表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劇場版 超機械生命体アストライア 〜火星人と入れ替わりの秘密〜  作者: 獅子王子(元桂ヒナギク)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/17

13.黒きアストライア

 白。

 何もない。

 音も。

 感覚も。

 何もない。

「……ん」

 瞼が開く。

 空。

 赤い。

 火星の空だ。

「……え?」

 腕を見る。

 白銀の装甲。

 見慣れた巨大な腕。

「戻った?」

 記憶の中の研究所。

 エルザーレになった自分。

 アルクノアになったペスカトーレ。

 ペスカトーレの兄。

 精神入替装置。

 全部繋がる。

「戻ってるうううう!」

 アストライアは立ち上がり様に飛び跳ねた。

「戻った! 戻った戻った!」

 アストライアはその場で何度も飛び跳ねた。

「もうエルザーレにもならなくていい! 研究所も嫌! 精神入替も嫌!」

 そこでアストライアは動きを止める。

 周囲を見る。

 火星。

 瓦礫。

 採掘跡地。

 崩れた岩盤。

「あれ? ここどこ? 私、こんなところ来たっけ?」

 その時だった。

 低い振動。

「え?」

 振動はだんだんと大きくなる。

 アストライアはゆっくりと振り返った。

 赤い砂嵐。

 その先には巨大な黒い影。

 最初はわからなかった。

 だが、一歩。また一歩と近づいてくる。

「……え?」

 シルエット。

 人型。

 巨大。

 そして、見覚えのある輪郭。

 赤い砂塵が晴れる。

 そこにいた。

 アストライアにそっくりの。

 黒い巨人。

「……なに、あれ」

 記憶。

 研究所。

 資料。

 モニター。

 断片。

『D-ASTRIA』

「……まさか」

「成功だ」

 黒い巨人。

 アストライアに酷似した姿。

 差し詰め、ダークアストライアとでもいおうその巨人から、聞き覚えのある声がした。

(エルザーレ?)

「なるほど。大体わかった」

 アストライアは考える。

 例の装置を使って、エルザーレがダークアストライアに入ったのだと。

「あなた、エルザーレね?」

「うん?」

 ダークアストライアが首を傾げる。

「なんでわかったの? 私はあなたのことを知らないけど……いや、超機械生命体は知ってるけど、中の子は知らないわ」

「超機械生命体はなんでもお見通しなのよ」

「まるで神様みたいな言い方ね」

(エルザーレがここにるということは、まさか?)

 エルザーレの体に人工生命体の精神が入っている。

「確認がしたい。あなたはその体に入って何を企んでる?」

「それはもちろん、お前を倒して、地球を乗っ取るのよ。火星人でね」

「ならば私が全力で止める」

 対峙する二体。

 両者は動き出した。

 ダークアストライアの強力な一撃が、アストライアに炸裂し、その巨体を後方へと吹っ飛ばす。

「くっ!」

 アストライアは地表に着地して滑走する。

 両足が地面を削り、赤い砂が舞う。

 アストライアはゆっくりと顔を上げた。

 前方のダークアストライアはただ立っているだけで、追撃をする様子もない。

 腕にはまだ衝撃が残っていた。

(今の一撃で? 違う。力だけじゃない)

 踏み込み。

 体重移動。

 衝撃の伝達。

 全部が異常だった。

(戦い慣れてる)

 アストライアは構える。

「エルザーレ、あなたただの研究員じゃないわね?」

 ダークアストライアは少し考えた。

「当然じゃない。私は火星政府庁総長の影のボディガードウーマンですもの」

「え?」

 アストライアは固まった。

「今なんて?」

「だからボディガード」

「そこじゃない。総長? 影? 研究員? 何個肩書きあるのよ」

「多いわ」

「威張るな」

 ダークアストライアはゆっくりと歩き出す。

「待って」

 アストライアが手を前に出し、ダークアストライアの動きを止める。

「整理させて。研究員。政府関係者。ボディガード。あと地球侵略者。何が本業?」

 ダークアストライアは少し考える。

「今は侵略者かしら」

「選ぶな!」

 その瞬間だった。

 ダークアストライアの姿が消える。

「——!」

 反応。

 遅れた。

 真横。

 黒い影。

「速っ——」

 衝撃。

 アストライアの身体が吹き飛ぶ。

 赤い大地を何度も跳ねる。

 アストライアは体勢を立て直して起き上がる。

 腕。

 脚。

 視界。

 問題なし。

 だが。

(速い。さっきのは見えなかった)

 アストライアはゆっくり立ち上がる。

「エルザーレ、もう一回、もう一回見せて」

「なにを?」

「今のスピード」

「あんた、マゾなの? まあ、お望みなら」

 ダークアストライアが視界から消える。

(今だ!)

 レイクローディ発動。

 猛スピードで動いていたダークアストライアの姿がスローモーションになる。

 アストライアは目にも留まらぬ速度でダークアストライアの横に周り、踵落としを背中に繰り出して地面に叩きつけた。

 レイクローディ解除。

「ぐわ!」

 衝撃がダークアストライアに伝わる。

「スピードはあなたより上よ」

 アストライアはダークアストライアに向かって手の平を突き出す。

 ヴァルシアブラストの構え。

「これでトドメよ」

 ダークアストライアに光線が当たった。

 覚束ない足取りで立ち上がり言うダークアストライア。

「これで……これで終わったと思わないことね」

 ダークアストライアの体。

 黒い装甲に亀裂。

 胸部。

 腕。

 全身。

 ヴァルシアブラストを受けた箇所から光が漏れている。

「私は……私は地球にかえ——」

 言い終わる前だった。

 ダークアストライアは爆発を起こし、跡形もなく砕け散った。

(あとはエルザーレの体か……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ