第23話 空飛ぶニワトリを捕まえろ
「飛んでますわぁぁぁ!?」
エリーの悲鳴が王都に響いた。
◇ ◇ ◇
巨大な影が空を横切る。
バサァァァッ!
とんでもない風圧だった。
店の看板が揺れる。
洗濯物が飛ぶ。
レイモンドの髪も飛ぶ。
◇ ◇ ◇
「本当に飛んでる……」
レイモンドは遠い目をした。
◇ ◇ ◇
空には。
巨大なニワトリ。
体長三メートルほど。
翼を広げるとさらに大きい。
◇ ◇ ◇
「ニワトリって飛べたんですね」
エリーが呟く。
「普通はそんなに飛ばない」
ニアが訂正した。
◇ ◇ ◇
「まぁ♡」
レンちゃんは笑う。
「今さら普通を求めても仕方ないわよぉ♡」
◇ ◇ ◇
「最近そればっかりですね!」
レイモンドが叫んだ。
◇ ◇ ◇
その時。
空のニワトリが急降下した。
◇ ◇ ◇
「コケェェェェェ!!」
◇ ◇ ◇
王都広場へ一直線。
◇ ◇ ◇
「まずい!」
ニアが駆け出す。
「行くぞ!」
ガイルも続いた。
◇ ◇ ◇
数分後。
王都広場。
◇ ◇ ◇
住民達は逃げ回っていた。
「きゃー!」
「でかい!」
「ニワトリだー!」
◇ ◇ ◇
そして。
巨大ニワトリは――
パン屋の屋台を襲っていた。
◇ ◇ ◇
「……あれ?」
レイモンドが首を傾げる。
◇ ◇ ◇
ニワトリは人を襲っていない。
パンを食べている。
ひたすら。
◇ ◇ ◇
モグモグ。
モグモグ。
モグモグ。
◇ ◇ ◇
「パン泥棒ですわ!」
エリーが言った。
◇ ◇ ◇
「被害額が急に小さくなったな……」
レイモンドが呟く。
◇ ◇ ◇
パン屋の店主が泣いていた。
「今日の売り物がぁぁぁ!」
◇ ◇ ◇
「被害額は大きいですね」
レイモンドは訂正した。
◇ ◇ ◇
「捕まえるぞ!」
ガイルが飛び出す。
◇ ◇ ◇
しかし。
巨大ニワトリは羽ばたいた。
バサァァァッ!
◇ ◇ ◇
「うおっ!?」
ガイルが吹き飛ぶ。
◇ ◇ ◇
ベチャッ。
噴水に落ちた。
◇ ◇ ◇
「ガイル!」
エリーが駆け寄る。
◇ ◇ ◇
ガイルは立ち上がった。
「強いな!」
少し嬉しそうだった。
◇ ◇ ◇
「楽しそうですね」
レイモンドが呆れた。
◇ ◇ ◇
その時だった。
毛玉が前へ出る。
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
巨大ニワトリが固まった。
◇ ◇ ◇
「また?」
ニアが目を細める。
◇ ◇ ◇
巨大モグラの時と同じだ。
ニワトリは毛玉を見た瞬間、動きを止めた。
◇ ◇ ◇
「コ……コケ?」
◇ ◇ ◇
なぜか怯えている。
◇ ◇ ◇
「やっぱり何かある」
ルミナが呟く。
◇ ◇ ◇
毛玉は胸を張った。
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
すると。
巨大ニワトリはゆっくり頭を下げた。
◇ ◇ ◇
「……え?」
エリーが固まる。
◇ ◇ ◇
次の瞬間。
巨大ニワトリは地面に伏せた。
まるで謝っているように。
◇ ◇ ◇
「降参?」
レイモンドが言う。
◇ ◇ ◇
毛玉は満足そうに頷いた。
「ピィ」
◇ ◇ ◇
そして。
巨大ニワトリの足元から――
紫色のキノコが転がり落ちた。
◇ ◇ ◇
「またお前か!」
レイモンドのツッコミが炸裂した。
◇ ◇ ◇
どうやら。
今回も原因はキノコらしい。
◇ ◇ ◇
だが。
ルミナだけは少し真面目な顔をしていた。
◇ ◇ ◇
「これ……」
「どうしたのぉ♡」
レンちゃんが聞く。
◇ ◇ ◇
「キノコの数が増えてる」
◇ ◇ ◇
全員が黙る。
◇ ◇ ◇
確かに。
最初は森だけだった。
今は王都の近くにまで広がっている。
◇ ◇ ◇
「嫌な予感がするわねぇ♡」
レンちゃんが珍しく真面目な顔になった。
◇ ◇ ◇
その頃。
誰もいない森の奥で。
◇ ◇ ◇
にょきっ。
◇ ◇ ◇
また一本。
紫色のキノコが生えた。




