第16話 巨大猪の秘密とキノコじいさん
ドォォォォン!!
森を揺らす激突音。
ガイルと巨大猪が正面からぶつかった。
「ぬおおおおっ!」
「ブモォォォォ!」
互角。
いや。
ほんの少しだけガイルが押されている。
◇ ◇ ◇
「でかすぎない?」
ルミナが呟く。
「昨日より絶対大きいですわ」
エリーも頷いた。
「成長期?」
「一晩で?」
レイモンドが突っ込む。
◇ ◇ ◇
巨大猪は再び突進する。
だが。
今度はニアが動いた。
シュッ。
一瞬で懐へ潜り込む。
「遅い」
足を払う。
ドガァン!!
巨大猪が横倒しになった。
◇ ◇ ◇
「ガイル!」
「おう!」
二人の連携は完璧だった。
ガイルが猪の牙を掴む。
そして。
「せぇぇぇぇい!!」
持ち上げた。
◇ ◇ ◇
「持ち上げたぁ!?」
レイモンドが叫ぶ。
「また持ち上げましたわ!」
エリーも叫ぶ。
「持ち上げたねー」
ルミナだけ反応が軽い。
◇ ◇ ◇
ブンッ!!
巨大猪は空を飛んだ。
十メートル。
二十メートル。
三十メートル。
そして。
森の奥へ消えた。
◇ ◇ ◇
静寂。
「終わった?」
レイモンドが聞く。
「終わったわねぇ♡」
レンちゃんが頷く。
◇ ◇ ◇
その時だった。
「終わっとらんぞー!」
知らない声がした。
◇ ◇ ◇
「ん?」
一同が振り向く。
そこにいたのは。
白い髭を生やした老人だった。
背は低い。
腰も曲がっている。
だが。
背中のカゴいっぱいにキノコを背負っていた。
◇ ◇ ◇
「誰ですか」
レイモンドが聞く。
「ワシか?」
老人は胸を張る。
「キノコじいさんじゃ!」
「そのまんまだな」
ニアが即答した。
◇ ◇ ◇
「さっき飛んでいった猪じゃがな」
キノコじいさんが言う。
「また戻ってくるぞ」
◇ ◇ ◇
「なんで?」
レンちゃんが聞く。
「原因が残っとるからじゃ」
◇ ◇ ◇
沈黙。
「原因?」
エリーが首を傾げる。
◇ ◇ ◇
キノコじいさんはカゴを下ろした。
その中から。
妙に光るキノコを取り出す。
◇ ◇ ◇
「これじゃ」
紫色。
ほんのり発光している。
どう見ても怪しい。
◇ ◇ ◇
「怪しいです」
レイモンドが即答した。
「怪しいのぅ」
キノコじいさんも頷いた。
「怪しいなら採るなよ」
ニアが突っ込んだ。
◇ ◇ ◇
「この辺りで最近生え始めたんじゃ」
じいさんは続ける。
「動物が食うと大きくなる」
◇ ◇ ◇
全員沈黙。
「それ絶対原因じゃないですか!」
レイモンドが叫んだ。
◇ ◇ ◇
「猪だけじゃないぞ」
じいさんが言う。
「鹿も大きくなった」
「熊も大きくなった」
「狐も大きくなった」
◇ ◇ ◇
「嫌な予感しかしないわねぇ♡」
レンちゃんが笑う。
「私は帰りたいです」
レイモンドは本音だった。
◇ ◇ ◇
その時。
巨大ウサギがじいさんに近付いた。
じいさんは慣れた様子で頭を撫でる。
「この子達も困っとるんじゃよ」
◇ ◇ ◇
「知り合いなんですの?」
エリーが聞く。
「森のみんなと知り合いじゃ」
じいさんは笑った。
◇ ◇ ◇
「つまり♡」
レンちゃんが腕を組む。
「そのキノコを何とかすれば解決ってことぉ?」
◇ ◇ ◇
だが。
キノコじいさんの表情が曇った。
「それがな」
「ん?」
「キノコの生えとる場所に近付けんのじゃ」
◇ ◇ ◇
「なんで?」
ガイルが聞く。
じいさんは遠くを指差した。
◇ ◇ ◇
森の奥。
そこから。
ドシン。
ドシン。
ドシン。
◇ ◇ ◇
木々の上から見えた。
巨大な影。
◇ ◇ ◇
「……今度は何ですか」
レイモンドが聞く。
◇ ◇ ◇
キノコじいさんは答えた。
「熊じゃ」
◇ ◇ ◇
全員沈黙。
数秒後。
「大きさは?」
レンちゃんが聞く。
◇ ◇ ◇
「家くらい」
◇ ◇ ◇
レイモンドは空を見上げた。
「帰りたい……」




