第47話 森の主は、昼寝中でした
ズシン……。
森の奥から響いた大きな足音。
◇ ◇ ◇
「やっぱり気のせいじゃない!」
レイモンドが身構える。
◇ ◇ ◇
ガイルは拳を握る。
「行くか」
◇ ◇ ◇
「待って」
ルミナが前に出た。
「……敵意はない」
◇ ◇ ◇
「分かるの?」
エリーが尋ねる。
◇ ◇ ◇
ルミナは小さく頷いた。
「ただ、すごく大きい」
◇ ◇ ◇
「嫌な予感しかしません……」
レイモンドがため息をつく。
◇ ◇ ◇
一行は足音のした方へ向かった。
しばらく歩くと、木々が開ける。
そこには大きな岩山のようなものがあった。
◇ ◇ ◇
「岩?」
エリーが首を傾げる。
◇ ◇ ◇
その時。
ぷしゅーっ。
大きな息を吐く音が聞こえた。
◇ ◇ ◇
「……息?」
レイモンドが固まる。
◇ ◇ ◇
岩だと思っていたものが、ゆっくりと動く。
もふっ。
大きな尻尾。
長い耳。
◇ ◇ ◇
「……熊じゃない」
ガイルが呟く。
◇ ◇ ◇
「狐ですわ?」
エリーが目を丸くした。
◇ ◇ ◇
巨大な白銀の狐だった。
体は家ほどもあり、ふさふさの尻尾を丸めて眠っている。
◇ ◇ ◇
「寝てる」
ニアがぽつりと言う。
◇ ◇ ◇
「ぐぅ……」
大きないびきが森に響いた。
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんが笑う。
「森の主って、この子だったのねぇ♡」
◇ ◇ ◇
その時。
親うさぎが狐へ近付いた。
「きゅう♪」
◇ ◇ ◇
巨大狐は薄く目を開ける。
「……くぅ?」
眠そうに鳴くと、親うさぎの頭を尻尾で優しく撫でた。
◇ ◇ ◇
「仲良しなんですの!」
エリーが嬉しそうに笑う。
◇ ◇ ◇
続いてリス達も集まる。
子猿達も木の上から顔を出す。
みんな巨大狐の周りでのんびり過ごし始めた。
◇ ◇ ◇
「……主というより」
レイモンドが苦笑する。
「森のお昼寝係ですね」
◇ ◇ ◇
その言葉に、レンちゃんが吹き出した。
「あはは♡ 確かにそうねぇ♡」
◇ ◇ ◇
巨大狐は欠伸を一つすると、また眠り始めた。
森の動物達も安心したように散っていく。
◇ ◇ ◇
ルミナが小さく微笑んだ。
「この森が平和なのは、この子がいるから」
◇ ◇ ◇
ガイルも頷く。
「余計な戦いは必要なかったな」
◇ ◇ ◇
「珍しく平和に終わりましたね」
レイモンドがほっと息をつく。
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんがにっこり笑う。
「たまにはこういう依頼もいいわよねぇ♡」
◇ ◇ ◇
一行は静かに森を後にした。
その背中を、巨大狐は薄く目を開けて見送っていた。
そして小さく一声だけ鳴く。
「……くぅ」
まるで「またおいで」と言っているようだった。




