ジェントーレ領③
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領都ほど多くはないけれど、この街にも原石を加工している職人がいる。
イラーリオの子供の頃からの知り合いが宝石加工の職人で、これから会いに行くから一緒にどう?と誘われてカメーリアは迷うことなく頷いた。
イラーリオ様がお友達とお話をしている間に、ちょっとだけ原石とか見られるかも、という下心満載の頷きだったのだが、イラーリオは当然、そんなカメーリアの考えは見抜いていた。
カメーリアが、本当にただの原石が好きなだけで眺めていられれば幸せ、という考えの持ち主で、宝石にも職人にも一切害がないことが分かっている。
カメーリアは、稀に見る有能侍女なのだ。
ここで、やっぱ王都に帰る、などと言われないように、しっかりとカメーリアの心を掴んでおきたい。
そのためには、やはり大好きな原石で釣って、下手な里心を持たれないようにしないと。
「職人さんって、どんな方ですか?子供の頃からのお知り合いなんですよね」
少人数の護衛付きで街を歩き始めると、カメーリアが好奇心旺盛な目でイラーリオに聞いてきた。
エリージョはこの街で仕事をしている職人で、幼馴染たちから呼ばれている通称はエリーなのだが、見た目はごつい筋肉を持つ男性だ。
幼い頃は、仲間の中で一番小さな子供だったのに。
「そうだよ。アイツ、エリーはカメーリアと正反対の感性の持ち主かも」
「どういうことですか?」
「エリーは、原石が加工されていく様子が大好きな人間なんだよ。エリー曰く、綺麗に磨かれることによって、その石が持つ美しさを最大限に引き出すことが出来る。そしてその美しさを引き出したのが自分だと誇りを持って言える、そういう人間なんだ。ちょっと暑苦しいかもしれないけど、腕は確かでその石をどうすれば一番綺麗に輝かせられるかを熟知している職人だな」
「すごいですね。エリー様ですか。きっと繊細な方なんでしょうね」
「いや?全然。むしろ、ちょーおおざっぱで片付けが苦手だな。酒も豪快に飲むし、そこら辺で酔い潰れているのを何度か救出して家に放り込んだことがあるな」
「え?女性の方なのに?」
「女性?エリーは筋肉多めの見た目はおっさんだ」
「……え?」
イラーリオがエリーと呼んでいるから女性だと思っていた。
女性の職人さんならイラーリオ様の恋人様でしょうか?とか疑ってかかってすみませんでした!
思いっきり頭を下げで謝ると、イラーリオは苦笑して許してくれた。
「ごめん、ごめん。俺がエリーって呼んでるから、そう思われても仕方がないな。昔は小さくて可愛らしい男の子だったが、今は会う度に筋肉を見せつけてくる繊細さとは無縁の男だ。カメーリアも、もしアイツに何か頼む時があったら、絶対に書類を作って後から確認出来る状態にしておいた方がいいよ」
「分かりました。肝に銘じます」
人の忠告には素直に従っていた方が、相手からの印象も全く想像と違う。
「エリーに遠慮はいらない。ほしいくず石があったら遠慮なく言うんだよ」
「いいんですか?」
「もちろん。それで何か思いついたら俺に教えてほしい。特別給金は弾むよ」
イラーリオの特別給金という言葉に、カメーリアの目は輝いたのだった。




