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11.二度あることは三度あると言う


『リンベル伯爵令嬢アイシャ様

クレア王女殿下より王城でのお茶会のお誘いでございます。

◯月◯日◯時、王城にお越しください。私的なお誘いです。ドレスコードはございません。お待ちしております』


また来たよ………


私は王城からの呼び出しの手紙を受け取り大きなため息をついていた。


それにしても王城も招待状、手を抜き過ぎじゃないかしらねぇ。


私は3枚の招待状を机に並べ呟く。


「………全部文言同じですけど………」


そんなどうでもいい事を考え現実逃避しなければやってられない程、私は疲弊していた。


確かにクレア王女には、酷い事をしてしまったと反省している。面と向かい謝る機会が出来たと考えれば、今回のお茶会への誘いは願ったり叶ったりだ。


しかし、平穏を望み自身の趣味を満喫したい私にとっては、これ以上王族と関わるのは避けたいところだ。


まぁ、今回だけよ。


さすがに紅茶をぶっ掛け、平手打ちした女とクレア王女も親しくなりたいとは思わないでしょうしね!

潔く謝って、さっさと退散しよう。


私は王城という名の魔窟に再び飛び込む決意をした。



………数日後………


王城の門扉の前に到着した私は、王妃様とのお茶会の時に待っていた侍従と再会した。


「リンベル伯爵家のアイシャ様ですね。クレア王女殿下がお待ちです。案内致しますので此方へお越しくださいませ。」


何故か、前回より私を見る目が違う気がするのは気のせいだろうか?

相変わらずの無表情なのは変わらないが、なんだか見つめられた目が熱を帯びてるようなぁ。


直ぐに背を向け歩き出したので真意の程は不明だったが、その後が違った。


私のペースに合わせゆっくりと進む侍従の後ろ姿に、私の脳内は??となる。


王妃様から叱責でも受けたのかしらねぇ~?

私、チクってないけど………


早足になる事なく進む事が出来た私は廊下に飾られた絵画や彫刻、大きくとられた窓から見える美しい庭園をゆっくり愛でる事が出来た。


………ふふふ…あの美しい庭園の生垣からひょっこり美少年なんか現れたら最高なのに………


軽く脳内妄想を繰り広げていた私は、目の前の光景に足を止めそうになる。


本当に青髪の美少年とリアムが生垣から出てくるではないか!


しかもあのリアムが親しげに笑いながら会話をしているように見えた。


「アイシャ様、どうなさいましたか?」


あまりの衝撃に足を止めてしまっていたようだ。


「………ほほほ…何でもありませんのよ。

ただ庭に知り合いが居まして驚いただけですわ。さぁ、参りましょう。」


再び歩き出した侍従に続き歩き出す。


リアムでもあんな風に笑う事があるのね………


なんだか胸がモヤモヤする釈然としない気持ちのままクレア王女の待つ茶会席へと、侍従に続き大理石の廊下を歩いて行った。





「リンベル伯爵家アイシャ様をお連れ致しました」


私が通された部屋は、可愛らしい家具や煌びやかな調度品が置かれ、花柄のカーテンが窓の脇に留められ、フリフリのレースのカーテンが風で揺れるファンシーなピンク色の部屋だった。


何とも目がチカチカする部屋だ。

クレア王女殿下の私室だったりして………


花柄のソファで寛ぎながらお茶を飲んでいたクレア王女の目の前のソファを示される。


私は恐る恐る近づきソファの側でカーテシーをとり挨拶をする。


「リンベル伯爵家のアイシャでございます。この度はお招き頂き誠にありがとうございます。身に余る名誉、リンベル伯爵家を代表して感謝申し上げます。」


「堅苦しい挨拶は要らないわ。

ここはわたくしの私室です。人払いもしています。どう振る舞ってもらっても大丈夫よ。」


人払いしてる………?

どう振る舞ってもいい………?

………これは、私との決着を着けようってことなのぉぉぉ


私の頭の中で開始のゴングが鳴り響く。


………イヤイヤイヤ…マズいでしょ………


冷静に冷静に………まずは謝ろう………


………そして………逃げる………………


私は数歩後退し、扉の位置を確認すると、クレア王女に向かいガバッと頭を下げた。


「先日の数々の無礼、誠に申し訳ございませんでした‼︎‼︎

頭に血が昇ったとはいえ、王女殿下に対し紅茶をぶっ掛け、あまつさえ平手打ちをかました事、やり過ぎてしまったと反省しておりますぅぅぅぅ」


令嬢としての優雅な言葉遣いなど無視し、平謝りする私にクレア王女が返す。


「………覚悟は出来ていると」


クレア王女の醸し出す雰囲気が黒いものに変わる。


………私…死ぬ………………


「ごめんなさいぃぃぃぃぃ」


私は後ろを振り返り全速力で扉に向かい走り出す。


………何で開かないのよぉぉぉぉ………


必死にドアノブを回すがいっこうに扉が開く気配がない。


必死のあまり気づかなかった。


背後に近づいていたクレア王女が私の肩に手を置く。


「………捕まえた………………」


「………ひっ‼︎」


………死んだ………………………




「………くくくっ………………

取って喰おうって訳じゃないんだから逃げなくてもいいじゃない。」


「………ふぇ⁈」


急に砕けた調子のクレア王女に面食らい振り向くと肩を震わせて笑う王女と目が合う。


目に涙を溜め笑い続ける王女に拍子抜けしてしまう。


「ごめんなさいね。あまりに面白かったからつい………

人払いしていたのは、先日のお茶会の事をきちんと謝ろうと思ったからよ。

王女としては無闇に人前で頭を下げる訳にはいかないの。自身の尊厳にもかかわることだしね。

でも貴方にはきちんと謝りたかったの。

貴方に臣下に対する王族としての重要な心構えを諭された時目が覚めた。

今までの自身の行動は()()()()そのものだった。

気に入らない事があれば周りに当たり散らし、王女なのだからと誰もが私に傅いて当たり前だと思っていたわ。貴方の言う通り上位の者が下位の者に対して振る舞う行為の責任も考えずにね。

………あれから色々調べたの。

沢山の侍女が私のせいで辞めていったわ。その者達がどうなったかまではわからなかった。

誰しもが口を噤んでいる事実が、悲惨な末路を辿った事を物語っていた。

私はどうしようもない性悪女だったのよ」


顔を両手で隠し静かに泣いている彼女は、あの醜悪なまでの傲慢な姿が消え失せ、別人の様だった。


私は肩を震わせ泣くクレア王女の横に座り抱きしめ言葉を紡ぐ。


「今までの行いを消すことは出来ませんが、自身を省みて反省し後悔している今の貴方は変わることが出来る。

傷つき去って行った者達のためにも良き王女になってください」


私の言葉に耐えきれなかったのか膝の上に突っ伏し、声をあげ泣き続けるクレア王女の背中を優しく撫で続けた。



………数刻後………


私は泣き止んだクレア王女に手を握られ迫られていた。


「お願いよぉ、アイシャ………

わたくしのお友達になってちょうだい!」


「………イヤイヤイヤ、わたくしに王女殿下のお友達なんて恐れ多い事でございます。クレア王女殿下には、相応しい容姿も頭も良い高位貴族のご令嬢方とお友達になられた方がよろしいかと存じます。

侯爵令嬢とか侯爵令嬢とか侯爵令嬢とか………」


「わたくしはアイシャと友達になりたいの!

うん。と言うまでこっから出さないんだから‼︎」


私を友達にしたいクレア王女とこれ以上王族と関わりたくない私との攻防は、クレア王女の猛烈なアタックに屈した私の完敗で幕を閉じた。


本当に本当に私の平穏どこ行ったぁぁ………

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