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7.妄想中(現実逃避中)………


「すまないキース。私は君との約束を守れそうにない」


「…ま、待ってくれ!リアム………

何があったと言うんだ?」


「父からの命令でリンベル伯爵家のアイシャ嬢と婚約する事になってしまった。私には父に逆らうだけの力はない。私の事は忘れてくれ………」


夕陽を背に走り去るリアムを見つめるキース………


「何故なんだリアム!俺との愛を貫くと言ったのは嘘だったのかぁぁぁぁ‼︎」


地面に膝をつき慟哭するキースに近づく影がひとつ。そっと肩を抱きしめられ紡がれる。


「………キース、リアムの事は忘れるんだ。

いや、私が忘れさせてあげる………」


「………ノア王太子殿…下……」


涙を流すキースの唇を強引に奪ったノア王太子殿下に身を任せたキースは………



………きゃっ❤︎


はぁ~いいわぁ。


夕陽に照らされた二人の美麗なキスシーンを想い描きため息をつく。


本当、私を巻き込まないで欲しい………


だだ今、私は妄想という名の現実逃避中です!





王城での波乱に満ちた社交界デビューを終え、満身創痍で家に着いた私を待っていたのはトドメの一撃だった。


帰宅して早々、ドレスを着替える間もなく父の書斎へ呼び出され向かうと、何故かソファに母も掛けて待っていた。


嫌な予感がするわ………


父に対面のソファに座るよう促され、腰掛けると母から切り出された。


「アイシャ、デビュタントとして参加した夜会はどうでしたか?」


「初めての王城での夜会で緊張しましたが何とかやり過ごす事が出来ました。まぁ、多少ハプニングはありましたが、概ね問題なく過ごせたかと」


イケメン三人とのアレやコレやは話さない方が良いわよね。言ったら最後、どんなお小言が待っているか分からない。デビュタントと言えども、アレはマズかったと自分でも理解している。事の重大さも。


「ダニエルから聞きましたが、ノア王太子殿下とキース・ナイトレイ侯爵子息、リアム・ウェスト侯爵子息と何かあった様ですね?」


「………っ‼︎」


………ドッキーン!………………

バレてる、バレてる、絶対バレてるよぉ。


「………はは、ははは………

いったい何の事でしょう?」


帰って早々、ダニエルお兄様の姿が見えないと思っていたら、きっちり報告に向かっていたらしい。事の重大さを理解しているだけに、これから始まるお説教が怖くて仕方ない。数日後に、今夜の事件がバレるのと、今バレるのとでは精神的ダメージがケタ違いだ。色々あり過ぎた今夜くらいは妄想に浸りながら安らかに眠りたい。最後の望みをかけて、しらばっくれる事にした。


「あら?何も無かったと。

わたくしが聞いた話ですと、アイシャはノア王太子殿下とファーストダンスを踊り、続けて二曲目も一緒に踊ったとか。その後は、キース様とも二曲ダンスを踊り、どこぞの令嬢に絡まれているところをリアム様に助けられ、婚約者宣言されたとかなんとか。この話はアイシャではない別の令嬢の事だったのかしら?」


全部バレてる、バレてるよぉ。

今更しらばっくれた事を後悔してもあとの祭りだ。

仕方ない。甘んじて叱られよう。


私は目の前の両親を見て覚悟を決める。


「………はい。今のお話は全てわたくしの事で間違いございません。なにぶん、右も左もわからないデビュタントだったもので、あれよあれよという間に、その様な状況になっておりました。申し訳ございませんでした」


「まぁ、社交界の寵児と言われている、あの御三方が相手ではアイシャに上手くあしらえと言ったところで無理でしょう。社交界デビューを機に早速仕掛けて来たと言う訳ですか………

アイシャは、社交界で未婚の男女がダンスを二曲続けて踊る意味を分かっていますね?」


「ダンスを二曲続けて踊る意味は、お互いが婚約しているか、それに準ずる状態にある事を示してます。男性側から求婚されているとか………」


「そうです。

貴方は今、社交界でノア王太子殿下とキース様とリアム様から求婚されているとみなされています。

この状態が長く続けば、貴方は三人の殿方を振り回す悪女としてのレッテルを貼られてしまいます。

早急に婚約者を決める必要があるのです。」


「………ですが!三人ともお断りする事も可能ではありませんか?」


「はぁぁ、アイシャよく考えてみてください。

王太子殿下に伯爵家より位の高い侯爵子息二人ですよ。伯爵令嬢如きが誰も選ばずお断りした日には、それこそ社交界で身の程もわきまえない愚かな娘とのレッテルを貼られる事になります。貴方は嫌でもこの三人の中から婚約者を選ばねばなりません。貴方には話してませんでしたが、この御三方との婚約話は一年前から出ています。王家、ナイトレイ侯爵家、ウェスト侯爵家それぞれから正式に打診もされています。今回の件がなければ、内密にお断りも出来たかもしれませんが、社交界に御三方から求婚されている事実が知れ渡った今、お断りは無理です。

………アイシャ、覚悟を決めなさい。

貴方も社交界デビューを果たした令嬢です。自身で責任を取らねばなりません。今回の件、あの御三方にしてやられましたね」


えぇぇぇぇ………

私にとっては完全に騙しうちじゃない‼︎

そんな婚約話が出ているなら先に教えてくれていたら、今夜の夜会での振る舞いも変わったかもしれないのに‼︎‼︎


今更ながら、両親にもはめられた事実に愕然としていた。絶対に私が断れない様に婚約話も隠していたに違いない。


私は父の書斎から退出すると、私室に戻りベットへ倒れ込んで考える。


………あぁぁぁ、ノア王太子にキースにリアム。

私はこの中から婚約者を選ばないといけないのかしら………


逃げ道を探すが、この三人を相手に逃げ切る策が思い浮かばない。


八方塞がりの状況に、私は考えるのを放棄して妄想の世界へダイブした。(冒頭に戻る………)






………数日後………

婚約話を回避する策を考える事を放棄した私は激しく後悔していた。



『婚約者候補三人とそれぞれ一週間ずつ過ごしてみなさい。先ずはお互いを知る事から始めてみたら❤︎

どう過ごすかはあちら側から指示がありますからねぇ~♪』


ご機嫌な母から伝えられた言葉に本気で殺意を覚えたアイシャだった。


アイシャ包囲網は着実に狭まりつつある。

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