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劇場版 超機械生命体アストライア 〜火星人と入れ替わりの秘密〜  作者: 獅子王子(元桂ヒナギク)


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12.研究員と怪獣と鬼ごっこ

 時間は遡り、エルザーレとアルクノアがペスカトーレの兄に会う前。

 火星地表。

 爆発。

 炎。

 赤い空。

 崩壊した建物。

 遠くで警報音が鳴り響いていた。

 静寂。

 巨大な戦士。

 アストライア。

 恭子の身体に入ったアルクノアは、アストライアと同期したまま空を見上げていた。

「……………………」

 数秒。

「暇」

 静寂。

「いや待て。人が身体入れ替わって火星の地上で巨大化してるのに暇って何?」

 数秒。

「というか、なんで俺がこんなことになってるんだ……」

 アストライアは赤い空を見上げたまま。

「アリスとか言う人は大丈夫なんだろうか?」

 数秒。

「いや待て。今の俺が言える立場じゃないな……」

 静寂。

 その時だった。

 ゾワッ。

「……?」

 数秒。

 嫌な感覚。

 背筋が凍るような。

 誰かに見られているような。

 違う。

 もっと根本的な。

 巨大な何かが近付いている感覚。

「……何だ?」

 静寂。

 地面。

 揺れる。

 ゴゴ……

 数秒。

 再び。

 ゴゴゴゴ……

「地震?」

 違う。

 身体がそう言っていた。

 アストライアの感覚。

 理由はわからない。

 だが確信だけがあった。

「……来る」

 静寂。

 次の瞬間。

 ドゴォォォォォ!!

 火星の大地が爆発した。

 赤い砂塵。

 巨大な腕。

 黒い甲殻。

 そして。

 咆哮。

 ゴォォォォォォ!!

 静寂。

「……………………」

 数秒。

「なんでまたお前なんだよ!」

 見覚えのある怪獣が、アストライアに向かって突進してくる。

「うおおおお!」

 アストライアは全力で逃げ出した。

 巨大な足音。

 揺れる火星の大地。

 後ろから追尾してくる怪獣。

「待て待て待て待て! なんで追ってくるんだよぉ!」

「ぎゃああああおおおおああああ!」

 咆哮。

 熱線発射。

「うわああああ!?」

 爆発。

 アストライアが飛び上がる。

「熱っ! って、いやいやいや! 巨大化したら普通ビル投げたり殴ったりする流れじゃないのか!? なんで俺、巨大な身体で全力鬼ごっこしてるんだ!」

 後方。

 怪獣。

 まだ追ってくる。

「しつこい! ってか、なんでそんな俺限定で執着してるんだ!?」

 その瞬間だった。

 頭の中に突然、知らない感覚が流れ込んできた。

『右に飛べ』

「急に言うなぁぁぁぁ!」

 アストライアは反射的に右に飛んだ。

 次の瞬間、さっきまでいた場所を怪獣が突き抜け、そのまま地面をゴロゴロと転がって丘陵へと突っ込む。

「アストライア!」

『説明している時間はない』

「いや、そうだけど!」

『来るぞ』

「またぁ!?」

 怪獣が体勢を立て直して襲いかかってくる。

『アルクノアとか言ったか。レイクローディの使い方はわかるか?』

「俺に聞くな!」

 そんなやりとりをしている間にも怪獣は距離を詰めてくる。

「レイクローディってなんなんだよぉ!」

 アストライアは横へ飛び退いて攻撃を回避。

 怪獣は向きを変えてアストライアを狙う。

(さっきの光線、どうやって出すんだっけ?)

 先ほどは無我夢中で出したから記憶があやふやだった。

「えっと、確か……」

 アストライアは両手を右腰の前に構える。

「かー……」

『おいおい、それはダメだろう』

「じゃあどうやって!?」

 刹那、アストライアは怪獣に殴り飛ばされる。

「うわああああ!」

 丘陵に突っ込むアストライア。

 土煙。

 岩盤崩落。

「痛っ……!」

 アストライアは瓦礫の中からゆっくり起き上がる。

「巨大化しても痛いのかよ」

 前方。

 怪獣がこちらへゆっくり向かってくる。

「来るなよ? 来るな来るな来るな!」

 怪獣の咆哮。

「ぎゃああああ来たああああ!」

 アストライアは慌てて走る。

 だが。

「ん?」

 また同じだった。

 直進。

 減速。

 向き変更。

 直進。

 減速。

 向き変更。

「待て」

 アストライアは止まった。

『どうした』

「こいつ、曲がるの遅くないか?」

 怪獣。

 また突進。

 直線。

 直線。

 直線。

 アストライアの目つきが変わる。

「なるほど、そういうことか」

 前方に火星採掘跡地。

 巨大な岩柱群。

 天然の石柱が無数に並んでいた。

「やってみるか」

『何をする気だ?』

「まあ、見てなって」

 アストライアは岩柱地帯へ走る。

 後方から怪獣が接近してくる。

 石柱前。

 アストライアは頃合いを見計らって怪獣の攻撃を避けた。

 怪獣の巨大な腕が石柱へ向かって振り下ろされる。

 轟音が鳴り響き一本目が崩れる。

 アストライアはさらに奥へ走る。

 石柱。

 二本目。

 三本目。

 そして四本目と怪獣を誘い込む。

 アストライアは最後の石柱の前で怪獣の攻撃をかわした。

 怪獣は方向転換に間に合わず、石柱に激突。

 小さい揺れ。

 だんだんと大きくなる。

 アストライアが見上げる。

 巨大な岩盤。

 採掘で削られ、不自然に宙へ残った岩層。

 支えていた石柱。

 今。

 全部。

 折れた。

「逃げろぉぉぉぉ!!」

『お前もか!?』

「思ったより大規模だった!」

 束の間の静寂のあと、崩落が起こった。

 巨大岩盤が落下。

 怪獣が顔を上げる。

「ぎゃああああおおおお!?」

 火星全体が揺れるほどの轟音。

 土煙。

 瓦礫から飛び出した怪獣の尻尾が一瞬だけぴくりとして動きを止める。

 アストライアは瓦礫の山を見つめる。

 動かない。

 本当に動かない。

「勝った……?」

『たぶんな』

「たぶんって何だよ!」

 アストライアはその場へ座り込んだ。

「疲れた……」

『まだ終わっていない』

「え?」

『嫌な予感がする』

「やめろ。そういうの今言うな」

 その時、火星全体が白い光に包まれる。

「うわ! なんだ、眩しい!?」

 アストライアの意識が。

 だんだん。

 薄れていって……。

 最後に聞こえた。

『……アルクノア。次はもう少し戦えるようになれ』

 白。


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