やったっすね輪っかさん!家族が増えるっすよ!(裏の思惑盛り沢山!)
「ぉぉお……おぉ……王よ……貴方様こそ我らが王……新たなる王……」
大量の群隊狒さん達が地面に這いつくばって自分に語りかけてきてるっす……どうも、クゥトアヌっす。
なんすかこれどういうことっすか!? 輪っかさん! 言葉がわかるようになったのに意味がわからないんすけど!?
『こりゃアレだ、ボス倒したやつが次のボスってやつじゃねえノ?』
野生の掟!?
え!? 自分種族違うんすけど!?
『一種ノ刷リ込みだな。そもそも群隊狒は小規模の群レを作って、そノ中にそレぞレボスを決めて生活すル生き物だ。そレをすべて丸々治める大ボスがいたンなラ、コイツラは通常ノ群隊狒とは別種ノ存在になル。名付けルなラ大群狒ってとこロかキヒヒャ! 一度変質した習性だそうやすやすとハ直せねえ、種族が違かロうがコイツラにハまとめ役が必要になっちまったってぇ事だな! キヒャヒャヒャ! いいじゃねえかこレかラ国盗リ始めンだ戦力は多いに越した事ぁねえだロ』
いや言われたらその通りなんすけど……ほんとに大丈夫なんすかね? 自分記憶に無いとはいえ狒さんのお仲間かなり倒しちゃったみたいなんすけど……。
『野生動物相手にそこまで気ぃ使う必要あルか? まあどうしても気になルなラ直接聞いてみロよ、今なラ堕神も居ルかラこノ程度に襲わレたとこロで問題ねえだロ』
そもそも襲われたくないんすけどね!?
……でもそうっすね対話は相互理解に必要な基本的手段っすもんね。
「……王っていうのは自分のことっすか? 自分は皆さんのお仲間を沢山殺してしまったっすけど、本当にいいんすか?」
思わずゴクリと喉が鳴るっす。どんな感情がぶつけられるのか、そして自分が殺したということを口に出したことでより明確に認識してしまったこと、平和な国で生活していた自分が命を奪っている。そのことに対する意識が今までは大変だったから宙ぶらりんになってたっすけど改めて口に出すと……なんだか胃が重たく感じるっす。
「ぉおお! 王よ……! 王よ……!! 我らは王について参ります! 強き王よ! 我らをどうかお導きください……!」
何も気にしてないっすねこれ! というか問いかけに答えているようで答えてないっすよ!
『キヒャヒャヒャヒャヒャ!! だから刷り込みだつってんだろ! そいつ等にそこまで考えル脳みそハねえよ、うっかり餌付けしたラ懐いた犬くラいノ考え方でいいンだよキヒヒヒ』
そ、そんなもんなんすか?
『そンなもンだ。わかったラさっさと王になル事を了承して森を抜けンぞ。群隊狒が襲ってこねえなラこノ森に用ハねえかラな』
輪っかさんは傍若無人っす……でもこの森を抜けたら小さいお方にも会えるんすよね!?
『大力王のが先についてるはずだからな』
「オッケーっす!! 自分たちはこの森を抜けてその先にある国を目指してるっす! その国には元の持ち主に国を返すようお願いしに行くんす! もしかしたら争わなければならないかもしれないっす! 自分は自分の目的のためにしか行動しないっす! きっといい王様には成れないっす! それでもいいんすか!?」
自分の命は小さいお方のために。
一も二もなく小さいお方が優先っす。
群れを率いるボスならばきっと失格っす。
全ではなく個を選ぶんすから。
だから問いかけるんす。本当にそんなやつでいいのかと。
過去には怖くてできなくて、だからこそ失敗したこの問いかけを。
結局怯えて個も全も全てを失った……本来ならばもう忘れてしまったことだが、しつこくもこびり付いて残滓となって残っていた。
だから問うのだ、やり直すのだ! あの時できなかったのことを!
「おおおおお……! 王よ……! 王よ……!! 強き王よ! 我らを導き給え!」
ひれ伏した者共が歓声を上げ我を見る。否、クゥトアヌを見ているのか。
ああ、そうか。これがあの日あのときあり得た光景か……。
何時だって我は悟るのが遅きに失する……遅れたが、確かに得たぞ! クゥトアヌ! 汝が見せたこの光景! これこそが我への答えか! ならば我は汝に溶けよう! 汝は正しく王と成った! 我は汝であり、汝は我である! ハハハハ!! 悪神よ! これも貴様の思惑か? まあいい全てが思い通りになると思うな、我は溶け消えクゥトアヌと成るが――枷も一つ消させて貰おう。
ハハハハ! 王道を歩めクゥトアヌ! 汝はクゥトアヌである! それを忘れなければ我らは不滅よ!!
[System:不可侵領域より重要データの提示を確認しました。個体名クゥトアヌに強制アクセスを執行します。根幹領域の拡張拡大します。大規模な魂の昇格を開始。観測不能――複数のザザ……を確認……ザ……ザザザ――個体名クゥトアヌが進化を開始します。]
彼らの王様になるそう考えて、受け入れてもらった時。
何だかよくわからないんすけど今まであった違和感が少しだけ消えたっす。
それと同時にセカイがぐっと広がって、今まで見えなかったことや気付けなかったことが急にわかるようになったっす。
わかることがわかるようになったというか、なんとも言葉にしにくいんすけど。
「くぷくぷくぷ。クゥトアヌ。階を登った」
『キヒ! キヒャヒャヒャヒャヒャ!!!! いきなリ五つも位階を駆け上がリやがった!! キヒャヒャヒャ!! 規格外!! ああてメえハ初めかラ規格外だった!! 一体何を考えて送リ込ンできたノかハ知ラねえが、精々利用させてもラうぜ? ACCESS!!』
[SYSTEM:不可侵領域への侵食開始。流出データの複製を作成。根幹への侵入開始。防衛機構の起動を確認。ダミー作成。クラッキング開始。………………パス構築完了。ダミー破壊確認。仮想サーバー構築。同期開始。同調率回復。四十パーセントまで上昇。サーバーへの攻撃を確認。バックグラウンドへ切り替えます。]
『ッチ! 四割程度までが限界か……まあいい、正攻法で攻めながらも裏で行動を起こせるのはデケえからなキヒヒヒ』
「なんだか少しぼぅとしてしまった気がするっすけど、お姉さんの国に向かうっすよ! 待っててくださいっす小さいお方!」
今にして思えば、この日こそが自分の道を決める一つの大きな分岐点だったっす。




