3「娘、赦す」
それから、エルはルキに騎乗しなおして、ダヴィド城壁内に残っているキュクロプス軍の残敵掃討戦に挑んだ。
途中、何度も竜騎兵やダヴィドの人々と遭遇し、そのたびにルキの漆黒の鱗のことで険悪な状況になりかけた。漆黒の鱗を持つ竜は、邪竜王とその係累にしか存在しないはずだからだ。だが、
『エルが乗っていること』
『実際に目の前で、残党退治や怪我人の救助を行ってみせたこと』
『この竜が敵の総大将ゴリアテを倒したのだ、とエルが説明したこと』
により、おおむね納得してもらえた。
キュクロプス軍という『共通の敵』、『差し迫った脅威』が目の前にあったことが、エルとルキに有利に働いた。
「あっ、あそこ!」
竜形態のルキがとある地点を指さした。
「ヨシュアが!」
見れば、ヨシュアが瓦礫の下敷きになっていた。しかも悪いことに、巨人の残党が今まさにヨシュアを踏み潰そうとしている!
エルはとっさに、その巨人の頭部を撃ち抜いた。
絶命した巨人が、膝から崩れ落ちそうになる。
このままだと、ヨシュアが潰されてしまう。だが、巨人が倒れ込む直前に、ルキがヨシュアと巨人の亡骸の間に体を滑り込ませた。
「ヨシュア、大丈夫⁉ 今、どかせるから」
巨人の亡骸を押し倒したルキが、瓦礫を慎重に取り除きはじめる。
「その声……まさか、ルキか?」
ヨシュアが弱々しく顔を上げた。
「どうして?」
「どうしてって。ヨシュアはルキの友達だから」
「だって俺、お前にひどいこと言った」
「うん」
ルキは手を止めない。
エルはルキから飛び降りて、瓦礫撤去を手伝う。
「お前が邪竜王の娘だってこと、街のみんなに言いふらしたのも俺なんだ」
「……うん」
ルキは手を止めない。
「そのせいでお前、怖い目にあったじゃねぇか」
「うん」
ルキは手を止めない。
「なのにっ、なんで⁉」
「だって」
やがて、ルキはすべての瓦礫を取り除いた。
「ヨシュアは、ルキの友達だから」
エルはヨシュアに手を貸す。
ヨシュアは立とうとした。だが、上手くいかなかった。瓦礫に潰されてしまった片足が、動かないようだ。
「う……うぅぅ……」
ヨシュアが泣き出した。
ルキはそんなヨシュアの前に顔を寄せた。
「うわぁああああん! うわぁああああああああん!」
ヨシュアはルキの鼻先にしがみつきながら、泣き続けた。




