表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/36

7「娘、張り切って働く」

 ルキは自分の悲鳴で目覚めた。

 ここはどこだ。

 ルキは母の姿を探す。

 何を馬鹿な。母はすでに死んでいる。完膚なきまでに。

 次に、乳母を探した、が、いない。そうだ、乳母も殺された。

 数秒が経過して、ルキの頭が現在と整合を始めた。

 そうだった、自分は今、エルという名の人間に養ってもらっているのだった。

 ルキはエルの姿を探す。

 エル、エル、エル!

 エルがいない。

 どこにもいない!


「ルキちゃん……ルキちゃん!」


 自身を揺さぶられていることに気づいた。見知らぬ人間の女がルキを揺さぶっている。怖くなって、ルキは振り払った。


「※※※※※⁉」


 女が不安そうな顔をした。


(しまった)


 ルキは慌てた。

 女、ではなくリディアだ。エルの知り合いのマリアが連れてきた、ここで働いている人。今はエルの代わりに自分の面倒を見てくれている人間だ。


「ご、ごめんなさいっ」


 ルキはすぐさま、謝罪を意味する人間語を口にした。


「【大丈夫】」


 リディアがルキを抱きしめ、竜言語で言った。


「【大丈夫・大丈夫】」


 その腕はエルほど太くはなく、エルほど頼りになる感じはしなかった。が、ここでリディアを不機嫌にさせるわけにはいかない。ルキは必死に笑った。


「※※※仕事※※※※※」


 リディアが言う。


「アナタも一緒に※※※※竜※※世話※※※※※※」


 仕事!

 乳母のところにいたときも、仕事は手伝っていた。平民として暮らす以上、仕事はするものなのだ、と。

 そういえば、マリアは自分のことを、


『こんなの拾って役に立つのか?』


 というような値踏みする目で見ていた。役に立たなければ。この場所で自分の有用性を示せば、マリアも自分を追い出そうとは思わなくなるだろう。


「しごと!」


 ルキは大きくうなずき、ベッドから飛び降りた。





   ◆   ◇   ◆   ◇





 夕方、滑走路上にて。


「エルぅーーーーっ」

「ルキ! ああっ、俺の愛する娘っ」


 朝と同じ光景を再び見せつけられて、マリアはげんなりしていた。

 当のルキとエルは、攫われのお姫様と、救い出しに来た騎士のような様子で感動的に抱きしめ合い、クルクル回っている。


「で、どうだった、リディア? 子守の感想は?」


 マリアは、ルキと一緒に来ていたリディアに問いかける。


「そうですね……その」


 いつもハキハキしているはずのリディアが、珍しく言いよどむ。


「なぁに? 正直に言ってごらんなさい」

「は、はい。その、少し不気味な子だなって」

「えっ⁉」

「言葉を間違えました。不可思議な子だと思ったんです。いえ、いい子なのは間違いないですよ。わがままも言わず、仕事のお手伝いも率先してやってくれて、あの歳で自分も立場の弱さを十分に理解しているようで。ですが……」


 リディアが少し、震えている。


「あの子、竜言語で竜たちとしゃべるんです。あの子が声を掛けると、気難しい竜なんかも素直に言うことを聞いて。今、反抗期のガブリエルがいるでしょう? 何度も檻を破壊して脱走し、もう鉄の檻に入れるしかないかって話になっている子。あのガブリエルが、ルキに何か言われたとたん、急に大人しくなって、自ら檻の中に入っていったんです」


(嫉妬かしら? この子もまだ十一歳だものね)


 リディアが、ルキのことをバケモノか何かを見るような目で見ている。

 マリアの目には、エルに抱き上げられて笑う少女が危険人物には見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ