親睦会
殺されかけた相手であるリリーと仲良くなろうとする、意外と心が強いニーナであった。
どうもこんにちは、ドラゴン娘のリリーちゃんと共同生活をすることになった、ニーナです。
放課後に宛てもなく学園をさまよっていたら、特Aクラスでトナカイさん、と楽しげに話しているリリーちゃんを見つけました。
遠巻きに同じクラスらしき生徒が遠巻きにリリーちゃんを眺めていましたが、本人はわれ関せず、といった様子です。
ぬいぐるみに話しかける姿は、トナカイさんが意思を持っていることを知らないと、ぼっちをこじらせて心を病んでしまった、かわいそうな少女にしか見えません。
周りを気にせずトナカイさんに話しかけるリリーちゃんを見ていて気づいてしまったんですけど、もうトナカイさんのことを隠す気ないですよね。
少し前に、秘密を知られたからにはーって殺されかけたんですけど。
非常に複雑な心境ですが、落ち込んでばかりいるわたしではないのです。
わたしの長所はポジティブなのです。
というわけで、いいことを思いつきました。
一緒に生活しているリリーちゃんともっと仲良くなるため、親睦会を行うのです。
思い立ったら即行動!
わたしはまっすぐリリーちゃんのもとに走って行きました。
「おーい! リリーちゃーん!」
リリーが教室でトナカイと楽しく会話していると、入口の方からニーナが満面の笑みで駆け寄ってきた。
「どうし「さぁ、行きましょう!」……どこに?」
「せっかくルームメイトになったんですから! もっと、こう、仲良くなるんです! と、いうわけで今から親睦会をしましょう!」
「え……うん。別にいいけど、親睦会って、何をしたらいいの?」
「もちろん、おしゃれなカフェでお茶会です! この学園にはオススメのカフェがあるのです!」
用件を聞くと、同じ部屋で暮らす者同士親睦を深めるための会を開こうというものだった。
「やっぱり仲良くなるには親睦会よね! 何をしてるのリリー! 早く行くのよ!」
「おぉ! となかいさんは既に行く気満々って感じがしますよ! さぁ、こっちでーす!」
「レッツゴーなのよー!」
突然の提案にリリーがびっくりしていると、一緒にお菓子という言葉にトナカイが飛びつき、二人で颯爽と駆け出した。
「……えっ、私、置いてかれてる。待ってー!」
リリーも置いて行かれないよう、急いで席を立って追いかけた。
「この学園って、とても広いね。私が元の姿になっても問題なく暮らせそうなくらい広い」
「リリーちゃんって、元の姿はそんなに大きいんですか?」
「うん……あそこに建物があるでしょ? あれより背が高い」
「うえぇぇ!? あれ、この学園で一番大きな建物ですよ?」
「……見てみる?」
「遠慮しておきます! こんなところで急にドラゴンが出てきたら、大騒ぎになっちゃいます!」
「うん? たしかに、そうだね」
「たしかにリリーのドラゴン姿はとても目立つのよ! 大きくてかっこいいのよ!」
「と、となかい……褒めても何も出ないよ?」
「なんだかリリーちゃんが照れてますねぇ。可愛いですねぇ。」
この学園は広大で、敷地内に様々な店がある。
「ここがイチオシのカフェですよ! この学園に来たからには、一度はこのカフェでお茶しないとダメなんです!」
「そうなんだ。だめなんだ」
「とてもいい匂いがするのよ!」
「ささ、メニューをどうぞ。今日は私の奢りです!安いから私のお財布でもなんとかなるのです!」
「じゃあ遠慮なく……どれもおいしそう」
その店の一つであるカフェの一角で三人はメニューを眺めていた。
生徒を対象にしているため、とてもリーズナブルなお値段にもかかわらず、出てくるものは非常に質が良いと評判の、学園内店である。
トナカイとリリーはおいしそうなスイーツのメニューを見て、目を輝かせた。
「ふふっ、こうやってお菓子に目を輝かせている姿は、とてもドラゴンとは思えませんねぇ」
そんな二人の姿をニーナはほほえましく思いながら眺めていた。
「これはとてもおいしいのよ! 素晴らしいのよ!」
「ごくごく……この飲み物は不思議な味がする。おいしい」
「こんなにおいしいのに、とても安いんですよねー! 今日は珍しくあまりお客さんがいませんけど、いつもは行列ができるんですよ!」
「そうなんだぁ。うふふ、となかい、お菓子おいしいねぇ」
「おいしいのよー。リリー、いつになくご機嫌ねぇ」
注文したお菓子や飲み物を楽しみつつ、ニーナはリリーに様々な質問をした。
そのやり取りを、QA形式で見てみよう。
Q.どんなところに住んでいたのですか?
A.遠い山奥で生まれましたが、人間に住処を追われてここまで来ました。
T.なんで二人ともそんな口調なん?
Q.た、大変な思いをされたんですね……?
A.ええ、正直人間を見たら殺すくらいに憎んでいたのですが、となかいと出会って救われました。
T.となかい、最初はリリーに食べられかけ……もがっ!?
Q.そうですか……ちなみにご趣味は?
A.特にありませんが、強いて言うならとなかいです。
T.もがが! もぐもぐ……
Q.え……趣味がとなかいって。
A.となかいです。
T.もぐ……お菓子おいしいのよ! じゃなくて無理やり口に突っ込むのはもがーっ!?
Q.あ、はい……この学園に入るに至った経緯は?
A.今も人間に対してあまり良い感情を持っていないのですが……人間ばかりの世の中ですから、人との関わり方を学ぶべきと、知り合いにこの学園を勧められました。
T.もぐもぐ……となかいは大人しくお菓子食べてるのよ……
Q.そ、そうでしたか……あ、学園に入ってから何か心境の変化はありましたか?
A.まだ入学してあまり経っていないので、まだ何とも言えませんが……いろんな人間がいるんだな、と思いました。
T.ここのお菓子はとてもおいしいのよー! となかいにも作りかたを教えて欲しいのよ!
Q.なるほど……そういえば、となかいさんとはどのようなご関係で?
A.先ほどの質問でも触れましたが、私はとなかいに出会い救われました。
人間の姿にしてもらったとき、私はとなかいに一生ついていこうと決めました。
となかいと一緒に過ごすうちに、となかいの大らかさ、面倒見の良さ、優しさといった良い面だけでなく、うっかりさんなところや食べ物に目がないところ、警戒心が全くないところ、後先考えず行動してしまうところなど、残念なところが意外とたくさんあることを知りました。
となかいがうっかりさんなので、私がしっかりして支えねばと、頑張って勉強してきましたが、ダンジョンへお使いに行ったとき、未熟な私が危機に陥り、となかいに再び救われました。
そのときはただ運がよかっただけ……ではありましたが、事実となかいに二度も救われたのです。
更にその帰り道、盗賊に遭遇したのですが、となかいは盗賊に捕まった私の為、戦ってくれたのです。
今まで他人に危害を加えることのなかった、となかいが、私の為に、戦ってくれたのです!
……少し興奮しすぎました。
私はドラゴンですが、一匹の……今は人間の姿なので一人の、ですが……なんせ女なのです。
となかいの優しさや包容力に、出会った時から惹かれていましたが、そのうえ私のことを心配して普段しないようなことをしてくれたのですよ!
わかりますか、この気持ちが!
更にそのとき垣間見たとなかいの強さ!
私はドラゴンですから、それなりの強さを自負しています。
さすがに、人間の姿でドラゴン時ほどの力は出せませんが……その私が、負けるかもしれないと思うほどの、強さを、見たのです!
優しさ、包容力に加えて強さを見せつけられたんですよ!
そりゃ惚れますよ!
もうイチコロです!
今までドラゴンとして生きてきて、辛いことしか無かったのです。
ドラゴンというだけで人間に恐れられ、攻撃され続けた!
周りには誰一人味方はいなかった!
そんな中、となかいが!
となかいだけが!
私を恐れず、牙を向けても優しく包み込んでくれたのです!
それだけではとどまらず強くて守ってくれるなんて!
となかいはこれ以上私を惚れさせてどうするつもりなんですか!
となかいは私が甘えるとなでなでしてくれるのです!
そして何時間もふもふしても受け入れてくれるのです!
そんなとなかいが、私は……私は……!
Q.わ、分かりました!
分かりましたから落ち着いてください!
ほら周りがびっくりしてこっちを見てるじゃないですか!
ほら座って!
はい、深呼吸してー!
飲み物でも飲んで落ち着いて!
……ってこれお酒じゃないですかぁぁ!
いつの間に飲んでたんですか!
何でリリーちゃんの飲み物だけお酒!?
というか学園のカフェでお酒を出すなぁぁぁ!
となかいさんも両手で顔を隠してぷるぷるしてないで、リリーさんを止めてください!
思わぬリリーさんの愛の告白を聞いて恥ずかしがっている場合ではないんですよ!
そもそも今まで散々いちゃつきやがってたじゃないですか!
今更何を……ぁぁぁいけませんリリーさん!
となかいさんを押し倒して何するつもりなんですかぁぁ!
ここ、カフェですから!
いやカフェじゃなくてもダメですけど!
となかいさんもされるがままになってないで抗って!
oh、情熱的なKiss……
なんて言ってる場合じゃない!
ここカフェですからぁぁ!
もおぉぉぉ!
この状況どうすればいいの!
あぁぁもぉぉだれかこの人たちをとめてぇぇぇ!!
この惨状は、騒ぎを聞きつけた学園長が駆けつけ、物理的な雷を落とすまで続いた。




