6「娘、友達ができる」
男の子が三人と、女の子が一人。年のころはルキと同じくらいだろうか。
「その竜はお前が操ってんのか?」
リーダー格の栗毛の少年が、ルキに尋ねてきた。
「うん。ガブリエルは、ルキのお願いならなんでも聞いてくれるんだよ」
「「「「すげぇえええ!」」」」
大興奮の子供たち。
「お前、そんなにチビなのに、もう竜に乗れるのかよ! 英雄じゃん!」
「えいゆう?」
ルキは、少年の話が気になった。思えば、同年代の子どもとしゃべるのは、これが初めてのことだった。
ルキが軽く首を叩くと、意図を察したガブリエラが身をかがめた。
いかにも竜を従えているといった様子のルキの振る舞いに、子供たちが再び湧いた。
ルキは子供たちの前に飛び降り、首を傾げる。
「えいゆうって、なぁに?」
「邪竜王を倒した、すげえ人のことさ。なんとかっていうおっさん。えーと、サ、サ……サリーなんとかって名前の人!」
少年が木の棒を剣に見立てて振り回しながら、勇ましく言う。
「俺、英雄になりたいんだ。大きくなったら、竜騎兵になるんだ!」
◆ ◇ ◆ ◇
栗毛のヨシュアは六歳で、鍛冶屋の次男坊。その少年少女グループのリーダーだ。
黒毛のシモンは五歳で、少し気弱だが頭がいい。ヨシュアの親の店に金属を卸す冶金業の家の長男だ。
四歳のペトロはシモンの弟で、いつもシモンにくっついている。
赤毛のアンナ六歳は、このグループで唯一の女の子。革製の防具屋の娘で、ヨシュアの家とは客を融通しあう間柄だ。
流星のように現れた謎多き幼女ドラゴンライダーことルキは、竜騎兵志望のヨシュアにあっという間に気に入られ、彼らのグループに仲間入りした。
そんな愛する娘を、エルは好ましく見ていた。ヨシュアら四人はいずれも、身元確かな子女たちだった。孤児時代の伝手を使ってこっそり調査したエルは、調査結果に胸をなでおろした。
キュクロプス軍の襲撃からこっち、エルは同僚たちとの持ち回りでの哨戒任務に忙しかった。治癒魔術で一応は翼の穴が塞がったとはいえ、リヴィもまだまだ本調子とは言えない。できる限りリヴィの様子を見ながら哨戒任務をこなし、そのうえでルキに付きっきりで面倒を見るというのは、どう考えても不可能だった。
だから、エルの目の届かない日中の時間を、ルキが独自に過ごせる手段を得てくれたのはありがたかった。
「仲間を増やすんだ、ルキ」
エルは夜、風呂上がりのルキの髪を乾かしながら、ルキに覚えこませた。
「仲間は大事だ。人間は、一人では生きていけない生き物なんだ。お前が竜の力を隠して人間として生活する以上、仲間の存在は必要不可欠だ。仲間を作れ。そして、作った仲間を大事にしろ。生きていくうえで、とても大切なことだ」
「うんっ」
ヨシュアたちと毎日遊んで楽しそうなルキが、キラキラと笑った。
◆ ◇ ◆ ◇
ルキは毎日、ヨシュアたちに連れられて街を巡った。
公園で鬼ごっこやボール遊びをしたり、
入り組んだ路地で隠れんぼをしたり、
川で飛び込みや釣りをしたり、
貸本屋を冷やかしたり、
買い食いをしたり。
特にヨシュアたちは、買い食いを好んだ。ルキが毎日、銀貨を持ってくるからだ。買い食い仕放題である。
ヨシュアたちとて、工房や店を持つ中・上流階級の子供たちだ。
だが、来る日も来る日も銀貨を一枚持たせてもらえるような贅沢な生活など、想像の外だった。ルキがいかに育て親に溺愛されているのかが、その一事だけでも分かるというものだ。
ルキの育て親――『エル』という名前の竜騎兵の怒りを買わないために、そして何より銀貨一枚のおこぼれに預かるために、ヨシュアたちは最大限ルキを大事にした。
安全な遊び場を教えてやったし、秘密基地も開示してやったし、いろいろと社会常識に疎いところのあるルキにダヴィドの歩き方を教えてやった。
街の人たちのほうも、ヨシュアたち――というよりルキがやって来るのを喜んだ。なぜって、ルキが来ると必ずガブリエルが一緒になって現れるからだ。
ちょっとした荷運びや畑仕事、不用品の焼却など、竜の強大な力はあまりにも便利だった。マグダラ協会に依頼すると大金がかかってしまうし、何より協会は今、キュクロプスからのダヴィド防衛に忙しいから、家の手伝いに竜を連れてくるわけにもいかない。




