第15話 巨大ウサギ、まさかの依頼人になる
翌日。
一行は再び森へ来ていた。
「なんでまた森なんですか……」
レイモンドは朝から疲れていた。
「調査よぉ♡」
レンちゃんは元気だった。
元気すぎた。
◇ ◇ ◇
昨日吹き飛ばした巨大猪。
あれが畑荒らしの本命なのか。
それを確認するためである。
「足跡は続いてる」
ニアが地面を見ながら言う。
「追える?」
「余裕」
即答だった。
◇ ◇ ◇
一時間後。
一行は森の奥へ辿り着いた。
そして。
「……いましたわ」
エリーが指差す。
◇ ◇ ◇
そこにいたのは。
昨日の巨大ウサギだった。
子ウサギ達も一緒である。
「また会ったわねぇ♡」
レンちゃんが手を振る。
巨大ウサギは耳をピクリと動かした。
◇ ◇ ◇
だが。
様子がおかしい。
「怪我してる」
ニアが言った。
巨大ウサギの脇腹に傷があった。
昨日の猪につけられたものだろう。
「結構深いですわ……」
エリーが顔を曇らせる。
◇ ◇ ◇
その時。
子ウサギ達がエリーの足元へ集まった。
「きゃっ」
そして。
服の裾を引っ張る。
「え?」
もう一度引っ張る。
◇ ◇ ◇
「……助けてほしいのかしら」
エリーが呟く。
巨大ウサギは静かに頭を下げた。
◇ ◇ ◇
沈黙。
「お願いしてるな」
ガイルが言う。
「お願いしてる」
ニアも頷く。
「お願いしてるねー」
ルミナまで頷いた。
◇ ◇ ◇
「ウサギに依頼されたんですが」
レイモンドが頭を抱える。
「依頼料どうするんですか」
「そこなの?」
エリーが突っ込んだ。
◇ ◇ ◇
レンちゃんはしゃがみ込む。
巨大ウサギと目線を合わせた。
「猪に困ってるのぉ?」
巨大ウサギが頷いた。
ように見えた。
◇ ◇ ◇
「受けるわ♡」
レンちゃんが即答する。
「即決ですか!?」
レイモンドが叫ぶ。
「困ってるんでしょぉ♡」
「相手ウサギですよ!?」
「依頼人差別はダメよぉ♡」
◇ ◇ ◇
エリーが感動していた。
「流石レンお姉様ですわ!」
「褒められたわぁ♡」
◇ ◇ ◇
その時だった。
ニアが森の奥を見る。
「来る」
一言。
全員の空気が変わった。
◇ ◇ ◇
ドシン。
ドシン。
地面が揺れる。
昨日より近い。
明らかに近い。
◇ ◇ ◇
「……また猪か?」
ガイルが拳を握る。
「違う」
ニアは首を振った。
「もっと大きい」
◇ ◇ ◇
森の木々が倒れる。
バキバキと音を立てながら。
そして現れた。
巨大猪。
ではない。
◇ ◇ ◇
「……でかくなってません?」
レイモンドが呟く。
昨日より一回り。
いや二回りは大きい。
まるで小屋が歩いているようだった。
◇ ◇ ◇
「なんで強化されてるのよぉ♡」
レンちゃんが呆れる。
「知らない」
ニアも知らない。
◇ ◇ ◇
巨大猪は真っ直ぐウサギ親子を見た。
明らかに狙っている。
畑ではない。
人間でもない。
ウサギ達だ。
◇ ◇ ◇
子ウサギ達が震える。
巨大ウサギが前へ出る。
傷だらけなのに。
それでも守ろうとしていた。
◇ ◇ ◇
「いい親ですわ……」
エリーが泣きそうになっていた。
「だな」
ガイルも頷く。
◇ ◇ ◇
レンちゃんは首を鳴らした。
コキッ。
「依頼は受けたわぁ♡」
一歩前へ出る。
◇ ◇ ◇
「ガイル」
「おう!」
「今回は全力でいいわよぉ♡」
◇ ◇ ◇
ガイルが笑った。
珍しく。
本当に嬉しそうに。
「それを待ってた」
◇ ◇ ◇
巨大猪が突進する。
ガイルも走る。
真正面から。
逃げない。
避けない。
◇ ◇ ◇
そして――
ドォォォォン!!
森全体を揺らす激突音が響いた。




