始まったと思ったら終わってたっす
すみません遅刻しました。
初戦闘のようでそうでもないちょっとだけ初戦闘なお話。
あと小さいお方の種族名が変わっております。
基本的に種族名はオリジナルのルビを振るようにします。
『おい担い手様ヨ、レベルの確認をシなくて良いノか?』
小さいお方と自分の身体を洗い終えてから少しすると輪っかさんがこんなことを言い出したっす。
ああ! 確かに確認してなかったっす! 色々ありすぎて完全にすっぽ抜けてたっすね。
『てメえの事なンだかラもう少シ覚えとけヨ……』
脳のリソースは現状小さいお方のためにほとんど使ってるっすから自分に割く余裕はないっす。
「チィ?」
ああ小さいお方がこちらを不思議そうに見てるっす。なんと愛くるしい!
『その小猿を守るのに必要だからレヴェルの確認しと』開示っす!
・名称:未設定 ・LV:7
・種族:石魔猿
・石から生まれた猿型の魔物。異世界の生物の魂が宿って
いる。その毛皮はとても硬く、刃物で傷つけるのには相応
の技量が求められる。反面衝撃には弱く鈍器で殴れば容易
に狩ることが可能。
小さいお方のためなら最優先ってなんか物騒なこと書かれてるっすけど?!
『お、レヴェルが六も上がッてるジゃねえか。こリャ幸先良いな! キヒャヒャヒャ!』
輪っかさん? あの、物騒なことが
『ハぁ、てメえ魔物になッたンだかラ【ニンゲン】に襲わレることハ前提で考えとけヤ? 大体小猿ノ方も高値で取引さレてルって書いてあッたロうが』
ハッ! 開示っす!
・名称:未設定 ・LV:5
・種族:幸福獣
・希少種族。数年に一体の割合で進化することがある。
周期が決まっているわけではなく、進化体が現れない
事もある。その為見ただけでも幸福になれるとファー
ル達のジンクスとなっている。また、幸福獣はその珍
しい毛色や食肉としての品質が高い為、非常に高額で
売買されている。
小さいお方に開示を使ってもう一度情報を読んだら確かに狙われてたっす!!
絶対許さないっすよ!
『はいハいわかッたわかった。ンじゃそノ為にももッと強くなラねえとナ』
もちろんっす!
『なら、ちョうど良いノが今から来るかラ上手くヤレよ』
へ? 輪っかさんそれはどういう……
「チッチー!」
小さいお方の声が聞こえそちらを振り向くと、ばかでかいコウモリみたいなのがこちらに向かって飛んでくるところだったっす。
なんすかアレ?!
滅茶苦茶ビックリしたんすけど向かう先が小さいお方の方だったので慌てたっす! あんなデカいのがぶつかったら小さいお方が危ないっす!
咄嗟に走って小さいお方を拾ってそのまま横に跳んだっす。
ぎゃー! 今尻尾の先がチッていったっすチッて! こわ!
小さいお方を抱えたままさっきのお化けコウモリを探すと、ちょうど上の方で旋回しているところだったっす。
ぬぬぬー、自分を狙うならまだしも小さいお方を狙うとは許せないっす!
『おう担い手様よ、ならあいつの情報を開示してみな? 良い情報が載ってるかも知れねえぜ?』
お化けコウモリはいつでもこちらに飛んでこられるよう狙いを定めているように見えるっす。安全のために逃げようかと思ったっすけど、背中を見せたらやられそうっすね。ここは輪っかさんの助言に従うっす。
開示っす!
・名称:未設定 ・LV:4
・種族:暗闇蝙蝠
・洞窟などに生息する肉食蝙蝠型の魔物。目はほとんど機能
しておらず、特殊な音を出して地形を把握している。羽音も
静かなため気がついた時には首筋に噛みつかれて命を落とす
者もいる。自然界の暗殺者。飛行速度はそこまで早くないの
で、急所を守り噛みついたところで反撃するか遠距離からの
攻撃で容易に狩れる。
輪っかさんこの情報、思ったより役に立たないっす!
『ああ? 対処法書いてあンだロ? カウンター狙ッてけ』
いやさっきこっち飛んできたときチラッと口の中見えたっすけど、あんなギザギザした歯に噛まれたら死んじゃうっすよ!?
『背中向けて逃げル方がよッぽど死ぬリスク高えだロうが。小猿守るンだろ? そレにほラもう来ルぜ』
うおおおこっち向かってきてるっす!! ぶ、武器! なんか武器無いと戦えないっすよ!?
『腹ぁ括レ猿畜生! てメえが死ねバ小猿も死ぬぞ!!』
小さいお方が、死ぬ?
それは、許容できないっすね。
咄嗟に伸ばした右腕に、お化けコウモリががぶりと噛みついてきたっす。この歯で小さいお方を噛もうとしたんすか?
お化けコウモリと自分の大きさはほとんど変わらないくらいっす。そんな大きさの奴が、今自分の腕の中にいる存在に噛みつこうとした? それは……駄目っすよ?
自分の中でなにかが弾けたような感覚を感じた瞬間、腕に噛みついているお化けコウモリの頭を尻尾が強かに打ち据えていたっす。
ビッと空気を裂く音をたてた尻尾は正確にコウモリの頭部を叩き、陥没させていたっす。
陥没させていたっす?!
え!? 尻尾強くないっすか!?
あと噛まれてた腕が思ったより痛くないんすけど!
輪っかさん!?
『てメえ自分ノ説明ちゃンと読ンどけや。刃物で傷つけルのにハ相応の技量が必要ってあンだろ? 格下ノ牙程度で裂けルほどやわジャねえよ』
輪っかさん知ってたんすか?
『てメえに知識与えてンの誰だと思ッていやがル? 流石にオレ様も勝ち目ノねえ戦いを強要したリしねえヨ。言っただロうが一蓮托生だッてなキヒャヒャ』
それならそうと最初から言って欲しかったっす……。
『てメえにャ覚悟が足リてねえンだよ。守ルだ何だといッてル割りにハ逃げルことを第一に持ッてきやがル。奪わレたくねえンなラ奪うことを覚えとけ、こノ世界ハそノ程度には残酷なンだよ』
うう、返す言葉がないっす……確かに命のやり取りなんてやったこと無いっすから。
今のだって無意識に尻尾が動いていただけで、自分で何かしようとしたわけでもないっすし……。
『さっきレヴェルアップしたかラ良かったがそうジャなけりゃ本当に死ンでたかも知レねえぜ? 命ノ保証なンざここにハねえ。だかラ必死に足掻くしかねえンだよキヒャヒャヒャ』
輪っかさんの言葉が重くのし掛かるっす。
自分は楽観視してたのかもしれないっす。
小さいお方の側にいればなんとかなる。なんとか出来ると勘違いをしていたのかもしれないっす。
輪っかさんがいっていた、力がなければ何もできない。
この意味がようやく朧気ながら何となく理解できた気がするっす。
今回はたまたま相性が良かっただけ、次も上手くいくとは限らないっす。
コウモリの牙は刺さらなかったっすけど、噛みつかれたところは痛いっす。刺さらなくっても万力で締め付けるように潰すことは出来るってことっす。
もっと顎の力が強い、噛み潰して食べるタイプの歯を持った魔物が相手なら、自分の腕はもう使い物にならなくなっていたはずっす。
尻尾の一撃だって、体格差があれば通用しなかったっす。
『おうおう反省できてルみてえだナ! なラお楽しみノお食事タイムだぜぇ!』
うえ!? これも食べるんすか!?
『あたリめぇだロが、てメえが殺したんだ今喰えばかなリの魔素を取り込めルぜ! 心臓喰ッとけ心臓。そこが一番魔素がつまッてル』
ううう……強くなる……為っす! これも小さいお方の為に繋がる大事な一歩っすぅぅう!!!




