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ケラレ あるいは、きみの残像  作者: 真野蒼子
第五章 石黒茉奈~手放した記録~
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第15話 無関係だった同級生

 香穂子は階段を降りて、職員室へ向かった。望月が変なときは、これしかない。


「前田せんせ~。折り入ってご相談が~」

「んあ? なんだ。珍しいな」


 望月のことなら前田だ。さきほどの一連を説明すると、前田は目を見開いた。


「え~!? お前に言ったのか!? 直接!? っか~!」

「なにかご存じなんですか?」

「そりゃあな。けど、お前に言うって短絡的すぎるだろ……」


 椅子の背もたれに身を預け、前田は天井を仰ぎ見た。額に手を当て、困惑を露わにしている。


(……知ってるんだ。なら、もしかして)


 ここまでくれば、間違いはない気がする。たしかに香穂子は関係がない。


「高杉晴子さんに関係ありますか」


 瞬時に、前田は体を起こした。直面した前田の目は、飛び出てきそうだ。


「流星の奴、言ったのか」

「いえ。勝手に調べました。写真部の卒アルに、八年前だけがなかったんです。それで、変だなと思って。望月先生の代ですよね」

「ああ、アレか……頭いい奴は怖いねぇ……」


 長いため息を吐いて、前田は黙った。数秒ほど動かないままだったが、ようやく体を起こす。


「悪いが、それは口にしないでやってくれ。流星は関係ないんだ」

「嘘ですよ。だって、先生はきっと……」

「いや。本当に関係ないんだよ。関係ないまま、終わっちまった」

「どういう意味ですか……?」


 関係ない――やけに繰り返される。渦中にいるのに、変な話だ。


(ああ、そういえば、さっき……)


 こぼれていた望月の言葉は、不思議に感じた。


「もしかして、先生と私は同じ状況にいるんですか?」

「……なんでだ?」

「望月先生、さっき『お前は俺と違うんだな』って言ったんです。同じだと思ってた、ってことですよね。私が高杉晴子さんに似て――」

「椎名!」


 両腕を乱暴に捕まれた。セクハラより、パワハラかもしれない。


「聞きたいってのは、よく分かるよ。だが、すまん。そっとしといてくれないか。石黒のことだけ考えてやってくれ、生徒会長」

「私のアイデンティティを持ち出すなんて卑怯ですね。わかりました。なら、一つだけ教えてください」


 香穂子は、どうしても知りたかった。分からないから、ここまで引き下がれずにいる。前田の腕を振り払ってつかみ返した。


「関係ないんですね。望月流星は」


 名前を呼ぶなと言われた。なぜ嫌がるのか、まだ分からない。

 前田はぐっと息を飲み、深く頷いた。


「……ああ」


 棘のある返事を返される。嫌悪を浮かべた姿に、なんとなく、佐々木を思い出した。香穂子は、前田から目をそらし、腕を放した。


「分かりました。それで、石黒さんは、どういう状況なんですか? 私まったく知らないんです」

「ああ、そうだったな。ちょっと見に行くか」


 香穂子は、まだ石黒のことにも関係ない。けれど、現在の生徒をついでのように言われることは、許せなかった。

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