五対一〇八
「――ああ、何だと言うのだこれは。貴様ら……、あまり、褒められた行いだとは言えないぞ」
それは、ガウには聞き覚えのある、声。
それは、真正面の軍勢の後ろから聞こえた。
――だ、誰?
彼女が確かめる間もなく。
「これでも食らうがいい!」
いきなり、天を突く光の柱が立ち上がる。
円形に現れた光の柱はあっという間に直径を広げ、ガウの正面の兵隊を殆ど呑み込んだ。
すると、光の中は無重力なのか呑み込まれた男達は空に舞い上げられる。かなりの高さまで舞い上がるといきなり柱が消え、今度は反対に重力に引っ張られて落ちてきた男達は、全員が地面に叩きつけられぴくりとも動かなくなった。
「たった四人に貴様ら何だ、この多勢は! 恥を知るがいい!」
――あいつは。
呆然と、ガウはこちらに歩いてくる男を見つめた。
「そんなお前らには、この私が鉄槌を下してやろう!」
男、真緑に光る瞳。
剣が振られる。
即座に現れる光の柱――今度は、ガウ達の右側の軍勢が巻き上げられ、地面に叩きつけられた。
あっという間に敵は三分の一以下。
「えーとね。五対、二十三だよ、今」
のほほんとしたレンカの声。
だが、敵を殆ど倒した男は剣を支えに膝を突いてしまう。肩で息をして苦しそうだ。
それを見て取るや、残った軍勢が男に襲いかかる。
「おっ、こいつはまずい」
――誰だか知らないが助かった。
サンタクララ、揚々たる登攀者――起動。
「姐さん、行けるな」
ええ、当たり前でしょ――音を鳴らし黒刀、構えてガウ。
「一気よ!」
「おうさ!」
二人、残った男達に飛びかかり、それぞれ、剣と拳を振り上げた。
騎士道が許さなかったらしい。
ナヨリは、取り囲まれているのが自分を屈服させた一団だと知り、それでも尚、騎士道精神に反しているあの状況が我慢ならなかったのだと。
辺り一面、そこら中に呻き声を上げる動けなくなった私兵が転がり、立っているのはたったの五人。
ウード、ガウ、レンカ、サンタクララ、そして――ナヨリ・エフロン。
尤も、かなり無茶をしたナヨリだけは剣を支えに片膝を付いた状態ではあったが。
「ありがとう。あんた、実はとっても強かったのね」
しゃがみ込み、ナヨリの顔を覗き込むガウ。
「何であの、光のばーって奴、私との戦いでは出さなかったの?」
「そ、それは……」
騎士たるもの、女を叩きのめしてはいかんのだ、と、ナヨリは力なく言う。
ガウ、溜息ついて。
「何それ、負けるくらいなら出せば良かったのよ。まあ」
それでも私が勝ったけどね。
にかっ――ナヨリに笑って見せるガウ。
手負いの騎士、それを見て苦々しい顔をした。
「で、レンカ、どう?」
ナヨリの傷の具合を診ていたレンカ。
「うん。これなら行けると思う」
「行ける? どういうことか」
「え? いやだから、ハイレンでなら治せますよ、って……」
「ほ、本当かっ、本当、なんだなっ」
思わずレンカの両肩を掴み、即座に襲ってきた激痛に息が止まるナヨリ。呻き、傷を押さえて身体を丸める。
「おいおい。そそっかしい奴だな」
側で見ていたサンタクララ、苦笑する。
「外では、もう治らぬと、そう言われておったのだ……」
喘ぎ、切れ切れに声を発するナヨリ。
その様が可笑しくて吹き出すサンタクララ――吊られて、ほか三名。
「な、何が可笑しいっ。き、騎士を愚弄、するかっ」
ナヨリ、蹲り、痛みに震えながら反論を精一杯。
――ああもう。騎士って、なんて面倒臭いの。
ガウの素直な感想だった。




