第25話 ガイル、ついに本気を出す
ブォォォォォッ!!
巨大猪の咆哮が森に響く。
木々が揺れる。
鳥達が一斉に飛び立つ。
レイモンドも飛んで逃げたかった。
◇ ◇ ◇
「大きくなってませんの……?」
エリーが青い顔で呟く。
以前戦った巨大猪より、明らかに大きい。
体長は十メートル近い。
しかも全身に紫色のキノコが生えていた。
◇ ◇ ◇
「キノコだらけだな」
ガイルが感心したように言う。
◇ ◇ ◇
「そこなんですか?」
レイモンドはもう疲れていた。
◇ ◇ ◇
巨大猪が地面を蹴る。
ドォン!!
土が弾け飛ぶ。
◇ ◇ ◇
「来ますわ!」
エリーが叫んだ。
◇ ◇ ◇
ドドドドドドドドッ!!
巨大猪が突進する。
森をなぎ倒しながら一直線。
◇ ◇ ◇
「右」
ニアが短く告げる。
全員が散開した。
◇ ◇ ◇
巨大猪はそのまま通り過ぎる。
後方の大木が何本も吹き飛んだ。
◇ ◇ ◇
「危なっ!?」
レイモンドの顔色がさらに悪くなる。
◇ ◇ ◇
「前より強い」
ニアが言う。
「キノコの影響ねぇ♡」
レンちゃんも頷いた。
◇ ◇ ◇
その時だった。
ガイルが前へ出る。
◇ ◇ ◇
「よし」
◇ ◇ ◇
拳を握る。
◇ ◇ ◇
「今度は俺がやる」
◇ ◇ ◇
「ガイル?」
エリーが首を傾げた。
◇ ◇ ◇
ガイルは笑う。
「ずっとレン殿に任せてばかりだからな」
◇ ◇ ◇
「たまには格好つけたい」
◇ ◇ ◇
「ガイル……」
エリーが少し感動した。
◇ ◇ ◇
「でも無理そうならレン殿頼む!」
◇ ◇ ◇
「台無しですわ!」
◇ ◇ ◇
レンちゃんが大笑いする。
「あらぁ♡ いいわよぉ♡」
◇ ◇ ◇
その時。
巨大猪が再び向きを変えた。
◇ ◇ ◇
ドドドドドドドドッ!!
◇ ◇ ◇
今度の標的はガイル。
◇ ◇ ◇
「来たな!」
◇ ◇ ◇
ガイルは逃げない。
その場で腰を落とす。
◇ ◇ ◇
「ガイル!」
エリーが叫ぶ。
◇ ◇ ◇
激突。
◇ ◇ ◇
――ドォォォォォン!!
◇ ◇ ◇
衝撃で地面が揺れた。
土煙が舞い上がる。
◇ ◇ ◇
「え……?」
レイモンドが固まる。
◇ ◇ ◇
巨大猪の牙を。
ガイルが両手で受け止めていた。
◇ ◇ ◇
「止めた!?」
◇ ◇ ◇
「止めましたわ!?」
◇ ◇ ◇
エリーも驚く。
◇ ◇ ◇
巨大猪が押す。
ガイルも押し返す。
◇ ◇ ◇
地面が割れる。
木の根が浮き上がる。
◇ ◇ ◇
「ぐおおおおおっ!!」
◇ ◇ ◇
ガイルが吠える。
◇ ◇ ◇
「おぉ♡」
レンちゃんが感心した。
◇ ◇ ◇
「結構やるじゃなぁい♡」
◇ ◇ ◇
その言葉で。
ガイルの顔が少し嬉しそうになる。
◇ ◇ ◇
「うおおおおおおっ!!」
◇ ◇ ◇
次の瞬間。
巨大猪の身体が浮いた。
◇ ◇ ◇
「え?」
レイモンドが固まる。
◇ ◇ ◇
そして。
◇ ◇ ◇
ブンッ!!
◇ ◇ ◇
巨大猪が投げ飛ばされた。
◇ ◇ ◇
森の向こうへ消えていく。
◇ ◇ ◇
ドゴォォォォォン!!
遠くで爆音が響いた。
◇ ◇ ◇
沈黙。
◇ ◇ ◇
「……」
「……」
「……」
◇ ◇ ◇
レイモンドが呟く。
◇ ◇ ◇
「人間ですか?」
◇ ◇ ◇
「人間だぞ!」
ガイルが胸を張った。
◇ ◇ ◇
「説得力がありません!」
◇ ◇ ◇
その時だった。
毛玉が森の奥を見て固まる。
◇ ◇ ◇
「ピィ……?」
◇ ◇ ◇
珍しく不安そうな声。
◇ ◇ ◇
ルミナが振り返る。
「どうしたの?」
◇ ◇ ◇
毛玉は、巨大猪が飛んでいった方向を見ていた。
◇ ◇ ◇
そして。
◇ ◇ ◇
ドシン。
◇ ◇ ◇
ドシン。
◇ ◇ ◇
ドシン。
◇ ◇ ◇
地面が揺れる。
◇ ◇ ◇
「……また?」
レイモンドの声が震える。
◇ ◇ ◇
森の向こうから現れたのは――
巨大猪。
巨大熊。
巨大モグラ。
巨大ニワトリ。
◇ ◇ ◇
全員集合だった。
◇ ◇ ◇
「なんで増えるんですかぁぁぁ!!」
レイモンドの悲鳴が森に響いた。




