扉がいくつもあるように見えますの。ロイヤルスウィートは何室かあるのですか?」


「いいえ。ロイヤルスウィートは一番奥の一室のみです。他の部屋は全てお連れになる使用人の方々が待機なさる部屋と荷物などを置く衣装部屋となります。ロイヤルスウィートは王族や公爵家、侯爵家の皆様が宿泊なさる事を想定して作られておりますので、お連れになる大勢の使用人の皆様のお部屋も必要になりますね」


我国では、侯爵家と伯爵家以下の貴族家との間には大きな格差が存在する。一番の違いは公爵家及び侯爵家は自領を持つ事を許されている事だろう。そのため、自領に住む人々からの莫大な税収は大きな収入源になっている他、独自の産業を発展させている領地もあり、伯爵家とは比べものにならない程の資産を有している。伯爵家以下の貴族家の中にも商会を経営する事で資産を増やしている家もあるが、自領を持つ公爵家、侯爵家の足元にも及ばない。リンベル伯爵家も父の王城執務官としての給金で慎ましやかに暮しているのが現状であった。


本当に不思議よね………


ノア王太子にキースにリアム。

王族に侯爵家子息である。


はっきり言って住む世界が違うのだ。伯爵家とは格が違い過ぎる。その中でも家長が騎士団長のナイトレイ侯爵家と宰相のウェスト侯爵家は、数ある侯爵家の中でもさらに別格だ。同じ貴族でも本来であれば三人共、雲の上の存在である。幼い頃からの知り合いでなければ、声すらかけてもらう事はなかっただろう。その三人から求婚されている事実が今でも信じられない。


そりゃあリンゼン侯爵家のアナベル様が激怒なさるのもわかるわぁ………


ポッと出の伯爵令嬢に王族と侯爵子息が一度に求婚するなんて前代未聞だ。


キースは、リンベル伯爵家との姻戚関係を望む政略結婚ではなく、私自身を愛していると言っていたが、彼が言うほどの魅力が、ただの伯爵令嬢である私に有るとは到底思えない。


………私自身に何か秘密があるの⁈


まさか、前世の記憶があるのがバレているとか?

それで前世の記憶と知識を手に入れ様と考えて………


………そんな訳ないか。

前世の記憶持ちである事は誰にも伝えていない。バレる要素が無いのだ。


では、何故私に求婚するのか?


そんな事をツラツラ考えながら歩いていれば、あっという間にロイヤルスウィートに着いてしまった。


『トントン』


「リアム様、失礼致します。

リンベル伯爵家のアイシャ様をお連れ致しました」


「あぁ。入ってくれ」


こうしてリアムとの1週間の船旅が幕を開けたのだった。


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