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6.白き魔女の誤算【グレイス視点】


アイシャ・リンベル伯爵令嬢………

あの女はいったい誰なんだ⁈


ゆったりとした猫脚のバスタブに浸かり左右から美しい下僕達に全身を洗われながら、夜会で見た忌々しい女の事を考えていた。


信じられないわ。王城での夜会の主役は乙女ゲームのヒロインである私のはずでしょ‼︎


ノア王太子に手を取られファーストダンスを踊るのは私のはずなのに………


記憶にある乙女ゲームの世界では、今夜デビュタントとして社交界デビューを果たしたグレイスは、第一攻略対象者であるノア王太子殿下に一目惚れをされ、デビュタントの中からファーストダンスに誘われる。1回目のダンスが終わり、離れようとしたグレイスを強引に引き留めたノア王太子と2回目のダンスを踊った事で、グレイスの存在は婚約者のいないノア王太子の想い人として社交界で認識されるようになる。


しかし、周りの貴族の反応に恐れをなした彼女は、王太子から逃げるようにその場を後にしたが、運悪く彼との婚約を目論む悪役、アナベル・リンゼン侯爵令嬢と取り巻き令嬢に捕まり、夜会の片隅で罵倒されている所にリアム様が現れ助けられた事で、第ニの攻略対象者と出会う。


夜会から数週間後、息抜きに街に出たグレイスは、悪役令嬢が差し向けた暴漢に襲われそうになっていた所をキース様に助けられ第三の攻略対象者に出会う事となるのだ。


そして、三人との仲を深めていく中で、グレイスは『白き魔女』である事を彼らに打ち明け、幼少期から養父に『白き魔女』としての力をいいように使われてきた事実を話すと、ナイトレイ侯爵家とウェスト侯爵家は『白き魔女』を護る両翼であり、王家は保護する立場である事を知らされる。


最後は養父と手を組んだ悪役令嬢こと、アナベル侯爵令嬢を断罪し、一番好感度が上がった攻略対象者と結婚するハッピーエンドの筈なのに………


………アイシャ・リンベル伯爵令嬢?

あの女の記憶が一切ない。


ヒロインである私の立ち位置にいたあの女はいったい何者なのだ!


しかも、一番最後に出会う筈のキース様と二回もダンスを踊り、悪役令嬢のアナベルに罵倒され、それをリアム様に助けられ婚約者宣言。


なぜあの女は攻略対象者三人から求婚されているのだ⁈


あの場所に居るのはヒロインである私でしょうが‼︎


あの女に対する怒りが湧き起こる。





私は呼び鈴を鳴らし、専属執事であるセス・ランバンを呼び出した。この男は、奴隷商から買った私の下僕達とは違い、ランバン子爵家の息子であり、執事と言えども貴族である。黒目黒髪の端麗な容姿が、私の好みどストライクであるにも係わらず、貴族であるがために手出しが出来ない。


私の痴態と引き換えに、変態ドンファン伯爵へセスを専属執事に据える様に交渉するのが精一杯だった。


まぁ、セスから私に手を出させればいいだけの事よ。そうなればセスは私の物………



「グレイスお嬢様お呼びでしょうか?」


私は下僕の膝の上に跨がり、左右から二人の美丈夫の手によりマッサージという名の愛撫を全身に受けていた。セスが入って来た扉からは私の秘所が丸見えになっているはずだ。


「今夜は王城の夜会で屈辱的な事があって、わたくしとっても傷ついているのよ。

セスに慰めて欲しいのだけどダメかしら?」


私はセスに見せつける様にさらに股を広げてみせる。


「その様なご命令はお受け出来ません。グレイスお嬢様の可愛いペット達なら喜んで慰めてくれると思いますが、そこに居る三人で足りなければ、他の者達も呼び、まぐわればよろしいかと」


能面の様な顔は私の痴態を見ても一切変わらず、紡がれる言葉は辛辣だった。


少しくらい狼狽えてもいいでしょ。

あぁ、つまらないわ………


「冗談よ。ある女の事を調べて欲しいの」


下僕からバスローブを受け取ると軽く羽織り、セス以外の者達を下がらせる。


「アイシャ・リンベル伯爵令嬢とノア王太子殿下、キース・ナイトレイ侯爵子息、リアム・ウェスト侯爵子息の関係よ。あとはアイシャとかいう女の情報とリンベル伯爵家の情報を集めて欲しいわ。醜聞や弱味なんかも分かれば上出来ね」


「リンベル伯爵家というと王妃様の妹君が降嫁した家ですね。その関係でか、伯爵家であるにも関わらず、公爵家や侯爵家など高位貴族との繋がりも強いかと思います。アイシャ嬢は、ノア王太子殿下の従兄妹でもありますし、兄君のダニエル様はリアム様と共にノア王太子殿下の側近でもあります。その関係でアイシャ嬢と王太子殿下、リアム様はお知り合いだったのではありませんか。キース様との関係はわかりませんが」


なんだその華々しい交友関係は⁈

なのに私の記憶の中の乙女ゲームには名前すら出て来ていないなんて、意味が分からない。


私と代わりヒロインポジションに突如現れた女。

気味が悪いわ………

私の知らない所で何かが起こり出しているのだろうか?何とかしてあの女を排除する手立てを考えなければならないわ。


「セス、どんな情報でもいいわ。

アイシャ・リンベル伯爵令嬢について調べてちょうだい!」


「かしこまりました」


私はセスが部屋から退出するのを確認すると、呼び鈴を鳴らし可愛い下僕達を呼び、めくるめく官能の世界へ落ちていった。

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