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22.あぁ、無情………


何か言ったらどうなのよぉ………


師匠と入れ替わり入って来たキースは無言のまま部屋に置いてある椅子に座るとそのまま下を向き沈黙を保ち続けている。


私は起き上がる事も部屋を出る事も出来ないのだから、ダンマリしているならさっさと出て行って欲しい。


………数十分後………


相変わらず何も言わないキースに焦れた私はとうとう口を開いてしまった。


「話す気がないなら出て行ってくださるかしら?」


「………」


………無視ですか。

あぁぁぁイライラする‼︎


「黙ってないで何か言ったらどうですか?ルイス様に言われて来たのでしょ。話す気がないならさっさと出て行って!」


「お前のせいで………

お前のせいで兄上はナイトレイ侯爵家の跡取りになれなかったのに、何で兄上の輝かしい未来を奪ったお前を弟子にしないといけないんだ‼︎

お前さえ生まれて来なければ兄上は俺に跡取りの座を譲らなくて済んだのに!

しかも格下のマクレーン伯爵家に婿入りしなくても済んだのに!

兄上を不幸にしたのはお前なのに‼︎‼︎」


憎悪の篭った目で睨まれるが、キースの意味不明な戯言に私の怒りのボルテージも上がる。


「………はぁ⁈貴方何言ってらっしゃるの?ナイトレイ侯爵家のお家事情に私を巻き込むのはやめてください。全く私、関係ないじゃない。そんな事で私を憎んでいたと言うの!バカバカしい」


「何がバカバカしいんだ‼︎

リンベル伯爵家にお前さえ生まれなければ、ナイトレイ侯爵家は兄上が継げたんだ。お前が生まれたから、リンベル伯爵家と姻戚関係を持ちたい父上は、年の近い俺を跡継ぎに代えたんだ。

兄上の未来を奪っておきながら、弟子にもなるなんて厚かましいにも程がある。

どうせ弟子の座だってリンベル伯爵家の力でも使ったんだろ‼︎」


………なんだその子供の様な言い分は⁈


キースのボルテージが上がれば上がる程冷静になってくる。


「私との婚約がどうとかと言っておられましたが、それは置いておきましょう。

今の話は全くもって私には関係有りませんよね。

もし仮に私の存在が本当にルイス様の跡取りの座を奪ったとしても、それでルイス様が不幸になったと言えるのですか?」


「兄上は格下のマクレーン伯爵家に婿入りすることになったじゃないか!」


「一度でもルイス様にマクレーン伯爵家に婿入りして不幸だったか聞いた事があるのですか?

私から見たルイス様と奥様はとても仲睦まじく幸せそうなご様子でした。あのご夫婦ほど、お互いを信頼し合い、仲睦まじいカップルはいらっしゃらないかと」


「えっ⁈………………」


キースの目が驚きに見開かれる。


「それに貴方がナイトレイ侯爵家の跡取りに相応しくない、ルイス様こそ跡取りに相応しいと思っているなら、どうしてそれをルイス様やナイトレイ侯爵様に言わないのですか?しかも、ルイス様と奥様の普段の様子すらご存知ないですよね?お二人をきちんと理解し、奥様とも交流を持たれていれば、ルイス様がマクレーン伯爵家への婿入りをどう思っているか分かるはずです。

貴方の抱いている私に対する憎悪は、ただの八つ当たりです。何の行動も起こさない人から5年間も八つ当たりされ続けた私の立場を考えて頂きたい。

話はそれだけです。貴方と話す事はもう有りません。お帰りください!」


項垂れ肩を落としたキースが退室していく。


あの憎悪が兄に対する罪悪感から来る八つ当たりだったなんて、本当バカバカしい。あの様子では、ルイス様の奥様ともマクレーン伯爵家とも、ずっと交流を避けて来たのだろう。自身の殻に閉じこもり、周りの意見に耳を塞ぎ、私への恨みを募らせ、心に溜まった鬱憤を晴らすため、何も知らない私をサンドバッグ代わりにするなんて本当に最低だ。

少しは反省してもらいたいものだ。






『トントン』


「アイシャ、リアムだ。入るぞ」


部屋に入って来たリアムを見て、先程までのキースに対するモヤモヤが晴れていく。


「身体の状態は大丈夫か?」


「まぁ、全身痛いわねぇ………

ここに運んでくれたのはリアム様?」


「あぁ。気を失ったからな。

ここは、医務室内の個室だ。動けるようになるまで居て大丈夫だ。

ところで、さっきまでキースが来てたのか?アイツとは和解出来たのか?」


「和解って、ないわね………

結局私は5年間ずっとキースの八つ当たりを受けてたらしいわ」


「はぁ?何だそれ?」


私は事の顛末をリアムに全て話していた。


「………くくっ………ははは………

アイツもルイス様の事になるとバカになるらしい。

八つ当たりとは、傑作だ」


隣で爆笑するリアムにジト目になる。


「ちょっと笑い過ぎよ!

理由もわからず5年間も翻弄された私の身にもなってよね!」


「まぁ、アイツの馬鹿な八つ当たりのおかげでアイシャとの二人だけの時間を取れたのは僥倖だったがな………」


「えっ⁇何か言った?」


椅子から立ち上がり近づいて来たリアムに肩を優しく掴まれ引き寄せられる。


「本当鈍感なんだから………

何とも思ってない奴に5年間も付き合う訳ないだろう。」


「………っ‼︎」


リアムに見つめられ優しいキスが落とされる。


「アイシャ覚えておいて。

君の事を誰よりも愛しているのは私だという事を………」


最後に抱きしめられリアムが部屋から立ち去る。


………愛している⁇


「えっ?!えぇぇぇぇ………」


静かな医務室にアイシャの大絶叫が響き渡った。






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