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そのオネェ、異世界でよろず屋を開業する  作者: S@Y@


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35/41

第35話 王都帰還と休暇申請の却下速度


 王都。


 いつもの朝。


 人々は普通に歩き、普通に買い物をしていた。


 少なくとも、外側だけは。


 ◇ ◇ ◇


「……帰ってきた」


 レイモンドの第一声だった。


 ◇ ◇ ◇


「おかえりなさいませ!」


 エリーは元気だった。


 ◇ ◇ ◇


「ただいま♡」


 レンちゃんはいつも通りだった。


 ◇ ◇ ◇


 ガイルは空を見ている。


「平和だな」


 ◇ ◇ ◇


「どこがですか」


 レイモンドは即答した。


 ◇ ◇ ◇


 ニアは淡々と報告書を抱えている。


「一応、全部正常扱いになった」


 ◇ ◇ ◇


「正常とは?」


 レイモンドの声は震えていた。


 ◇ ◇ ◇


 ルミナは紅茶を飲んでいる。


「正常よ」


 ◇ ◇ ◇


「どこが!?」


 ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇


 王宮からの呼び出しは、すぐ来た。


 ◇ ◇ ◇


「監査報告、提出してください」


 騎士が言う。


 ◇ ◇ ◇


 レイモンドは分厚い書類を見た。


 そして。


 そっと机に置いた。


 ◇ ◇ ◇


「……書けません」


 ◇ ◇ ◇


「書いてください」


 ◇ ◇ ◇


「“森が意思を持ってました”って書けますか?」


 ◇ ◇ ◇


「書いてください」


 ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇


 その夜。


 監査局。


 レイモンドは死んだ目で書類を書いていた。


 ◇ ◇ ◇


「よろず屋オネェ……危険度:計測不能……」


 ◇ ◇ ◇


「いや、これもう国の方が危険では……」


 ◇ ◇ ◇


 ペンが止まる。


 ◇ ◇ ◇


 その瞬間。


 バンッ!


 ◇ ◇ ◇


 ドアが開く。


 ◇ ◇ ◇


「レイモンド様!」


 ◇ ◇ ◇


「はい」


 ◇ ◇ ◇


「追加依頼です!」


 ◇ ◇ ◇


「嫌です」


 即答だった。


 ◇ ◇ ◇


 書類が置かれる。


 ◇ ◇ ◇


『王都南区:謎の歌声調査』


 ◇ ◇ ◇


「……」


 ◇ ◇ ◇


「……」


 ◇ ◇ ◇


「またかぁぁぁ!!」


 レイモンドの叫びが夜の監査局に響いた。


 ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。


 よろず屋オネェ。


 ◇ ◇ ◇


「はい、依頼入りましたぁ♡」


 レンちゃんが笑う。


 ◇ ◇ ◇


「今度は歌声調査らしいわよぉ♡」


 ◇ ◇ ◇


「歌声?」


 ガイルが首を傾げる。


 ◇ ◇ ◇


「幽霊かもしれないって」


 ニアが言う。


 ◇ ◇ ◇


「殴れば出るな」


 ◇ ◇ ◇


「やめろ」


 ◇ ◇ ◇


 レイモンドは机に突っ伏した。


「休暇申請します……」


 ◇ ◇ ◇


「だめよ♡」


 レンちゃんが即答した。


 ◇ ◇ ◇


「まだ何もしてませんよ!?」


 ◇ ◇ ◇


「これから楽しくなるのにぃ♡」


 ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇


 その瞬間。


 エリーが手を挙げた。


「実は私も……」


 ◇ ◇ ◇


「はい?」


 ◇ ◇ ◇


「昨日の件で、少しだけ気になることがありまして」


 ◇ ◇ ◇


 空気が止まる。


 ◇ ◇ ◇


「……何?」


 ルミナが聞く。


 ◇ ◇ ◇


 エリーは静かに言った。


「毛玉さん、まだ王宮にいます」


 ◇ ◇ ◇


 沈黙。


 ◇ ◇ ◇


「え?」


 レイモンドが顔を上げた。


 ◇ ◇ ◇


「普通にお茶飲んでます」


 ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇


 全員が固まった。


 ◇ ◇ ◇


 レンちゃんだけが笑っていた。


「あらぁ♡」


 ◇ ◇ ◇


「新しい居候が増えたわねぇ♡」


 ◇ ◇ ◇


 レイモンドは悟った。


 ◇ ◇ ◇


 休暇は。


 たぶん一生取れない。



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