第13話 巨大ウサギを追え
翌朝。
リンデ村。
よろず屋オネェ一行は畑に来ていた。
「これです」
村長が案内する。
畑は酷い有様だった。
野菜は引き抜かれ。
柵は壊され。
踏み荒らされている。
「これは酷いですわね……」
エリーが顔を曇らせた。
◇ ◇ ◇
「盗賊ではなさそうねぇ♡」
レンちゃんがしゃがみ込む。
足跡を見る。
大きい。
とにかく大きい。
「ウサギ」
ニアが即答した。
「分かるの?」
レイモンドが聞く。
「後ろ足の形」
ニアは地面を指差す。
「ウサギ」
確かにそれっぽかった。
だが。
「大きすぎません?」
◇ ◇ ◇
ガイルが足跡に自分の足を置く。
ほぼ同じ大きさだった。
「でかいな」
「でかいですわね」
「でかいねー」
「でかいわねぇ♡」
全員の意見が一致した。
◇ ◇ ◇
「夜だけ現れるんですか?」
レイモンドが村長に聞く。
「はい」
「昼間は?」
「誰も見ておりません」
◇ ◇ ◇
「なら巣がある」
ニアが言った。
「近くにいる」
「探せる?」
レンちゃんが聞く。
ニアは頷く。
「やってみる」
◇ ◇ ◇
それから一時間後。
一行は森の中にいた。
「待ってください……」
レイモンドが息を切らしている。
「なんで監査官が森を歩くんですか……」
「専属だから♡」
「その制度なくなりません?」
「ならないわねぇ♡」
◇ ◇ ◇
先頭を歩いていたニアが止まった。
「いた」
全員が足を止める。
「本当に?」
エリーが小声で聞く。
ニアは静かに頷いた。
◇ ◇ ◇
木々の隙間。
その先の草地に。
いた。
白い。
巨大な。
モフモフの。
ウサギだった。
◇ ◇ ◇
「でかっ!」
レイモンドが思わず叫んだ。
本当に牛くらいある。
いや。
牛より少し大きい。
「ウサギですわ……」
エリーも呆然としていた。
「ウサギだな」
「ウサギ」
「ウサギねぇ♡」
誰がどう見てもウサギだった。
◇ ◇ ◇
その時。
巨大ウサギがこちらを見た。
目が合う。
数秒。
沈黙。
そして。
巨大ウサギは――
逃げた。
「逃げた!」
ガイルが叫ぶ。
「追うわよぉ♡」
レンちゃんが走り出した。
◇ ◇ ◇
「待ってください!」
レイモンドも慌てて追う。
「なんで私まで!?」
「監査♡」
「万能な言葉じゃないんですよそれ!」
◇ ◇ ◇
森の中を駆け抜ける。
巨大ウサギは速かった。
とんでもなく速かった。
「待てぇ!」
ガイルが追う。
「待たない」
ニアが即答する。
「そうだったな」
◇ ◇ ◇
その時。
巨大ウサギが飛んだ。
ピョン。
ではない。
ドォン!!
だった。
地面が揺れた。
「跳躍で地面が揺れたんですが!?」
レイモンドが叫ぶ。
「元気ねぇ♡」
レンちゃんは楽しそうだった。
◇ ◇ ◇
だが次の瞬間。
巨大ウサギは突然立ち止まった。
そして振り返る。
「……あれ?」
エリーが首を傾げる。
逃げない。
むしろ。
何かを守るように前に立っていた。
◇ ◇ ◇
その後ろ。
草むらの中に。
小さな白い塊が見えた。
「子ども……?」
エリーが呟く。
巨大ウサギの後ろには。
数匹の子ウサギが隠れていた。
その瞬間。
一同は顔を見合わせた。
「これ……」
レイモンドが嫌な予感を覚える。
「もしかして」
レンちゃんがニヤリと笑った。
「話が変わってきたわねぇ♡」




