第17話 家サイズの熊は反則だと思う
ドシン。
ドシン。
ドシン。
地面が揺れる。
木々が大きく揺れる。
まだ姿は見えない。
だが。
確実に近付いてきている。
◇ ◇ ◇
「……家サイズ?」
レイモンドが聞き返す。
「家サイズじゃ」
キノコじいさんが頷く。
「どのくらいの家ですか」
「普通の家じゃ」
「情報が増えてません!」
◇ ◇ ◇
その時。
森の奥の木が一本倒れた。
バキバキバキッ!!
続いてもう一本。
さらにもう一本。
◇ ◇ ◇
「来ますわ!」
エリーが声を上げる。
◇ ◇ ◇
そして。
現れた。
巨大な熊。
黒い毛並み。
鋭い爪。
そして。
本当に家みたいに大きい。
◇ ◇ ◇
「でっか……」
ルミナが呟く。
「でっかいな!」
ガイルは嬉しそうだった。
「喜ぶな」
ニアが即座に突っ込む。
◇ ◇ ◇
巨大熊は一行を見た。
だが。
襲ってこない。
じっと見ている。
◇ ◇ ◇
「ん?」
レンちゃんが首を傾げる。
「様子が変ねぇ♡」
◇ ◇ ◇
巨大熊が唸る。
グルルルル……
だが。
どこか苦しそうだった。
◇ ◇ ◇
「待って」
エリーが言った。
「あの熊さん……」
「どうした?」
ガイルが聞く。
「お腹が膨らんでますわ」
◇ ◇ ◇
全員が見る。
確かに。
腹だけ不自然に大きい。
◇ ◇ ◇
「食べ過ぎ?」
ルミナが聞く。
「いや」
ニアが目を細める。
「何か入ってる」
◇ ◇ ◇
その瞬間。
巨大熊が苦しそうに転がった。
ゴロゴロゴロッ!
森が揺れる。
「うわぁ!」
レイモンドが逃げる。
◇ ◇ ◇
「敵じゃない?」
エリーが言う。
「かもねぇ♡」
レンちゃんも頷いた。
◇ ◇ ◇
巨大熊は必死に腹を押さえている。
まるで。
何かを出したいように。
◇ ◇ ◇
「……まさか」
キノコじいさんが青ざめた。
「どうした?」
ガイルが聞く。
◇ ◇ ◇
「この前見たんじゃ」
じいさんは言った。
「光るキノコを丸ごと食っとった」
◇ ◇ ◇
沈黙。
「何本?」
レンちゃんが聞く。
「数十本」
◇ ◇ ◇
全員沈黙。
「アホだな」
ニアが即答した。
◇ ◇ ◇
その時。
巨大熊の腹が光った。
ピカーッ!
◇ ◇ ◇
「嫌な予感しかしません!」
レイモンドが叫ぶ。
◇ ◇ ◇
次の瞬間。
ボフンッ!!
巨大熊の口から何かが飛び出した。
◇ ◇ ◇
「え?」
エリーが瞬く。
◇ ◇ ◇
飛び出したのは。
熊ではない。
キノコでもない。
◇ ◇ ◇
小さな毛玉だった。
◇ ◇ ◇
「…………」
「…………」
「…………」
全員が固まる。
◇ ◇ ◇
毛玉は地面に落ちる。
ぽよん。
そして。
ゆっくり立ち上がった。
◇ ◇ ◇
「ピィ」
鳴いた。
◇ ◇ ◇
「何あれ」
ルミナが聞く。
「知らん」
ニアが答える。
「ワシも知らん」
キノコじいさんも知らない。
◇ ◇ ◇
毛玉はフラフラ歩く。
そして。
真っ直ぐレンちゃんの足元へ来た。
◇ ◇ ◇
ピトッ。
靴にくっついた。
◇ ◇ ◇
「……」
レンちゃんが見下ろす。
毛玉が見上げる。
◇ ◇ ◇
「ピィ!」
◇ ◇ ◇
「懐かれたわねぇ♡」
◇ ◇ ◇
その瞬間。
巨大熊が安心したように倒れた。
ドォォン!!
◇ ◇ ◇
「気絶した!?」
レイモンドが叫ぶ。
◇ ◇ ◇
森は静かになった。
だが。
誰も気付いていなかった。
◇ ◇ ◇
レンちゃんの足元の毛玉が。
ほんの一瞬だけ。
紫色に光ったことを。




