表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
愛とジェラシーのハリケーン
PR
94/125

歩け歩け、元気に歩け

 明るい色のパーカーにフリルミニスカートはいいけど、スキンスーツには問題があるな。通気性が悪すぎ! スーツの中に汗が溜まってきたような感じがする。

 胸元から、もわぁぁんっ… と、湿った空気が上がってきたよ。

 そして、ついにその時がきた。が… ガス欠だ! ちょっと休ませてくれぇ。


「おにい、大丈夫?」「……っくは…… スタミナ切れだ」

「もう少し、もう少しだから頑張って……」

「ちょっと休ま… おわっ!?」


 スタミナ切れで座り込んでしまった身体が、いきなり動き始めたんだ。

 それもしゃきーん! って効果音が聞こえるくらいにね。

 同時に、ディスプレイに文字列が流れ始めた。


 ──Gratias tibi ago quod exspectas.

   Nunc inspectionem externam vestis cutaneae incipiemus.

   (お待たせしました。これよりスキンスーツの外部制御を開始します)


 ポコ君だ。来てくれたのか。超回復スキルのお陰で戻りつつある体力を使って、ポコ君が身体を動かしてくれる。これで少しはがんばれそうだ……

 しばらく国道を歩いているうちに、雑草が乱雑にはぎ取られた所を見つけた。


「SUVは、この辺に着陸したのかな」」


 SUVはこのあたりで地面に地面に衝突して、バウンドしながら滑って行ったんだろう。後ろを振り返ると、雑草がなくなって舗装が帯状に見え隠れしている。


「ほーんと、マジ良く生きていたって感じぃ?」


 まったくだ。飛行中のSUVが撃墜されなかった事と言い、不時着したとはいえ誰も怪我をしなかったんだ。

 こういうのを不幸中の幸いと言うべき…… なんだろうな。


 不思議な事に、僕はこんな具合に災難に遭う。でも被る被害はそれほど深刻なものじゃない。それこそ、なんで助かるんだ? と言うのもあった。

 今回だってそうだ。

 道路についた痕跡から考えれば、SUVは地面に叩きつけられていた筈だよ。

 車体がばらばらに砕け散っていても… おかしくはない。


 これこそがわが友──不幸──が与えてくれたスキルのお陰かも知れない。

 そうだよ。スキルだよ。ラノベなんかによく出てくる奴。

 スキルは想像の産物なんかじゃない。現実に存在するんだ。そうじゃなかったら今までの出来事の説明がつかない事が多すぎる。

 で、だ。僕に目覚めたスキルは…… 大きく分けると2つ。


 ひとつは… 超回復。


 どんな怪我──たとえ複雑骨折でも──4時間あれば痕跡も残さずに治ってしまうんだ。普通の人なら骨折の痕跡は、場合によっては数年は残るそうだけどね。

 不気味に思えるけど、この超回復は普段から役に立っている。

 いつでもお肌はすべすべなのは、あまり… いや、ちょっと嬉しいかな。


 そして、もうひとつは…… 危険察知。


 第六感とか虫の知らせと言うやつ。それもかなり精度が高いんだ。おかげで災難には会うけど本当にヤバい──致命的な状況に出会わないで済んでいる。

 いま僕がこうして生きているのが証拠だよ。

 マグネトロンバーガーの厨房の爆発に巻き込まれたのに、僕は生きているだろ。


 こんな感じなんだけど、分かってくれるかな。


「まだか?」「冬夜くんは限界にゃ」「でもぉ、もう少しって感じぃ?」


 周囲を見回すと、ススキだらけの雑木林の中に、人の住んでいた名残りが見える。

 風雨にさらされて崩れてしまった建物や、ツタの山と化したコンクリの建物だ。

 たしか友里さんはこう言っていたよね……


 ──20年以上も前に放棄されて。その…… 人口が足りなくなったので…


 だとしたら、こ風景にも納得がいく。

 でも、反対に隠れる場所なんか、どこにも無いって事だよね。

 ならば、僕たちはどこに向かって逃げている? 安全地帯はどこだ?


「大丈夫だよ、おにい。あーしには分かるんだよ」「そうなのか?」


 あそこから逃げ出して、そろそろ30分くらいか…… 博士とパイロットスーツ女たちの喧嘩は、収まっただろうか。

 僕たちが抜け出したのに気が付いた友里さんも追いついている。

 それなら博士たちもパイロットスーツ女たちも、気が付いているだろう。


「ポコ君、このあたりの地図。出せる?」


 疲れすぎて、かすれた声しか出せなくなっているけど、ポコ君は僕が何をさせたいのか伝わったようだ。スキンスーツとゴーグルは、小脳からの信号をポコ君経由で筋肉に送り込むための通信端末だ。副産物として思考制御も出来たりする。

 博士たちに言わせると、全くの偶然と言うヤツらしい。


 地図を見ると、村の出口までは… あと2キロ。

 その手前… ここから500メートルも行かない所にお寺の記号…… か。

 お寺の建物なら大きくて頑丈だから崩れ残った建物があるかも。


 美月が目指していたのは、ここなのか?

ポコ君は冬夜くんの言葉を聞き分ける事が出来ます。

でも、ポコ君にはボイスシンセサイザーが実装されていないので、冬夜くんに話しかけるためにはVRゴーグルに文字列を送信しなくてはならないのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ