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14.伯爵令嬢、騎士になる?


………うへ…うへへ………


持つべき友は強力な権力を持つ王女様よねぇ~


クレア王女泣き落とし大作戦が功を奏したのか、はたまた不気味な迫力に負けたのか引きつった顔の彼女から騎士団への見学の約束を取り付けた私はご機嫌だった。


私室のベットの上で今日のお茶会でのやり取りを思い出す。

妄想パラレルワールドにダイブしていたから記憶が曖昧だけど、なんか王太子がキース・ナイトレイとか言ってなかったか?

リアムとキースは幼なじみ………


以前王城の廊下から見た青髪の男の子がキースだったのだろうか?


あの日の事が思い出される。


リアムの屈託のない笑顔なんて初めて見た………


誰に対してもニヒルな、どこか馬鹿にしたような笑みしか見せないのに、青髪の彼に向ける笑みだけは違った。心の底から湧き出た自然な笑みだと思った。


リアムにとってキースは誰よりも特別な存在なのだろう。


あの日と同じように胸がモヤモヤするが、前世を含めても恋愛経験がないアイシャには理由がわからない。


まぁ、私には関係ない事よ………


考える事を放棄した私は、騎士団への熱い想いを胸に眠りについた。






数週間後、私はウキウキしながら王城へと向かった。


今日は待ちに待った騎士団見学会なのだ!


数日前にクレア王女から騎士団への見学が許可された旨の手紙を受け取り、今日まで眠れない夜を過ごした(妄想のため)

まぁ、途中興奮のあまり鼻血を噴き出しベットが血まみれになり夜中の大騒動劇に発展した時は流石にマズイと思ったが。


………夜中に叩き起こされるハメになった使用人の皆様、本当に申し訳ありませんでした。


そんな事を回想しながら王城の門扉についた私は、いつもの侍従と目が合いニッコリと微笑み、背を向け歩き出した侍従に続き歩き出した。


すっご~い!とうとうアイコンタクトのみで意思が通じるようになったか………


4回目の訪問で侍従と変な信頼関係が築かれた事に感動を覚える。


ヨシヨシ、城の侍従にも私の存在は認められてきたようだ。将来の就職先なら味方は多いに限る!


侍従に続き歩きながら将来の展望に思いを馳せていた。





「アイシャ!ここよぉ~」


王城の一番裏手にあるだだっ広い広場の端に設えられたお茶の席、小さな丸テーブルにイスが二脚。

そこに腰掛けたクレア王女が手を振っている。数名の侍女が紅茶を入れたり日傘を差し掛けたりしているが………


「………??」


………あれ?今日は騎士団の見学をさせてもらえるはずじゃなかったのか?


遠くの方に小屋のような建物は見えるが、だだっ広い広場を見回しても騎士団らしき格好をした者達は見当たらない。


「クレア様、今日は騎士団の見学をさせて下さるのではなかったのですか?」


「今、騎士団は遠征練習に行っていて居ないのよ。それに幼い令嬢に荒々しくむさ苦しい男達の練習風景を見せるのはちょっと………って言われてしまったの。」


………がーーーん………………


あまりのショックにその場に膝を着きそうになる。


………私は…私は………

荒々しくむさ苦しい男達の練習風景を観たいのよぉぉぉぉ………


今にもエグエグと泣き出しそうな私の表情にクレア王女が若干引いている。


「………ア、アイシャ、代わりと言っては何だけど、子供達の練習なら見学させてくれるみたいよ。

ほらっ!あそこ。出て来たわ!」


子供達の練習風景⁈


クレア王女の言葉に振り返り広場をガン見する。


………うわ!小っさ‼︎


遠くの方で剣らしき物を振りながら練習を開始した子供達が見えるが距離があり過ぎて顔すら判別出来ない。


「クレア様、もっと近くで見学をしてはダメでしょうか?」


「………邪魔をしなければ近くで観てもいいのではないかしら」


私の落胆振りに、若干引きながらも近くに行く事を許してくださる。


駆け出したい気持ちを抑えゆっくりとゆっくりと近づいて行くき、数十メートル離れたところで立ち止まった。その場でジッと動かず見学を開始した私に気づいた者達の困惑した視線に晒されるが無視だ。


目の前にはパラダイスが広がっていた。


イケメン揃いとはいかないが、前に立つ教官の指示の元、一糸乱れぬ動きで剣を振る動きは芸術的ですらある。


飛び散る汗、荒くなる息遣い、真剣な眼差し………(妄想)


………はぁ~………たまらん………………


これが肉体美溢れる成人男性でないのが悔やまれる。


私はヨダレを垂らす勢いでガン見しながらあらぬ事を考えていた。


どうしたら遠征練習に行っている騎士団本丸の練習風景を覗けるのだろうか………?

まだ幼い男の子達でこれだけ興奮するのだ。何としてでも騎士団本丸を見てみたい!


………さて、どうしたものか?


「………‼︎」


しばらく見学しながら考えていた私に天啓が降りてきた。


休憩に入ったところで教官に近づき尋ねる。


「練習中のところ申し訳ありません。わたくしリンベル伯爵家のアイシャと申します。ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか?」


目の前の精悍な顔立ちの教官が爽やかな笑顔を見せながら目線を合わせる様にしゃがんでくれる。


「なんだい?小さなお姫様」


………うっひょお~笑顔が眩しいわぁ!


この方、30歳位かしら?

黒髪の短髪に優しそうなタレ目、そしてバリトンボイス………

………タイプだわぁ~❤︎


「あのぉ、今日は練習を見学させて頂きありがとうございました。それで不躾な質問で申し訳ないのですが、女性が騎士団に入る事は出来ないのでしょうか?」


「はっ⁇アイシャちゃんは騎士団に入りたいの?」


「はい。決して皆さまのお邪魔は致しません。

練習場の端の方で皆様の練習を見ながら私も剣を習いとうございます。」


先ほどまでの優しい雰囲気が変わり真剣な面持ちで諭される。


「剣は遊びで握るものではない!

貴族令嬢のお遊びに付き合う程、騎士団も暇ではないんでね」


背を向け歩き出してしまった教官を慌てて追いかけ、手を掴む。


「お待ち下さい!決してお遊びなんかじゃございません‼︎

………と、とある事情がありまして剣を学びたいのです!」


振り向いた教官にここぞとばかりに伝家の宝刀涙目攻撃を仕掛ける。


アイシャ、出来るだけ儚く見せるのよぉ………


「………とある事情?」


「今はお話出来ませんが、自分の身は自分で守れる様になりたいのです。

………もう大切な人を失いたくない!

お願いです。わたくしを騎士団へ入れて下さい。」


最後に一粒涙を零し、俯いた私を除き込む様に目の前の教官が座り頭を撫でる。


「複雑な事情があるようだな。

騎士団に女性が入れるかと言えば、入る事は可能だ。実際に数名の女騎士が在籍している。しかし、入団には試験がありそれをパスしなければならない。

基礎的な剣の扱いが出来、剣技披露では模擬試合も行われる。そこで実力を測り認められれば入団となる。

一度も剣を握った事がなければ絶対に受からない。

君は剣を握った事はあるのか?」


「………いいえ………

でも、諦める事なんて出来ないのです!」


「では、親御さんに剣の師匠をつけてもらうことは?」


万が一、お父様にバレたら一生家から出してもらえなくなるわなぁ。


私はブンブンと首を振る。


「まぁ、貴族令嬢が騎士団に入るとか言い出したら自分が親でも必死で止めるわなぁ~」


思案顔の教官が私の頭を優しくポンっとたたき、ニッと笑う。


「よし!わかった‼︎

俺が稽古をつけてやるよ。」


「えっ!よろしいのですか?」


思わず前を向いた私の目に困り顔で眉毛を下げた教官の優しい顔が飛び込んできた。


………キュン………


「あぁ。週に一回程度しか稽古出来ないが、基礎は教えてやれる。王城でのコイツらの練習が終わってからだがいいか?」


「もちろんです!教官ありがとうございます。」


ガバッと頭を下げた私に教官の笑い声が響く。


「………ははは…………

俺の名は『教官』じゃなくて、ルイス・マクレーンって言うんだ。騎士団の副団長をしている。」


「えっ!えぇぇぇ、副団長様ですの‼︎」


「まぁ~役職などどうでもいいだろう。

アイシャ!よろしくな‼︎」


頭を撫でつつニカッと笑う子供の様な笑顔にキュン死にしそうになっていたアイシャは、またも予期せぬ大物を釣り上げたらしい。


………師匠ゲット!………………



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