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21.意外な結末


「………」


一陣の風が吹き抜ける中、私は短剣を構えキースと睨み合っていた。


「とうとう血迷ったのか。

そんな短剣で俺に勝とうなんて馬鹿につける薬はないな。今日で目障りなお前が俺の前から消えるかと思うとせいせいする。精々がんばるんだな」


なんとでも言えばいいわ………


師匠とお姉様方、そしてリアムが見守る中、私は短剣を握り直し走り込んだ。


キースの容赦ない一撃が振り下ろされるが、短剣の刃でなんとか受け止める。


………相変わらず重い剣だこと。


手がビリビリ痛むが必死に堪え、刃を滑らせ下からキースの懐に飛び込み肘鉄を喰らわせるが、所詮女の力では限界がある。鋼のような固い筋肉に阻まれ大したダメージは与えられない。反対に肘鉄を喰らわした腕を取られ捻り上げられてしまった。


「………うっ…わぁぁ………」


苦痛に歪む私の顔を見てキースが意地悪い笑みを浮かべる。


「そろそろ諦めて降参したらどうだ?」


「………ま、まだよ」


「そうか………なら死ねばいい………」


私は背後からキースに突き飛ばされ地面に叩きつけられ転がる。ハッと気づいた時には目の前に剣の刃が迫っていた。すんでのところで身体を反転させ交わし、地面を転がる。


「さっさと諦めて、令嬢は家で刺繍でもやってろ!」


長剣を肩に担ぎ高笑いをするキースにも腹が立つが、8年間の私の努力と全ての女性を見下したかのような物言いに私の中の怒りが爆発した。


アイツには逆立ちしたって勝てないのはわかっている。でも私は自分なりに努力して来たのだ。

師匠やお姉様方、そしてリアム………

皆んなが協力してくれてここまで来れたのだ。そんな協力者の事までアイツは侮辱した。私の事は殺したいほど憎んでいたっていい。でも私の大切な人達を侮辱した事は絶対に許さない。


私の中の怒りが闘争心を掻き立てる。


ここで負ける訳にはいかない!

一矢報いるまでは………


吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられて痛む身体を叱咤し立ち上がる。重く動かない足を引きずりゆっくりとキースとの間合いを詰め、再度構え直したキースの長剣が目に入ると同時に最後の力を振り絞り駆け出した。


………相討ちでも構わない………


短剣の柄を強く握り直しキースに突進する。


振り下ろされる長剣をギリギリで避け、勢いのままキースの懐に剣を打ち込んだ。




気づいた時には短剣を握りしめたまま地面に倒れていた。


………やっぱり負けたのか………


「………勝者、アイシャ………」


「………えっ⁈」


私の勝利を告げた師匠の声に、重い身体を起こすと地面に倒れたキースが見えた。


………何が起こったの?


目の前には信じられない光景が広がっていた。


あのキースが倒れている………


その場に居合わせた全員が倒れたキースを見つめている中、いち早く我に返った師匠がキースに駆け寄り、状態を確認している。


「すまんが、このまま救護室へ向かう………」


意識のないキースを背負い師匠が立ち去ると、私も緊張の糸が切れたのかそのまま意識を手放した。








………ここ何処かしら?


真っ白な天井に開け放たれた窓から爽やかな風が吹き込みカーテンを揺らしている。


起き上がろうとして身体の節々が痛み諦めた。


………あの後、私どうしたのかしら?


キースが倒れて、意識がないアイツを師匠が背負い。


記憶がそこで途切れている。


私も気絶したのね………


わたし、キースに勝ったのかしら?


でも不思議よね………

確かにあの時、自分の中から溢れ出した力を感じた。

きっと怒りで火事場の馬鹿力を発揮したのだろう。まぁ、最後に一矢報いる事が出来た。これで悔いなく立ち去る事が出来る。


結局キースが何故わたしをあそこまで憎んでいたかは分からず仕舞いだったけど………

アイツは過去の人、さっさと忘れましょう!




「アイシャ、入るぞ」


扉を開け入って来たのは師匠だった。


「身体は大丈夫か?」


「ははは、全身痛いですぅぅ……」


「まぁ、あれだけやり合えば仕方ないだろうなぁ。

でも最後にキースに勝てたんだ。今まで頑張って来た甲斐があったな」


「………私、本当にキースに勝てたのですか?あの時は無我夢中で気づいたら地面に倒れてて、アイツも倒れていた。

どうなったか全く覚えていないんです」


「………あの時、キースが振り下ろした剣を交わし、アイツの懐に飛び込んだアイシャの短剣の一撃が腹に入ったんだろう。アイツが咄嗟に長剣の刃で短剣の刃を防いでいなければ模擬刀と言えども大怪我をしていただろう。アイツの長剣の刃は完全に折れていた」


「そうですか………

どうしてあんな力が出たのか?

人間、切羽つまると火事場の馬鹿力が出るもんなんですねぇ~」


「………はっ⁈お前、何も気づいていないのか?」


「何がですか?」


「まぁいい。知らん方が幸せな事もある。

気にするな………

それよりも、アイシャはこのままキースと仲違いしたまま別れてもいいと思っているか?」


「私は会った時からキースには何の感情もありません。あちらが一方的に私に敵対心を抱いているだけかと思いますが………

私だって毎回、殺意の篭った目で見られ、酷い言葉を浴びせられれば嫌いになります。今さらアイツと話す事なんて何もありません」


「アイシャはキースがどうしてそこまで君を嫌っているのか知りたいとは思わないのか?

俺はキースの兄でもあり、剣の師匠でもあったんだ。弟子が仲違いしたままなのは寂しい。

出来ればこれを機会に歩み寄れないだろうか?」


「私が何をしてもアイツの気持ちが変わらない限りどうしようもないと思いますが………」


「実は外にキースを待たせている。アイツもアイシャと話をしたいそうだ。

………二人で話し合ってくれ!」


「………えっ⁈…し、師匠?

待ってくださいぃぃぃぃぃ………」


それだけ言うと師匠は扉に向かい手を振り去ってしまった。


アイツが私と話したいなんて嘘でしょ‼︎


………逃げたなぁ………


思うように動かない身体を恨めしく思いながら天を仰いだ。


私も逃げたい………

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