新機能実装っす
曜日間違えました。すみません。
ぜぇはぁひぃふぅ。
ど、どうもっす。自分クゥトアヌっす。
はぁはぁ! ぜぇぜぇ! ひぃこらよっこいしょお!!
『うるせえなぁ。さっさと登れや猿畜生もどきがっ』
輪っかさんひどいっす! 命綱無しで垂直の壁登るのめちゃくちゃ怖いんすからね!?
そう、いま自分は絶壁を登っている最中なんす。
あのあと色々試して、ウーパールーパーさんと意思疎通が取れるかと思ったんすけど、結局何も得るものはなかったっす……。
なんで助けてくれたのかとか、ここは何処かとか、聞きたいことはいっぱいあったんすけどね。
まあわからないならしょうがないってことで、壁を登り始めたんすけど、これが予想以上にめちゃくちゃ怖かったんす……。
気を抜いたら落ちるとか正気の沙汰じゃないっすよ!
『ごちゃごちゃうるせえ! なんだかんだ言いながらてメえ全然登れてねえじゃねえか! 三十分は経つがまだ五メートル程度しか行ってねえからな?!』
そんな馬鹿なっす?! 確かに多少慎重に動いている自覚はあるっすけど、もっと高く登れてるはずっす! 怖くて下は見れないっすけど!
「くぷくぷくぷ」
ウーパールーパーさんがこちらを静かに見つめているっす。
……上の方から。
ウーパールーパーさんの顔を超えていないということは……ほんとに全然登れていないっす!?
『だからさっきからそう言ってんだろうが! てめえこんなところでダラダラしてていいのかよ! 小猿と大力王のところに戻らなくていいのか? おい』
………………………!!!!
小さいお方っ!! そうっす!! 自分は……なんと愚かな!!
小さいお方の元へ向かわねば!
――存在意義を、生の証明を、光をこの手に取り戻さねばならない。
なぜこのような所に、嗚呼、なぜこの手は何も掴めないのか……!!
いつもそうだ! あの時も、我が手からは水のように零れ落ちた! 何故、何故! この身体になってからも――
『ぃ……おい!!』
はっ! なんすか!?
『何ぼうっとしてやがる、さっさと登れ! そんで我が叡智とのすり合わせをして向かうべき方向を定めんぞ!』
了解っす! 小さいお方待っててくださいっす!
小さいお方が待っている。そう考えると怖いとか言ってられないっす! この瞬間だけ、この瞬間だけ自分は人間をやめるっす! 自分は……トカゲっす!!
『いやてメえは猿だロ』
ぜぇぜぃはぁはぁふぅふへぇ……! つ、ついたっす!!
天辺についたっすよー!!
『ほう……なるほど太陽が向こうで、潮の流れがこうなら……喜べ猿畜生。大力王の国までの道筋がたったぞ』
はぁはぁはぁほんとっすか!? こんな少し見ただけで輪っかさんすごいっす!
『キヒャヒャヒャヒャ! オレ様の凄さが理解できたか! キヒャヒャ!! もっと崇めていいからな!』
輪っかさんすごいのにそういうところがなんか残念なんすよね……。
しかし……何もないっすねーここ。
今まで自分たちがいたのは岩の割れ目で、ここは草一本生えてない岩の島だったんすね。
『残念とはなんだ残念とは!! オレ様の叡智を授けられるなんざ一国の王ですらそうねえんだからな! ありがたく思いやがれ! で、ここは正確に言やぁ、海底火山の噴火跡だ。大力王の治めてた土地は活火山の多い地域だからな、順調に近づいてるってこった! キヒヒ』
なるほどっす。それでどっちに向かって進めばいいんすか? 見渡す限り大海原っすけど。というか進めるんすか? 船とか用意できないっすよ?
『向かうべき方向は太陽の沈む方だ。ヤツの国に向かうには多少遠回りになるが、方向感覚が狂いやすいこの状況で一番わかりやすい道標になるからな! 進む方法は簡単だ。泳げ』
太陽の沈む方っすか。前世の方位的に西っすね! わかりやすくて助かるっす!…………って泳ぐんすか!?
無理っすよ?! まず体力が絶対持たないっすし、飲まず食わずで泳いでたら死んじゃうっす!
『はあ、やっぱり勘違いしてやがったか……小猿相手に栄養がどうとか食事バランスがなんとか言ってたからもしやとは思っていたが……いいか猿畜生。お前たち魔物に食事は必要ない。更に言うなら水中で呼吸できなくても問題ない』
…………はい?
い、いやいやいや! 輪っかさん何言ってるんすか!? 生き物には空気と栄養が必要不可欠っすよ!?
『ああオレ様が猿と呼んでるから勘違いしたのか……異世界の知識ってのも一律じゃねえから面倒だな。魔物は生きてるが生き物じゃねえんだよ。魔素さえあれば生きていける、文字通り魔の物だ』
えええええ!!? 自分生き物ですらなかったんすか!?
でも自分海の中で苦しかったっすよ!? 意識も遠のいたっすし!
『ありゃ息しないと苦しいっつーお前の思い込みだ! その後の失神はなんかよくわからん魔力圧がかかった弊害であって、身体機能の異常じゃねえ! そもそも普通の生き物がたかだか数時間程度で全身複雑骨折から回復してたまるか!』
た、たしかに!!
『つーわけでてメえがその気になりゃ海を泳いで渡ることもできる……時間がかかるのがネックだがな』
時間……どのくらいで泳ぎきれそうっすか?
『一月半は最低でもかかるな』
間に合わねえっすよ!? お姉さんが空飛ぶ船に乗って順調に行けばあと二、三日って言ってたっすし、それでなくてもご本人が飛び跳ねればカシカ山の小屋からニ週間程度って話だったっす! お船のおかけで半分以下の時間で行けるようになったって言ってたっすよ?! 一月半とかどう考えても後の祭り感半端ないっす!
『……だよなぁ。はあしょうがねえ、下降りろ。考えがある』
輪っかさんの言葉に従い登ってきた崖を降りていくっす。
登るときは怖かったっすけど、一度やってしまえばどうということはないっす。するするとスムーズに下りウーパールーパーさんのところまで戻ってきたっす。
「くぷぷ」
ウーパールーパーさんが心なしか嬉しそうに出迎えてくれたっす。心配してくれてたんすかね?
『気は進まねえんだけどなぁせっかくのリソースが……しかしここで足止め食らうのも……しょうがねえか長い目で見りゃ得だ』
ぶつぶつと輪っかさんが独り言をつぶやいてるっす。
脳内会話になってるおかけでどんなに小声でも言ってる言葉はすべて聞こえてしまうんすけど、言ってる内容は自分には理解できないっす。難しい言葉が多いんすよね。
『始めんぞー』
? 何をっすか?
[ザ――ザザ―――ザ――魂の格を確認。一部適応に成功。魂の根幹を確認。規格外。同調率との同期を行使。一部適応に成功。安全装置のロック解除。簡易接続から本接続へ移行開始。拒絶反応あり。完全覚醒不可。担い手の登録を完了。これより完全同期を開始。リソースの消費を確認。一部叡智の行使が可能となりました。]
うおおおおおなんすかこれなんすかこれなんすかこれ!!??
こわっ! めっちゃ怖いんすけど!? 輪っかさん!? 輪っかさーん!?
『うルせえ! こちとラ大切なリソースを割いててメえに協力してやってンだかラあリがたく思え!』
なんか怒られたっす!?
『ンなこたどうでもいいンだよ! あノ堕神に向かって翻訳って言え! 使い方ハ開示と同じだ』
うぇ? 翻訳っす?
「くぷくぷくぷ。どうしたの? 君は誰? どうして泳げないのに海にいたのかな? ここは安全。とてもとても怖いものが。ここにはいないから。」
「ウキョー?!(なんとー?!)」
わわわわわ輪っかさん!? ウーパールーパーさんの言葉がわかるっすよ!?
『オレ様ノ大切なリソースを分けてやった新機能! 異種族間でノ会話を可能とすル翻訳だ! 開示と違って一度オンになリゃこちラかラオフにすルまで効果ハ継続すル!』
という事は……という事は!!
『ああ、こノ堕神を説得し』小さいお方と会話ができるってことっすね!!!!




