第29話 ガイル、キノコ王になる
「ピィ!」
毛玉がガイルの肩に乗った。
◇ ◇ ◇
その瞬間だった。
巨大猪が吠える。
「ブォォォ!!」
巨大熊が吠える。
「グルォォ!!」
巨大モグラが地面を叩く。
ドンドンドン!
巨大ニワトリが羽を広げる。
「コケェェェェ!!」
◇ ◇ ◇
「……何?」
ガイルが困惑した。
◇ ◇ ◇
「歓迎されてる」
ニアが即答した。
◇ ◇ ◇
「何に?」
◇ ◇ ◇
「王」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
「は?」
レイモンドの声が裏返った。
◇ ◇ ◇
「たぶんキノコ側の」
ルミナが嫌そうに補足する。
◇ ◇ ◇
「キノコ側って何なんですか!!」
レイモンドはもう限界だった。
◇ ◇ ◇
その時。
ガイルの頭のキノコがまた光る。
ピカッ。
◇ ◇ ◇
「……なんか分かるぞ」
ガイルが呟いた。
◇ ◇ ◇
「何がですか!?」
◇ ◇ ◇
「あの熊が腹減ってる」
◇ ◇ ◇
巨大熊が頷いた。
◇ ◇ ◇
「え?」
エリーが固まる。
◇ ◇ ◇
「あの猪はさっき投げられたのが悔しいらしい」
◇ ◇ ◇
巨大猪が頷いた。
◇ ◇ ◇
「あのニワトリは……」
ガイルは少し黙った。
◇ ◇ ◇
「自分が一番強いと思ってる」
◇ ◇ ◇
「コケェ!!」
巨大ニワトリが誇らしげに鳴いた。
◇ ◇ ◇
レイモンドは天を仰いだ。
「なんで会話できるんですか……」
◇ ◇ ◇
「キノコ化」
ルミナが簡潔に答えた。
◇ ◇ ◇
「その一言で済ませないでください!」
◇ ◇ ◇
レンちゃんは腹を抱えて笑っていた。
「あははははっ♡」
◇ ◇ ◇
「ガイルちゃんになったのねぇ♡」
◇ ◇ ◇
「俺はガイルだ!」
◇ ◇ ◇
その時だった。
巨大なキノコ樹が再び動いた。
ミシ……。
ミシミシ……。
◇ ◇ ◇
全員が構える。
◇ ◇ ◇
だが。
キノコ樹はゆっくりと枝を伸ばした。
その先には――
ガイル。
◇ ◇ ◇
「来るぞ!」
レイモンドが叫ぶ。
◇ ◇ ◇
しかし。
枝は攻撃しなかった。
◇ ◇ ◇
そっと。
ガイルの頭のキノコに触れた。
◇ ◇ ◇
ポン。
◇ ◇ ◇
花が咲いた。
◇ ◇ ◇
「増えたぁぁぁ!!」
レイモンドが絶叫する。
◇ ◇ ◇
ガイルの頭。
二本のキノコの間に。
小さな紫色の花が咲いていた。
◇ ◇ ◇
「……綺麗だな」
ガイルが呟く。
◇ ◇ ◇
「受け入れないでください!!」
◇ ◇ ◇
ルミナは顔を覆った。
「あー……これ予想より進行早い」
◇ ◇ ◇
「治るんですよね!?」
エリーが半泣きで聞く。
◇ ◇ ◇
ルミナは少し考えた。
◇ ◇ ◇
「……たぶん」
◇ ◇ ◇
「たぶん!?」
◇ ◇ ◇
その瞬間。
ガイルの頭の花が、もう一度光った。
ピカッ。
◇ ◇ ◇
そして。
◇ ◇ ◇
「……分かった」
ガイルが真顔になる。
◇ ◇ ◇
「何がですか?」
レイモンドが恐る恐る聞いた。
◇ ◇ ◇
ガイルは森の奥を見た。
◇ ◇ ◇
「もっと大きいのが来る」
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
直後。
◇ ◇ ◇
ズシン。
◇ ◇ ◇
ズシン。
◇ ◇ ◇
ズシン。
◇ ◇ ◇
山の向こうから。
明らかに今までで一番大きな足音が聞こえてきた。
◇ ◇ ◇
レイモンドは膝から崩れ落ちた。
「……帰りたい」




