6「娘、母の死を思い出す」
翌朝、厩舎の滑走路上にて。
「エルっ、エルぅっ、行っちゃやぁ~~~~っ」
「ルキ、ああっ、ルキ!」
エルは泣きじゃくるルキと抱き合っていた。
「なんなの、これ」
マリアが頭を抱える。
「茶番やってないで早く行くわよ」
「お前は悪魔か⁉ こんなに幼い娘を、親から引き離そうって言うのか⁉」
「いや、ほんの半日のことでしょうに。今日は私とアナタで北の集落の哨戒任務。その間、ルキの面倒はリディアが見るから」
マリアと一緒にやって来た少女――見習いライダーのリディア、十一歳がうなずいた。
ダヴィド随一の商人を父に持つこの少女は、交易系のドラゴンライダーとなって生家を支えるために、見習いとして頑張っている。
「任せてくださいっ」
と栗色の髪の少女が言った。
「ほら、ルキちゃ~ん。パパがお仕事に行ってる間、お姉ちゃんとお留守番しましょうね~」
「エルっ、エルぅっ、ルキ、エル、と、一緒、いるっ」
「ああっ、ルキ!」
「こらっ、エル! アナタがちゃんと稼がなきゃ、ルキちゃんを養えないでしょうが」
「うぐっ」
エルは泣く泣く、ルキをリディアに渡した。
絶望的な表情でいやいやをしていたルキだったが、これ以上の抵抗は無意味と悟ったのか、しぶしぶリディアに抱き上げられた。
「パパ、頑張って働いてくるからな」
エルはルキの涙を拭う。
「お留守番、頑張れるな? お夕飯は一緒に食おうな」
「おゆはんっ」
ルキが涙を溜めた目で、うなずいた。
◆ ◇ ◆ ◇
「ルキフェル」
夢の中で、誰かがルキに語りかけてくる。
「ルキフェル、私の可愛い娘」
ママだ。
数ヵ月に一度だけ、ママが会いに来てくれるのだ。
「大きくなったわね。それに、一段と美しくなって」
ママが抱きしめてくれて、いっぱいいっぱい話しかけてくれた。
だが、その言葉はやがて、無慈悲な銃声や爆撃音にかき消されてしまう。
ママが部下の人たちに何かを命令している。
ママがルキを、クローゼットの中に隠した。
ママが大きく強くなろうとする。
が、ここで大きくなってしまったら、ルキは押し潰されてしまうだろう。
だからママは、大きくならなかった。
ならないまま、家に押し入ってきた男たちに撃たれ、撃たれ、何発も撃たれ、斬りきざまれた。
ママは、死んだ。
ルキは、その一部始終をクローゼットの隙間から見ていた。




