第31話 巨大亀、土下座する
ドゴォォォォン!!
巨大亀がひっくり返った。
森が揺れた。
鳥が飛び立った。
レイモンドの精神も飛び立ちそうだった。
◇ ◇ ◇
「……怖がってますわ」
エリーが呟く。
◇ ◇ ◇
実際。
巨大亀は四本の足をバタバタさせていた。
必死に。
とても必死に。
◇ ◇ ◇
「助ける?」
ニアが聞く。
◇ ◇ ◇
「その前に話を聞くわぁ♡」
レンちゃんは笑顔だった。
◇ ◇ ◇
巨大亀の動きが止まった。
◇ ◇ ◇
「止まった!?」
レイモンドが叫ぶ。
◇ ◇ ◇
「言葉が分かるのか?」
ガイルが首を傾げる。
◇ ◇ ◇
頭のキノコが光る。
ピカッ。
◇ ◇ ◇
「ああ」
ガイルが頷いた。
◇ ◇ ◇
「レン殿に逆らうなって言ってる」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
「誰が?」
レイモンドが聞く。
◇ ◇ ◇
「亀」
◇ ◇ ◇
「会話成立してる!?」
◇ ◇ ◇
エリーが目を輝かせる。
「すごいですわ!」
◇ ◇ ◇
「全然すごくありません!」
レイモンドは限界だった。
◇ ◇ ◇
その時。
毛玉がガイルの肩から飛び降りた。
◇ ◇ ◇
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
巨大亀の前まで歩く。
◇ ◇ ◇
そして。
◇ ◇ ◇
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
偉そうだった。
とても。
◇ ◇ ◇
巨大亀はさらに震えた。
◇ ◇ ◇
「え」
ルミナが固まる。
◇ ◇ ◇
「どうしたの?」
レンちゃんが聞く。
◇ ◇ ◇
ルミナは毛玉と巨大亀を交互に見た。
◇ ◇ ◇
「……もしかして」
◇ ◇ ◇
「何ですか」
レイモンドが恐る恐る聞く。
◇ ◇ ◇
「毛玉の方が偉い?」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
巨大猪が頷いた。
巨大熊も頷いた。
巨大モグラも頷いた。
巨大ニワトリも頷いた。
巨大キノコ樹まで揺れた。
◇ ◇ ◇
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
毛玉は胸を張った。
◇ ◇ ◇
「知らなかったのか」
ガイルが言う。
◇ ◇ ◇
「知るわけないでしょう!!」
レイモンドが絶叫した。
◇ ◇ ◇
その瞬間。
ガイルの頭。
キノコがまた光る。
ピカッ。
◇ ◇ ◇
「……あ」
◇ ◇ ◇
「今度は何ですか……」
レイモンドの声には諦めが混ざっていた。
◇ ◇ ◇
「亀が言ってる」
◇ ◇ ◇
「何を?」
◇ ◇ ◇
ガイルは真顔で答えた。
◇ ◇ ◇
「毛玉様がお帰りになったので、森の住民全員で歓迎会を開くらしい」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
「……は?」
◇ ◇ ◇
「あと」
◇ ◇ ◇
ガイルは続けた。
◇ ◇ ◇
「主賓はレン殿だって」
◇ ◇ ◇
レンちゃんが笑う。
「あらぁ♡」
◇ ◇ ◇
「楽しそうじゃなぁい♡」
◇ ◇ ◇
レイモンドは空を見上げた。
◇ ◇ ◇
「……帰りたい」
◇ ◇ ◇
しかし。
誰も聞いていなかった。




