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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第三部 精霊都市へ
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舐めるなよ

 「これは、また……」

 サンタクララはガウと顔を見合わせる。

 辺りは兵隊で埋め尽くされ、逃走できそうなルートはない。


 「はははははっ、見たか! 我らの兵力(ちから)! さあ、少女を置いていけ!」

 「だ、駄目だよ……、ガウ」

 ガウ達の正面の兵隊の群れ、先程の大男が先頭に立って勝ち誇る。その腕には、首を締め上げられ、息も絶え絶えのウード。


 「当たり前でしょ、誰が渡すもんですか」

 ウードはガウの声を聞いてにこりとする。


 ――君も必ず助けるからね。

 ガウは黒刀を構える。


 「いや、しかし……」

 黒刀とクラウドナイン、それだけでこの軍勢を抜けるのか?

 サンタクララは自分の力には絶対の自信をもっていたが、この数を一度に相手した経験はなかった。


 「何よ。ビビってんの?」

 「おいおい、煽るねぇ。(あね)さん」

 両拳を握って、再びクラウドナインを起動するサンタクララ。


 「近付くなよ! この少年がどうなってもいいのかっ」

 ――まずは少年だな。

 塔の中と違って、(ここ)なら全速力が出せる。



 ひしめく兵隊達。サンタクララは目を閉じて集中力を蓄える。



 近づくな、と大男は言ったが。


 ――その手の警告、俺には意味がないんだよ。

 「急に眼を閉じてどうした? おい!」

 「諦めろ! この数だぜ!」

 「何だ、観念したのか!」

 「ちょ、ちょっと――サンタクララ?」ガウも、いきなり瞑目(めいもく)したサンタクララに、戸惑って。


 ――盗賊(オレ)敏捷性(スピード)を。

 かっ、と目を見開く。


 ――()めるなよ。


 ふ。



 サンタクララが――大男の視界から、消えた。



 「な、なにっ?」

 大男、消えた盗賊を目で探す。

 だが、最高速の盗賊を、(こと)に、最高速のサンタクララを。



 ――目で追えると、思うな。

 次に大男が彼を知覚した時、それは。

 「がはっ!」

 真下から現れたサンタクララの拳が、自身の腹にめり込んだ後だった。


 「ぐ、ぐう……」

 鳩尾(みぞおち)に受けた衝撃に、たまらず膝から崩れる大男。ウードは投げ出され、サンタクララは受け止めたかと思うと、今度は驚異的なジャンプ力でガウの側まで戻った。



 「レンカ、ウードを頼む」

 「わ、分かった」

 気絶しているウードに、回復魔法をかけるレンカ。



 すぐさま気が付くウード。(かぶり)を振りながら起き上がった。

 「あ、あれ――?」

 「大丈夫? ウード!」

 ガウが彼に駆け寄る。



 「僕は大丈夫。でも、これ……」

 立ち上がりつつウード、一応小型盾(バックラー)の装備を確かめる。



 「四対、えーと……、何人だろ」

 指で敵を数えながら、レンカ。



 「この俺が一人減らしたからな、今やってるカウントから(いち)、引いておけよ、レンカ」



 「あんたねぇ、こんな時になに言ってんの」

 ガウはため息を付き、だが、精一杯の(から)元気。



 「こ、こいつらっ」

 「油断するなよ! 相当の手練(てだ)れどもだ!」

 じりじりと間合いを詰めてくる軍隊。



 黒刀(ガウ)クラウドナイン(サンタクララ)はウード、レンカと共に後ずさる。



 ――いっそ塔に逃げ込むか?

 ――悪くないわね。





 ちらりと背後――塔の入口――を見るガウ。

 塔に逃げ込んで時間を稼げれば――。



 ――各個撃破なら勝機はあるかも知れない。だが、こちらの体力は? ウードやレンカは? きっと、()たないな。

 逡巡(しゅんじゅん)するサンタクララ。




 ――ウードとレンカを置いていく訳には行かない!

 決意で己を研ぎ澄ますガウ。

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