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そのオネェ、異世界でよろず屋を開業する  作者: S@Y@


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5/20

第5話 脳筋騎士、就職希望です


 よろず屋オネェ開業から三日。


 レンちゃんの店は、すでに王都でちょっとした話題になっていた。


「荷物運びを頼んだら半日で終わった」

「迷子猫を見つけてもらった」

「壊れた荷車まで直してくれた」


 依頼の内容は小さい。


 だけど、そのどれもが異常な速度で解決していた。


「はい次ー♡」


 アタシは受付カウンターで依頼書を整理する。


 現在時刻――十五時。


 まだまだ営業時間中だ。


「レンお姉様! 本日のおやつですわ!」


 エリーちゃんが元気よく飛び込んできた。


 今日も可愛い。


 そして今日も両手いっぱいのお土産付きだった。


「んまぁ♡ 気が利くじゃない」


「レンお姉様のためなら当然ですわ!」


「おい王女」


 後ろからルミナが呆れた顔をする。


「完全に通ってるじゃない」


「何か問題でも?」


「仕事しろ」


「しておりますわ」


 してない。


 絶対してない。


 そんなやり取りをしていると。


 店の扉が勢いよく開いた。


 ドォン!!


「レン殿ぉぉぉぉ!!」


 入ってきたのは巨大な騎士だった。


 身長は二メートル近い。


 筋肉の塊。


 まるで歩く城壁である。


「あら」


 アタシは思い出した。


 盗賊襲撃の時に生き残っていた騎士だ。


「確か……」


「ガイルです!!」


 本人が名乗った。


「ガイル・バルドと申します!!」


 声がでかい。


 店が揺れた。


「静かにしなさい」


「申し訳ありません!!」


 さらにでかかった。


 うるさい。


 とても。


 うるさい。


「で、今日は何の用?」


 するとガイルは突然跪いた。


 ドガンッ!!


 床が鳴った。


「お願いがあります!!」


「嫌な予感しかしないわね」


「私を雇ってください!!」


 沈黙。


 数秒後。


「は?」


 アタシは聞き返した。


 ガイルは真顔だった。


「レン殿に命を救われて以来、私は考えました!」


「ええ」


「私はレン殿に一生ついていきたい!!」


「重い」


「なので雇ってください!!」


「重い」


 即答だった。


 だがガイルは諦めない。


「私は強いです!」


「そう」


「荷物運びできます!」


「そう」


「掃除できます!」


「そう」


「寝なくても二日は動けます!」


「知らないわよ」


「なので雇ってください!!」


 うるさい。


 声量が。


 うるさい。


 ルミナが耳を塞いでいる。


 エリーちゃんはなぜかキラキラした目で見ていた。


「レンお姉様の初めての従業員……」


「勝手に決めないで」


 よろず屋はまだ儲かっていない。


 従業員を雇う余裕などない。


 アタシは断ろうとした。


 その時だった。


 店の外から悲鳴が聞こえた。


「きゃああああ!!」


 全員が振り返る。


 通りの向こう。


 一頭の暴走馬が走っていた。


 荷車を引いたまま突っ込んでくる。


 人々が逃げ惑う。


「まずい!」


 ガイルが飛び出した。


 だが間に合わない。


 暴走馬の進路には幼い子供がいた。


 泣きながら立ち尽くしている。


「やだもう!」


 アタシも駆け出した。


 だけど――


 先に動いたのはガイルだった。


「おおおおおおお!!」


 正面から馬へ突撃。


 そして。


 止めた。


 力技で。


 真正面から。


 両腕だけで。


 馬と荷車を。


 止めた。


 通行人たちが固まる。


 アタシも固まった。


 ルミナも固まった。


 エリーちゃんだけ拍手していた。


「すごいですわー!」


 いや本当にすごい。


 意味が分からない。


 ガイルは汗だくになりながら振り返った。


「レン殿!!」


「何よ」


「採用ですか!!」


 アタシはため息を吐いた。


 使える。


 めちゃくちゃ使える。


 脳筋だけど。


 うるさいけど。


 圧がすごいけど。


 使える。


「試用期間三か月」


 ガイルの目が輝いた。


「本当ですか!!」


「声がでかい」


「ありがとうございます!!」


「だからうるさいって」


 こうして。


 よろず屋オネェに。


 最初の従業員が加わった。


 ちなみに。


 その日の閉店後。


 十八時を過ぎて桃瀬モードになった俺は。


「ガイル」


「はい!」


「明日から朝六時集合」


「了解です!」


「倉庫整理も追加」


「了解です!」


「給料は店が軌道に乗ってから」


「了解です!」


 喜んでいた。


 こいつ。


 思ったより社畜適性が高いかもしれない。



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