11「英雄、勝利する」
「エル!」
そのとき、ルキの声がした。
エルは、夢かと思った。声の先に、ガブリエルに乗ったルキがいたからだ。
ガブリエルが、突進するような速度かつ地面スレスレの高度で飛び込んできた。
ガブリエルの鈎爪が、エルの服を引っ掛けた。
ガブリエルとルキ、そしてエルは、間一髪、キュクロプス指揮官の致死量の踏みつけ攻撃を避けた。
エルは、死の危機から脱した。が、すぐにまた、次の危機に面した。あまりにも不安定な態勢で飛行していたガブリエルが、眼前の樹木に激突してしまったからだ。
「ぐあっ」
「きゃあっ」
エルとルキは地面に投げ出された。
「ルキ……ルキっ」
エルは地面を這いずる。体が思うように動かない。
「ルキっ、逃げろ!」
だが、ルキは逃げてくれなかった。あろうことか、キュクロプス指揮官に対して立ちはだかった。エルを守ろうとでもするかのように。
巨人がニタリと笑った。巨大な足を持ち上げる。
「ルキ、逃げてくれ、頼む!」
ルキが巨人に向けて、竜言語で言った。
「エル※※※※※殺害※※※拒絶※※※!」
次の瞬間の光景を、エルは生涯忘れることができないだろう。
ルキが叫んだと同時、ルキの体内から膨大な量の光の粒子――魔力が立ち上った。
魔力が、二〇キュビト(九メートル)ばかりの小柄な竜の形を取った。
かと思われた次の瞬間には、魔力が漆黒の龍鱗として実体化していた。
ルキの姿は、どこにもなかった。
エルは魔力反応と直感の双方から、目の前の竜がルキなのだと悟った。
――ゴウッ
ルキが、息を吐いた。ドラゴンブレス。竜の吐息は骨をも溶かす高温を帯び、キュクロプス軍の指揮官を粉々にして吹き飛ばした。
一瞬のことだった。
指揮官を倒した。マグダラ軍が勝ったのだ。




