第43話 木の実泥棒を捕まえろ
森の奥。
ガイルは大きな木を見上げていた。
◇ ◇ ◇
「確かに少ないな」
枝には木の実がほとんど残っていない。
◇ ◇ ◇
「これじゃ親子四匹じゃ足りないですわ」
エリーが心配そうに呟く。
◇ ◇ ◇
「誰かが先に食べてる」
ルミナが地面を見つめる。
◇ ◇ ◇
「盗まれてるってことですか?」
レイモンドが聞く。
◇ ◇ ◇
ルミナは静かに頷いた。
「たぶん」
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんが辺りを見回す。
「犯人探しってことねぇ♡」
◇ ◇ ◇
「今度は木の実泥棒ですか……」
レイモンドは慣れたようにため息をついた。
◇ ◇ ◇
その時。
毛玉が突然飛び立った。
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
「どうしたの?」
エリーが後を追う。
◇ ◇ ◇
毛玉は一本の木の前で止まる。
その根元には。
大量の木の実が落ちていた。
◇ ◇ ◇
「食べ残し?」
ニアがしゃがみ込む。
◇ ◇ ◇
「違う」
ルミナが首を振る。
「運んでる途中」
◇ ◇ ◇
「つまり犯人は近くにいるな」
ガイルが拳を握る。
◇ ◇ ◇
「殴っちゃダメよぉ♡」
レンちゃんが笑う。
「まだ犯人って決まったわけじゃないもの♡」
◇ ◇ ◇
「そうだな」
ガイルは素直に拳を下ろした。
◇ ◇ ◇
ガサガサッ。
茂みが揺れる。
◇ ◇ ◇
「いた!」
エリーが声を上げる。
◇ ◇ ◇
飛び出してきたのは――
一匹の小さなリスだった。
口いっぱいに木の実をくわえている。
◇ ◇ ◇
「なんだ、リスか」
レイモンドがほっとする。
◇ ◇ ◇
しかし。
後ろから。
ガサガサッ。
ガサガサッ。
◇ ◇ ◇
二匹。
三匹。
十匹。
二十匹。
◇ ◇ ◇
大量のリスが現れた。
◇ ◇ ◇
「多っ!!」
レイモンドが思わず叫ぶ。
◇ ◇ ◇
リス達は一斉に木の実を運び始める。
まるで行進だった。
◇ ◇ ◇
「全部あの子達が?」
エリーが目を丸くする。
◇ ◇ ◇
「違う」
ルミナが首を横に振る。
「運ばされてる」
◇ ◇ ◇
「え?」
◇ ◇ ◇
リス達の後ろから。
ゆっくりと大きな影が姿を現した。
◇ ◇ ◇
「ブヒィ!」
◇ ◇ ◇
巨大なイノシシだった。
◇ ◇ ◇
「なるほど」
ガイルが構える。
「親玉か」
◇ ◇ ◇
巨大イノシシは山のように積まれた木の実を、夢中で食べている。
◇ ◇ ◇
「あの子がお腹を空かせてた原因ねぇ♡」
レンちゃんが肩をすくめた。
◇ ◇ ◇
「どうします?」
レイモンドが聞く。
◇ ◇ ◇
レンちゃんは笑顔で一歩前へ出る。
「まずはお話ししましょうかぁ♡」
◇ ◇ ◇
巨大イノシシは顔を上げる。
レンちゃんを見る。
そして。
勢いよく突進してきた。
◇ ◇ ◇
「ブヒィィィーー!!」
◇ ◇ ◇
「……交渉決裂ねぇ♡」
レンちゃんは笑った。




