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悠々自適な雲の旅っす

お姉さんから大きな魔力結晶を手に入れたなんでも屋さんは、来た時と同じようにいつの間にか消えていたっす。

催眠術とか超スピードっすかね? そんなチャチなもんじゃないかもしれないっすね。


それから船を動かすには魔力が必要で、お姉さんはさっきの魔力結晶でほとんど魔力を使ってしまったから、ある程度回復させる為に一晩お休みしたっす。

翌日の朝日とともに自分たちはとうとう空飛ぶ船で大空へと羽ばたいたっす!



いやーすごいっすね! 景色が後ろに流れていくパートツーっす。お姉さんに抱っこされてた時も速かったっすけどこっちのほうが速いし真っ直ぐ安定してるっす。足場があるっていいっすね。


「クゥちゃんあの動きそんなに駄目だったのね〜ごめんなさいね〜? まだ進化もしていないのだものね〜耐久力を考えてなかったわ〜」


いやいやあれは単に自分がフリーフォールが苦手なだけで、お姉さんに非は無いっす。現に小さいお方は元気だったっすし。

そのせいで余計な出費と時間を使わせて重ね重ね申し訳ないっす。


「気にしなくていいわ〜なんでも屋さんが気を利かせて魔力結晶だけで済ませてくれたから〜。あの人のことだから適正価格よりかなりお値引きしてくれたのでしょうね〜」


そうなんすか? 輪っかさんは普通なら払いきれないくらいの価格設定って言ってたっすけど。


『だかラおかしいンだよ。つまルところ普通じゃなけリゃ払い切れルってこった、世界初ノ飛行船がそンな安くてたまルか。普通じゃなくても払いきレねえ程度ノ金額設定じゃなけりゃ、こノ世はオーバーテクノロジーだラけだ。そレをあノ腐レ商人ハ自分の好みで値引きをしやがルかラややこしいことになンだよ、この船も今回ノ件が終わったラぶっ壊しておいたほうがいいぜ?』


「そうね〜こんな便利なものまだ私達には早すぎるわよね〜生活を豊かに出来そうだけど〜まだ今じゃないわね〜あと百年後くらいかしら〜」


壊しちゃうんすか、もったいない気がするっすけど多分お二人は自分が見ている景色よりももっと大きな視点でお話されてるんすよね。

なら自分がああだこうだ言っても仕方ないっす。


それよりそろそろ海が見えてきたっすよ!

ほら小さいお方、あれが海っす。海はすごいんすよ、生命の母っすから。


「チィィー……! チチー! チッチー!」


小さいお方大興奮っすね! わかるっすよ、海はロマンの宝庫っすからね!


「チチチチチ!!!!」


「あらあらあら〜大変〜」


小さいお方の鳴き方がかつて無い荒ぶりを見せたところ、お姉さんから不穏な一言を頂いたっす。


ど、どうしたんすか?


「前からね〜真竜種(アグラドゥオ)の群れが迫ってきてるのよ〜。あれは飛翼竜ね〜縄張り意識強いし〜獰猛だから前にこのあたりのは駆逐したはずなんだけど〜」


のんびりした口調の割に状況が芳しくないんすけど!?

竜ってあれっすよね、ジャイアントゴリラと戦ってた蛇もどきみたいなやつのことっすよね!?

あれが空飛んできてるんすか?! 群れで?! 丸呑み案件っすよ!?


『騒ぐンじゃねえよ! こっちにゃ天下ノ七天魔王様がついてンだ、神でもなけりゃ恐ルるに足らンってやつだキヒャヒャ!』


おお、そうっす! 他人任せはアレっすけどお姉さんがいれば百人力っすね!


「ごめんなさいね〜期待してもらって悪いんだけど〜この船魔力の供給止めると〜すぐに動力止まって墜落しちゃうから〜手が離せないわ〜」


『……飛び降りレば逃げラれルかもしレねえ!』


輪っかさん!?


『完全に当てが外レたぞおい! 大力王避けルことハできねえノか!?』


「外敵認定されてしまったわね〜ここから逃げるのはかなり厳しいわ〜それに私遠距離戦って苦手なのよ〜。仮に船を下に降ろして私が自由になっても〜即殲滅は難しいわ〜」


どどどどうすれば……!?


「グォォオオオオオオオ!!!」


お腹の底に響くような低い声が響いたっす。

空気がビリビリ震えてお船もガタガタ振動したっす。

あまりにも大きな声だったので、思わず耳をふさいでしまったんす。その瞬間ガタンと一段大きな揺れが船を襲って、自分は船の外に投げ出されてしまったっす。


「ウッキーョォォオォ?!?!」


「チッチー!!」


風圧で意識を失う寸前に見た光景は、高度を落とす船とそれを追いかける羽つきトカゲ、そして小さいお方の泣きそうな顔だったっす。

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