5「娘、英雄の弱さを知る」
夜が更ける前に、エルはルキを抱き上げてマグダラ協会宿舎に戻った。
いつものようにルキを風呂に入れ、髪を乾かしてやり、自分も手早く風呂を済ませてから、待っていたルキに添い寝してやる。
「約束どおり、教えて」
ベッドに入るやいなや、ルキがぎゅっと抱きついてきた。逃さない、とでも言わんばかりだ。
「な、何の話だったっけ?」
「とぼけないで。エルがルキのお母さんを……殺したことを、話してくれなかった理由。どうして?」
「…………からだよ」
エルはごにょごにょと答える。
「なんて?」
「怖かったからだよ!」
「何が怖いの? エル、巨人にだって立ち向かえるのに」
「お前がだっ、ルキ」
「ルキが?」
「お前に嫌われるのが、怖かったんだ」
「……? なんで?」
「なんでってお前、娘に嫌われて平気な男親なんているか! ルキに嫌われちまったら、俺はもう生きていけない」
「ふふふっ、エルは怖がりなんだね」
男の矜持に関わることだったが、
「……そうだ」
エルは正直に認めた。ルキを納得させ、安心させるために、だ。
「じゃあこれからは、ルキがエルを守ってあげるね」
「いや、それはさすがにおかしいだろ」
「おかしくないもんっ」
「もんって」
「好き」
ルキが再び、エルに抱きついてきた。
「大好きだよ、エル」
その言い方にはなんだか妙な包容力があって、エルは戸惑った。
「俺も大好きだよ、ルキ」




