第34話 長いので殴って終わらせることにした
ズズズズズ……
森が揺れる。
巨大熊が震える。
巨大猪が伏せる。
巨大亀は半分甲羅に引っ込んだ。
毛玉まで丸くなっている。
◇ ◇ ◇
「……まずい」
ガイルが呟いた。
◇ ◇ ◇
「何がですか!」
レイモンドは半泣きだった。
◇ ◇ ◇
ガイルの頭のキノコが、これまでで一番強く光る。
ピカァァッ!
◇ ◇ ◇
「森の主が来る」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
「え?」
エリーが固まる。
◇ ◇ ◇
「主?」
ニアが聞く。
◇ ◇ ◇
「ああ」
ガイルは頷く。
◇ ◇ ◇
「本物の」
◇ ◇ ◇
レイモンドは天を仰いだ。
◇ ◇ ◇
「まだ上がいるんですか……」
◇ ◇ ◇
その時だった。
森の奥。
巨大な木々が左右に割れる。
ズシン。
ズシン。
ズシン。
◇ ◇ ◇
現れた。
◇ ◇ ◇
巨大なキノコ。
◇ ◇ ◇
高さは城ほど。
傘には森そのものが生えている。
目がある。
口もある。
そして。
なぜか髭まであった。
◇ ◇ ◇
「……」
「……」
「……」
◇ ◇ ◇
最初に口を開いたのは。
◇ ◇ ◇
「キノコですわ……」
◇ ◇ ◇
エリーだった。
◇ ◇ ◇
「キノコだな」
ガイルも頷いた。
◇ ◇ ◇
「キノコね」
ニアも認めた。
◇ ◇ ◇
「キノコねぇ」
ルミナは諦めていた。
◇ ◇ ◇
「いや、そこじゃないでしょう!!」
レイモンドだけが正常だった。
◇ ◇ ◇
巨大キノコが口を開く。
◇ ◇ ◇
『……歓迎する……』
◇ ◇ ◇
声が響く。
森全体に。
◇ ◇ ◇
『毛玉様の帰還……』
◇ ◇ ◇
「ピィ!」
毛玉が胸を張った。
◇ ◇ ◇
『そして……』
◇ ◇ ◇
巨大な目が。
レンちゃんを見る。
◇ ◇ ◇
『最強の来訪者……』
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡」
レンちゃんが笑った。
◇ ◇ ◇
『ぜひ……森の王に……』
◇ ◇ ◇
「嫌です!!」
レイモンドが即答した。
◇ ◇ ◇
「誰もあなたに聞いてない」
ニアが冷静に言った。
◇ ◇ ◇
「でも嫌でしょう!?」
レイモンドは叫んだ。
◇ ◇ ◇
巨大キノコは続ける。
◇ ◇ ◇
『森の王になれば……』
『毎日歓迎会……』
『毎日宴会……』
『毎日キノコ……』
◇ ◇ ◇
ガイルの頭のキノコが反応した。
ピカッ。
◇ ◇ ◇
「ちょっと魅力的だな」
◇ ◇ ◇
「正気に戻ってください!!」
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その時。
レンちゃんがため息をついた。
◇ ◇ ◇
「ねぇ♡」
◇ ◇ ◇
全員が振り返る。
◇ ◇ ◇
「長いわぁ♡」
◇ ◇ ◇
嫌な予感がした。
レイモンドだけが。
◇ ◇ ◇
「レンちゃん?」
ルミナが聞く。
◇ ◇ ◇
「そろそろ帰りたいのよねぇ♡」
◇ ◇ ◇
レンちゃんは拳を握った。
◇ ◇ ◇
「だから♡」
◇ ◇ ◇
一歩。
前へ出る。
◇ ◇ ◇
「全部まとめて終わらせるわねぇ♡」
◇ ◇ ◇
「待っ――」
レイモンドの制止は間に合わなかった。
◇ ◇ ◇
ドゴォォォォン!!!
◇ ◇ ◇
レンちゃんの拳が。
巨大キノコの額にめり込んだ。
◇ ◇ ◇
『……え?』
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巨大キノコが困惑した。
◇ ◇ ◇
次の瞬間。
◇ ◇ ◇
パリン。
◇ ◇ ◇
森中のキノコが。
一斉に光って。
消えた。
◇ ◇ ◇
キノコの壁も。
巨大キノコも。
ガイルの頭のキノコも。
全部。
◇ ◇ ◇
消えた。
◇ ◇ ◇
「……」
「……」
「……」
◇ ◇ ◇
静寂。
◇ ◇ ◇
ガイルが頭を触る。
◇ ◇ ◇
「戻った」
◇ ◇ ◇
レイモンドが膝から崩れ落ちた。
◇ ◇ ◇
「終わった……」
◇ ◇ ◇
レンちゃんは手を払う。
◇ ◇ ◇
「終わったわねぇ♡」
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ルミナが苦笑した。
◇ ◇ ◇
「結局、殴って終わった」
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「いつも通りだな」
ガイルが頷く。
◇ ◇ ◇
エリーも笑った。
◇ ◇ ◇
「よかったですわ!」
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ただ一人。
レイモンドだけが。
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「結局……毛玉は何だったんですか……?」
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毛玉を見る。
◇ ◇ ◇
「ピィ?」
◇ ◇ ◇
本人(?)は。
全く分かっていなかった。
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その瞬間。
毛玉の後ろを。
巨大熊たちが一斉に通った。
◇ ◇ ◇
そして。
◇ ◇ ◇
ぺこり。
◇ ◇ ◇
全員。
深々と頭を下げた。
◇ ◇ ◇
「……」
レイモンドは。
見なかったことにした。
◇ ◇ ◇
こうして。
キノコの森事件は。
誰にも理解されないまま。
解決した。




