第46話 お弁当泥棒の正体
森の入り口。
一行は少年に案内されながら歩いていた。
◇ ◇ ◇
「ここなんだ!」
少年が指差す。
大きな切り株の上だった。
◇ ◇ ◇
「ここにお弁当を置いて……」
「ちょっと川で手を洗って戻ったら、なくなってたんだ!」
◇ ◇ ◇
「ふむ」
ガイルが周囲を見回す。
「争った跡はないな」
◇ ◇ ◇
ニアはしゃがみ込み、地面を調べる。
「足跡がある」
◇ ◇ ◇
「人ですか?」
レイモンドが尋ねる。
◇ ◇ ◇
「違う」
ニアは首を振った。
「小さい」
◇ ◇ ◇
ルミナも地面を見つめる。
「一匹じゃない」
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんが笑う。
「仲間がいるのねぇ♡」
◇ ◇ ◇
その時。
毛玉がふわりと飛び立った。
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
「あっ、毛玉!」
エリーが後を追う。
◇ ◇ ◇
毛玉は木の枝へ飛び移る。
さらにその先へ。
◇ ◇ ◇
「何か見つけたのか」
ガイルも続く。
◇ ◇ ◇
しばらく進むと。
木の根元に、見覚えのある包みが落ちていた。
◇ ◇ ◇
「あっ!」
少年が駆け寄る。
「僕のお弁当箱!」
◇ ◇ ◇
蓋は開いている。
中身は――
きれいさっぱり空だった。
◇ ◇ ◇
「全部食べられてる……」
少年が肩を落とす。
◇ ◇ ◇
その時だった。
ガサッ。
◇ ◇ ◇
木の上から、小さな影が顔を出す。
◇ ◇ ◇
「キキッ!」
◇ ◇ ◇
「猿ですわ!」
エリーが指差した。
◇ ◇ ◇
一匹。
二匹。
三匹。
次々と木の上に現れる。
◇ ◇ ◇
「犯人は君たちだったのねぇ♡」
レンちゃんが笑う。
◇ ◇ ◇
一匹の子猿がおずおずと降りてきた。
手には、お弁当に入っていた卵焼きが握られている。
◇ ◇ ◇
「まだ残ってた!」
少年が嬉しそうに声を上げる。
◇ ◇ ◇
しかし。
子猿は卵焼きを自分で食べず、後ろを振り返った。
◇ ◇ ◇
そこには。
まだ小さな赤ちゃん猿がいた。
◇ ◇ ◇
「キュッ」
子猿は卵焼きを赤ちゃん猿に渡す。
◇ ◇ ◇
赤ちゃん猿は嬉しそうに食べ始めた。
◇ ◇ ◇
「あ……」
エリーが小さく息をのむ。
◇ ◇ ◇
「赤ちゃんのためだったんですの……」
◇ ◇ ◇
レイモンドも頭をかく。
「怒れないですね……」
◇ ◇ ◇
少年は少し考えてから笑った。
「いいよ!」
「お腹空いてたなら仕方ない!」
◇ ◇ ◇
子猿たちは嬉しそうに鳴いた。
「キキッ!」
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんが微笑む。
「今度からは盗まないで、ちゃんとお願いするのよぉ♡」
◇ ◇ ◇
子猿たちは何度も頷いていた。
本当に分かったかは分からない。
◇ ◇ ◇
「依頼完了ですね!」
エリーが笑顔になる。
◇ ◇ ◇
「今回は誰も殴らなかったな」
ガイルが少しだけ残念そうに呟く。
◇ ◇ ◇
「殴る必要がなくて何よりです!」
レイモンドが即座にツッコんだ。
◇ ◇ ◇
笑い声が森に響く。
平和な一日――。
そう思われた、その時。
森のさらに奥から。
ズシン……。
何かが歩くような重い音が、一度だけ響いた。
◇ ◇ ◇
全員が音のした方を見る。
しかし、姿は見えなかった。
◇ ◇ ◇
「……気のせい?」
エリーが呟く。
◇ ◇ ◇
ルミナだけが静かに森の奥を見つめていた。
「違う」
その一言だけを残した




