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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
愛とジェラシーのハリケーン
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気がつけば、お約束?

 うわあ、うわあ! 

 パイロットスーツ女は、眉間にしわを寄せながらも試作品を飲み切っちゃった。

 いいかい? メインはムラサキウマゴヤシをすり潰した汁だよ、あれは!

 僕? こっそり大地に返してあげたけど…… ポコ君には普通のものを取ってきてもらおう。今はフルーツ味の気分かな。


 視線入力式にも慣れてきたから、こんなの一瞬だい。


 ──Poco, da mihi, quaeso, cibum liquidum sapore fructuum.

   (ポコ君、フルーツ味の流動食をお願いね)


 さあ、どうだ?


 ──Rogerius est(了解)


 よしっ! これでお腹がすいて困る事はなくなった。

 だけど、問題はこの事実だ。


「こうして見ると、冬夜くんは男性には見えないな。なかなか見事な変装だ」

「ほんまやねぇ。あのごっついゴーグルを外してくれんかしら」


 ねえ、博士たち。これって拙くないの?


「この2人を縄ごときで拘束できないのは初めから分かっているのよねぇ」

「うむ、そう言う事だ。この『だ・い・せ・ん・ぱ・い』達は、そういう事には長けているのだよ」


 うわあああ! なんで一緒にお茶を飲みながら寛いでいるんだよぅ!

 パイロットスーツ女って追手じゃないの? ここに着陸したのも、機関砲で撃たれたせいだよね!


 こうなったらポコ君。君だけが… って、見ちゃいねぇえ!

 たしかに埴輪も可愛いけど、僕のサポートが最優先の筈だよね?

 起動した時のメッセージ内容、きっちり憶えてるよ?


 ──Copiae nostrae dispositae sunt.

   Operatio quovis tempore incipere potest.


 VRゴーグルの視界にサブウインドウが開くと文字列が表示された。

 なになに、『戦力は配置済です。いつでも作戦は開始できます。』だってぇ?

 風景を表示しているメイン画面にいくつかの赤い矢印が追加されて……


 矢印の下をよく見ると、埴輪が潜んでいるじゃないか。それもカムフラージュ用に集めてきた草を体に巻き付けてる。たしかあの時、誰も埴輪の気配を察知できなかったから、完璧な奇襲を狙えるね。


 うん、これなら安心だ。 ……なんて言うかあぁあ!

 もともとが田んぼだったからか、シロツメクサのような背丈の低い雑草しか生えていない所だ。そこにススキの束が現れたら誰だって気が付くわ!

 モロバレじゃないかあ…… あれ、気が付いてない?


「……せりざわぁ! いまのひとことは聞き捨てならん。誰が大年増だって?」

「磐手大尉… 失礼、今は少佐だったね。あなたたちはアラフォーにもなって自分の年齢を自覚できないのは、極めて大きな問題だと思わないのかね?」

「芹沢はん、たいちょとだけは一緒にせんといてくれてや!」「なんだとぅ!」


 ああああ…… また始まったよぅ……

 じわりと背中に冷や汗が浮かんできた。今度は冗談抜きでヤバい。

 スキルが大声で叫んでいるよ。早く逃げないと巻き添えだってね。


 でもどこに逃げれば良いってんだよぅ……


 つんつん、つんつん。


 ん? ああ、美月か。

 どうした、服のすそをひっぱ…… しいぃいって…… わかった。

 音をたてないように、少しづつ離れればいいんのか。でも……


 10メートル先の国道に出るまでは、かなり長い時間がかかったような気もする。

 ふと後ろを振り向くとパイロットスーツ女と博士たちは、何やら言い争っているのが見えた。年増とか、小便臭い小娘とか、罵詈雑言の応酬のようだ……

 うっわぁああ、なんかこえぇよぉ……


「おにい、こっちだよ!」


 そんな中でも美月は冷静だ。小声で僕を促しながら、この場を後にする。

 足元は雑草に覆われ始めているとはいえ、1メートルくらいの幅で舗装が見えている所もある。そこを走ってい…… る……


「はあ、はあ……」


 進めたのは200メートルちょっとくらいだった。息が切れて……

 決定的に運動不足だ。芹沢博士の理学療法で筋肉は動くけど、半年以上も寝たきり生活を続けていたのは致命傷だ。


 スタミナが切れた。もう歩けない……

お医者様の健康指導でラジオ体操を始めて…

これがまたキツいのなんのって。2日であきらめました。

ふん、3日坊主なんて言わせないんだからねっ!

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