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劇場版 超機械生命体アストライア 〜火星人と入れ替わりの秘密〜  作者: 獅子王子(元桂ヒナギク)


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3.知らない顔

 白い光。

 轟音。

 そして静寂。

「……っ!」

 頭が痛い。

 体が重い。

「ここ……どこ?」

 その者はゆっくりと目を開けた。

 薄暗い通路。

 赤い非常灯。

 壁には見たこともない文字。

「研究所……?」

 いや違う。

 さっきまでいた場所じゃない。

 もっと下。

 地下施設の別区画。

「っていうか……」

 その者は自分の顔に触れる。

「誰これ」

 近くの金属製の壁に顔が映り込んでいる。

 知らない顔。

「……え?」

 その者は頬を引っ張る。

 伸びる。

 痛い。

「夢じゃない」

 頭の中が真っ白になる。

 白い光。

 研究所。

 そして精神入替装置。

「……まさか」

 嫌な予感がした。

 ゆっくりと自分の体を見下ろす。

「うわ」

 知らない腕。

 知らない服。

 知らない身体。

「ちょっと待って?」

 数秒。

「ちょっと待ってちょっと待って?」

 さらに数秒。

「待て待て待て待て!」

 その者の驚きの声が通路に響き渡る。

「誰だこいつうううう!?」

 その時だった。

 通路の奥。

 ガコン。

 何かが動く音がした。

「……え?」

 目を凝らして見ると、通路の奥の扉と思しきものが開いており、中に進めるようになっていた。

『研究員認証完了。お疲れ様です』

「え?」

 その者は周囲を見回しながら奥に向かって歩き出した。

「誰もいないけど」

 部屋に入る。

『本日の実験スケジュールを表示します』

 壁面モニターが点灯する。

「うわっ!」

 そこに映し出されたのは——

 顔写真。

 名前。

 所属。

 研究員番号。

「……誰?」

 数秒。

 そして。

「待て」

 今の顔。

 さっき壁に映ってた顔。

「……あ」

 そして、精神入替装置開発班の所属。

「…………」

 数秒。

「うそでしょ」

 その者はモニターを指差した。

「入替装置の研究員じゃん」

 頭の中で白い光の瞬間が蘇る。

 暴走。

 閃光。

 そして——。

「……」

 静寂。

「入れ替わった?」

 数秒。

「……うわ」

 最悪だった。

 知らない身体。

 知らない施設。

 火星。

 そして。

「そうだ、アストライアは!?」

 その瞬間、壁面モニターが切り替わる。

『危険区域監視システム起動』

「え?」

 画面に砂嵐が映し出される。

 ノイズ。

 赤く染まった空。

 火星地表。

「地上……?」

 その者は画面に近づいた。

 数秒。

「……!」

 巨大な白銀の巨人。

「アストライア!」

 その瞬間、画面が激しく乱れる。

 ノイズ。

 砂嵐。

 そして。

 赤く輝く二つの眼。

「……え?」

 ブツン。

 映像が途切れた。

 数秒。

「今の……なに?」

 その者はモニターを見つめたまま固まる。

 白銀の巨人。

 それは間違いなくアストライアだった。

「いた……」

 少しだけ安心する。

 だが次の瞬間、その顔が青ざめた。

「待って。喜んでる場合じゃない」

 ここは火星。

 地下施設。

 地上は危険区域。

「行かないと」

 アストライアのところへ。

 そう思い走りだそうとしたその時だった。

 部屋の奥。

 壁の一角に並ぶ白い装備が目に入る。

「……?」

 近づく。

 透明なヘルメット。

 厚いスーツ。

 酸素ボンベ。

 数秒。

「宇宙服?」

 さらに数秒。

「……」

「これだ!」

 その者は勢いよく宇宙服を手に取る。

「着方わからないけど!」

 数秒。

 説明書きを見る。

 緊急時は自動装着モードを使用してください。

「便利!」

 次の瞬間、機械音と共にスーツが自動的に身体へ装着されていく。

 数分後。

 地上へ続く通路。

「アストライア!」

 勢いよく駆け出そうとして——止まる。

「……待って」

 数秒。

「火星だった」

 呼吸。

 酸素。

 宇宙服。

「落ち着け私」

 その者は深呼吸した。

「よし」

 そして慎重に地上へ向かい始めた。


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