外伝_転入生の噂
特Aクラスに在籍する、とある生徒の独り言。
俺が籍を置いている特Aクラスに転入生が来てから、しばらく経った。
転入生の噂は瞬く間に学園中に広まっていった。
ある日の放課後、俺が学園のロビーの片隅に置いてある椅子に座り、読書を楽しんでいると、耳に様々な噂が入ってきた。
「あの学園長が直々に入園を許可した転入生とか、普通ならありえないよな。興味が沸くよな!」
「そうだなー。でもあんまりいい噂は聞かないぞ?」
「すごい内容の噂が多いよな!」
転入生が初日から今まで数多くのことをやらかしていると、他クラスの生徒が噂をしている。
「転入生は幼い少女らしいぞ! しかも、すっげぇかわいいってよ!」
「常に人形と会話しているらしいぞ……愛着も異常らしい。転入生は人形狂いじゃないのか?」
「あの転入生が持ってる人形、時々勝手に動いてないか? 何かいわくつきの人形なんじゃないか?」
「私の友達が戦闘学を学んでいるんだけど……転入生が先生との戦闘訓練で爆発したらしいわよ」
「おれさ、人形に連れ去られる転校生を見たんだよ……いや夢じゃないんだって!」
「そういえば保健室の中で怪しげな儀式をしていたって、誰かが神妙な顔をして言ってたな」
爆発する転入生とは一体何なのだ。
きっと噂が伝わる過程で、内容がねじ曲がってしまったのだろう。
確かに転入生は幼い少女だし、初日に人形を悪く言ったやつをぶちのめしていたので、全ての噂が嘘ではないのかもしれない。
大事な人形を使ってぶちのめすのはどうかと思うが。
実力は確かなのだということは、あの一件でよくわかった。
クラスの中でも実力者である、やつが簡単にやられたのだ。
油断していたとはいえ、やつと転入生は数歩ではきかないほどの距離があった。
あれで不意打ちを受けるなら、それだけ力の差があるということだ。
転入生について考えていると、噂の転入生がロビーに来た。
「おい、噂の転入生だぞ!お前声かけてこいよ!」
「ここで話しかけるとかどんな勇者だよ……」
「遠くから見る分には可愛いよな! 初日の光景を見てなかったらナンパくらいしてたかもしれんよな」
「幼い子をナンパとか、かなり引くんだが……骨が残ってたら拾ってやるぞ?」
「いや、いかねーよ!」
現在は放課後なので、ロビーには友人と話をしていたり、黙々と本を読んでいる生徒がいる。
転入生に気づいた生徒たちは、一斉にそちらを見た。
様々な視線を一身に受ける転入生は、そしらぬ顔で空いていた席につき、抱きしめていた人形をテーブルに座らせ話し始めた。
「料理の勉強、おいしかったね」
「……となかいは、料理人になるの?」
「……ふふっ、となかいらしいよね」
「あの子、人形に話しかけてるぞ。友達いないのかな」
「年相応なんじゃね? あのくらいの子は人形遊びくらいするだろ?」
「そりゃそうかもしれねーけどさ、あの子特Aクラスだろ?普通のやつなわけねーじゃん?」
「それもそうだよなぁ……」
うれしそうな顔をして人形に話しかける少女の姿はかわいらしかった。
「おーい! リリーちゃーん!」
「「!?」」
「誰だあの子、転入生に話しかけたぞ!」
「すげぇな! 勇者ってのは本当にいたんだな!」
人形に話しかけている転入生のもとに、元気そうな女生徒が一人駆け寄って行った。
勇気ある生徒の姿に騒然とする他生徒。
「さぁ、行きましょう!」
「……どこに?」
「せっかくルームメイトになったんですから! もっとこう、仲良くなるんです! と、いうわけで今から親睦会をしましょう!」
「え……うん。別にいいけど、親睦会って、何をしたらいいの?」
「もちろん、おしゃれなカフェでお茶会です! この学園にはオススメのカフェがあるのです!」
この場の空気を読んでいないのか、あえて読まないのか、駆け寄った女生徒は転入生に親睦を深めるため食事をしようと提案していた。
どうやらルームメイトらしい。
「おぉ! となかいさんは既に行く気満々って感じがしますよ! さぁ、こっちでーす!」
心なしかルームメイトも人形に話しかけていたり、人形が目を輝かせてうなずいているように見えるが、今の俺は授業後で疲れているのだろう。
「……えっ、私、置いてかれてる。待ってー!」
女生徒と人形が率先して駆け出し、遅れて席を立つ転入生。
特Aクラスに入ってきた不思議な転入生が、今後何をやらかすのか楽しみだ。




