第39話 王様からの呼び出しは大体ろくでもない
翌朝。
よろず屋オネェ。
開店準備中。
◇ ◇ ◇
桃瀬は棚の商品を並べていた。
店内は静かだ。
レンちゃんはまだ出勤していない。
◇ ◇ ◇
コンコン。
扉が叩かれる。
◇ ◇ ◇
「営業時間前だ」
桃瀬が扉を開ける。
そこに立っていたのは。
王宮の騎士だった。
◇ ◇ ◇
「よろず屋オネェ様に、国王陛下からのご伝言です」
◇ ◇ ◇
「……またか」
桃瀬が小さく呟く。
◇ ◇ ◇
九時。
腕時計が時を告げる。
◇ ◇ ◇
桃瀬はポケットからピンクのシュシュを取り出した。
髪を結ぶ。
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡ おはようございまぁす♡」
◇ ◇ ◇
騎士はもう驚かなかった。
慣れてしまったらしい。
◇ ◇ ◇
「国王陛下がお呼びです」
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんが首を傾げる。
「今度は何かしらぁ?」
◇ ◇ ◇
その頃。
レイモンドは嫌な予感で目が覚めていた。
◇ ◇ ◇
「……今日は休みたい」
◇ ◇ ◇
ガチャ。
家の扉が開く。
◇ ◇ ◇
「レイモンド様!」
◇ ◇ ◇
「やっぱり来たぁぁぁ!!」
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
一時間後。
王宮。
応接室。
◇ ◇ ◇
国王の前には。
レンちゃん。
エリー。
ガイル。
ニア。
ルミナ。
そして。
死んだ魚のような目をしたレイモンド。
◇ ◇ ◇
「突然呼び立ててすまない」
国王が口を開く。
◇ ◇ ◇
「実は、少し困ったことがあってな」
◇ ◇ ◇
「今度は何ですか……」
レイモンドが力なく呟く。
◇ ◇ ◇
国王は苦笑した。
「事件というほどではない」
◇ ◇ ◇
レイモンドの表情が少し明るくなる。
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「城の庭園に住み着いた動物を保護してほしい」
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「……動物?」
エリーが首を傾げる。
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「庭師たちも手を焼いていてな」
◇ ◇ ◇
「危険なんですか?」
ニアが尋ねる。
◇ ◇ ◇
「いや」
国王は首を振った。
◇ ◇ ◇
「とても人懐っこい」
◇ ◇ ◇
「じゃあ何が問題なんですか?」
レイモンドが聞く。
◇ ◇ ◇
国王は少し言いづらそうに答えた。
◇ ◇ ◇
「……大きい」
◇ ◇ ◇
「大きい?」
◇ ◇ ◇
「とても」
◇ ◇ ◇
ガイルが腕を組む。
「熊ですか」
◇ ◇ ◇
「いや」
◇ ◇ ◇
「虎ですか?」
エリーが聞く。
◇ ◇ ◇
「いや」
◇ ◇ ◇
レンちゃんが笑う。
「あらぁ♡」
「じゃあ何なのぉ♡」
◇ ◇ ◇
国王は静かに答えた。
◇ ◇ ◇
「うさぎだ」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
「……はい?」
レイモンドの声が裏返る。
◇ ◇ ◇
「耳まで入れると三メートルほどある」
◇ ◇ ◇
「大きすぎません!?」
◇ ◇ ◇
「しかも」
国王は続ける。
◇ ◇ ◇
「庭の野菜を全部食べた」
◇ ◇ ◇
「食欲旺盛ですわね……」
エリーが苦笑する。
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんは楽しそうに立ち上がった。
◇ ◇ ◇
「じゃあ会いに行きましょうかぁ♡」
◇ ◇ ◇
レイモンドは思った。
◇ ◇ ◇
"普通の動物"という言葉を。
この人たちは知らないのだろう、と。




