第18話 毛玉、よろず屋に居座る
翌朝。
よろず屋オネェ。
開店前。
◇ ◇ ◇
「……何でいるんだ?」
レイモンドは真顔だった。
本当に真顔だった。
◇ ◇ ◇
カウンターの上。
昨日の毛玉がいる。
丸い。
小さい。
モフモフ。
「ピィ!」
元気だった。
◇ ◇ ◇
「知らん」
桃瀬が答えた。
「朝起きたらいた」
「そんな野良猫みたいに言わないでください」
レイモンドは頭を抱えた。
◇ ◇ ◇
毛玉は桃瀬の肩へ飛び乗る。
ピョン。
「ピィ♪」
「……」
桃瀬は無言だった。
特に追い払う様子もない。
◇ ◇ ◇
その時。
ガイルが店へ入ってきた。
「おはよう!」
「ピィ!」
毛玉が反応した。
◇ ◇ ◇
次の瞬間。
ガイルの頭へ飛び移る。
「おお?」
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
「懐かれてるな」
桃瀬が言う。
「可愛いな!」
ガイルは満面の笑みだった。
◇ ◇ ◇
続いてニアも入ってくる。
毛玉を見る。
「増えた?」
「増えてない」
桃瀬が即答した。
「昨日のやつだ」
「そう」
興味が薄かった。
◇ ◇ ◇
さらにエリーとルミナも到着する。
「可愛いですわぁ!」
エリーの目が輝いた。
「モフモフだねー」
ルミナも機嫌が良い。
◇ ◇ ◇
その時。
店の時計が九時を指した。
ピピッ。
桃瀬はポケットからピンクのシュシュを取り出す。
髪を結ぶ。
◇ ◇ ◇
「あらぁ♡ 開店時間ねぇ♡」
「毎回見ても慣れません」
レイモンドが即答した。
◇ ◇ ◇
カラン。
ちょうどそのタイミングで扉が開く。
「依頼をお願いしたいんだが……」
入ってきたのは農家の男性だった。
◇ ◇ ◇
「いらっしゃいませぇ♡」
レンちゃんが営業スマイルを浮かべる。
「どんな依頼かしらぁ♡」
◇ ◇ ◇
農家は困った顔で言った。
「畑が荒らされるんだ」
◇ ◇ ◇
沈黙。
「またですか」
レイモンドが呟いた。
◇ ◇ ◇
「今度は何ですの?」
エリーが聞く。
「分からん」
農家は首を振った。
「夜になると畑が荒らされる」
「猪?」
「違う」
「熊?」
「違う」
◇ ◇ ◇
「足跡は?」
ニアが聞く。
「小さい」
農家は答えた。
「うさぎくらいだ」
◇ ◇ ◇
全員が固まる。
◇ ◇ ◇
そして。
毛玉も固まった。
◇ ◇ ◇
「……ピィ」
明らかに目を逸らした。
◇ ◇ ◇
「怪しいわねぇ♡」
レンちゃんが言う。
「怪しい」
ニアも頷く。
「怪しいな!」
ガイルも頷く。
「怪しいですわ!」
エリーも頷く。
◇ ◇ ◇
「ピィ!?」
毛玉が慌てる。
◇ ◇ ◇
ルミナが毛玉を持ち上げた。
「犯人?」
「ピィーーーッ!!」
必死に首を横に振る。
◇ ◇ ◇
「言葉が分からないのが惜しいですね」
レイモンドが言う。
「本当ねぇ♡」
レンちゃんも頷いた。
◇ ◇ ◇
依頼を受理する。
畑荒らしの犯人探し。
そして。
毛玉の潔白証明。
たぶん。
◇ ◇ ◇
「ピィ!」
毛玉は元気よく鳴いた。
だが。
誰も信用していなかった。




