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王子と会った次の日のこと。





「でさでさ、この間宰相さんがもってきた小説がさ、恋愛小説なの!でも勇者と聖女の恋愛!もうあり得ないわ…」


2人で楽しく今日あったこと、最近のわかったこと、王宮にはこんな変な人がいるなどクレアちゃんと食べるお昼ご飯の時に話す。

ふとクレアちゃんが真剣な顔つきになる。どうしたの?と言うと、周りのメイドさんや騎士さんに少しの間私達2人だけにしてほしいと言って出て行ってもらった。


「あのね、大事な話があるの」

「大事な話?」

「ほら、この国の人って黒髪に異常なほど反応するでしょ?だからちょっと調べてみたの」

「聞きたい!聞きたい!」


彼女の調べによると、この世界には沢山の人の国と一つしかない大きな魔の国がある。人の国と魔の国は互いに敵対しており、今の人の国と魔の国の関係は史上最悪と言えるほどらしい。

人の国では絶対に黒髪の人はいないそうだ。なぜなら、黒髪は魔の国を作った神の髪色だからだという。しかし、ごくまれに異世界から黒髪が人の国にやってきて黒髪は災いをもたらすらしい。

この災いとかどうたらこうたらは伝説や夢物語ではなく、実際に起きたことたんだと。

ある黒髪は干ばつをもたらし、ある黒髪は全ての人の国に及ぶほどの伝染病をもたらしたとか。

しかし、どの黒髪の災いも魔の国ではなんの影響も出ていないので、黒髪は魔の国の人間兵器だという噂もあるらしい。


「だからなのかぁ〜。理由がわかって納得だよ。だから皆私に怯えてるんだ〜」

「これは早急に帰らないといけないわね。人の国に迷惑をかけちゃうわ」


そんなに怖いのならば黒髪の私を殺しちゃえばいいのにと思うのは私だけだろうか?あ〜、私は一応黒髪だけど聖女だから殺せないのか。聖女殺しちゃったら魔王から人の国を救えないもんね。


「なんか本当に小説の中に入ってしまった気分よね」

「クレアちゃんとお城ってすごい似合ってるから絵になるよ。今日の洋服も可愛いね!」



そうして、私達はきゃっきゃうっふしながらこの時間を楽しんだ。





「ねえねえエミリア。あんたはなんで黒髪の私に脅えないの?」


夜ご飯を食べ終わり、少しエミリアとおしゃべりする。


「最初はそりゃーユリ様のこと怖かったですよ?でもユリ様の侍女として使えていくうちにユリ様が災いをもとらす黒髪に思えなくてですね…。いろいろと吹っ切れたんですよ」

「ふーん」


そういいながら夕食の片付けをするエミリア。そうよね、エミリアって図太そうだから災いとかが起きてもけろっと生きてそうだよね。


「私、ベランダに出てるから片付け終ったらあんたも来なさいね」

「わかりました」





「うわっ…今日はちょっと寒いかも。羽織るもの持ってこればよかった」


寒くて身震いする。いつ見てもこの世界の夜空はとても綺麗だ。こうやって一ヶ月の間ずっと星を眺めているとたまにオーロラらしきものが見えることもある。日本にいたころは絶対にできなかった体験だ。ある意味こういう点ではこっちの世界に来てよかったと思う。旅行代も無料だし。


「くっそ…あの性悪宰相め…。こんなところに閉じ込めやがって!いいかげん飽きたんだよ!!」


拳でベランダの手すりを殴る。…すっごく痛いです。


「こんばんは。手、大丈夫?」

「大丈夫じゃない。痛いです…ってあんた誰?どこから来たの!?」


いつの間にか私の隣にいた男。えっ?誰だよ!?どこから入ってきたんだよ!?ちょっと!エミリア!!

ちょうどそのときエミリアが私の羽織るものを持ってきてベランダにきた。


「ユリ様ぁ〜。今日は寒いので上着を…って!?えっ!?魔の国の王子!?」

「は?魔の国の王子?冗談はやめてよ!?」


私達があたふたしていると、例の魔の国の王子かもしれない人が私の腰に手を回して自分に引き寄せた。

離れようと力一杯押し返すが全くびくともしない。


「あんた生贄だよな?」

「は?生贄?エミリア、私って生贄だったの?」

「え?ユリ様って生贄だったんですか?」


え?え?と2人で言ってると魔の国の王子(仮)もえ?と言い出した。


「えっ!?あんた生贄じゃないの!?ヘルシュタで生贄が召喚されたって聞いたんだけど!?」

「え?私って聖女じゃなくて生贄だったの?」

「えっ!?マジかよ!?聖女なのかよ!どうしよう…生贄かと思ってワクワクしながら来たのに…しかも聖女…でも一目惚れしちゃったし…」


ごにょごにょごにょごにょと魔の国の王子(仮)かなにか言ってます。後半の方はなにいってるかわかりませんでした。

とりあえずこの人は私を生贄と勘違いしてこっちに来てしまったわけだ。人の国と争っているというのに魔の国の王子(仮)は人の国に来てもいいのか?


「あんた本当に魔の国の王子なの?」


恐る恐る質問する。


「ん?まあ、王子だけど。ほら、この目見ろよ」


彼の目は血のように赤い真紅の色だった。目が何とエミリアに視線を送ると、魔の国の王族は目の色が赤いらしい。そういえば、このヘルシュタの王族は皆髪の色が金髪だってクレアちゃんが言ってたっけ?


「駆け落ちするか」

「…駆け落ち!?駆け落ちって両思いの男女が親に結婚反対されてするものじゃないの!?私、あんたのことどうも思ってないから!!」

「ひどいな〜、でも魔の国に行くことはもう決まってることだから」


そういって私をお姫様だっこする。ちょ!?やめて!恥ずかしい!

降ろせ!と抵抗するがまったくおろしてくれない。


「じゃあ、この子は貰ってくからね!…暴れると落ちちゃうよ?」


ばさりばさりと鳥が羽ばたく音がする。って!?浮いてる!?てか魔の国の王子(仮)に本で出てくるような悪魔の羽が生えてるんですけど!?さっきまでなかったよね!?

ヒー!?怖い!私高いところに苦手なんだよ!

おろして欲しいと心の中で願うと逆にどんどんと高いところにいってしまう。

エミリアがユリ様ー!!!と叫ぶ声が聞こえるが今はそれどころではない。


「私高いところに苦手なの…!」

「わかった。じゃあちょっと眠ってて」


そう言って瞼に軽いキスをされる。

私日本人だからこういうスキンシップはなれてないんですけど!

彼にキスをされたらだんだんと眠くなってきた。これは魔法なのだろうか?眠気には勝てないもので、私は深い眠りについてしまった。




誤字、脱字があったら教えてくれるとありがたいです!

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