我慢は美徳ではない!
F市のはずれにある村の田んぼ… だった所にはシュールな風景がががが。
埴輪たちがどこからか拾ってきた石で、かまどをこしらえている。薪になるような枯れ枝とか、廃墟と化した家から拾ってき鍋を磨いている埴輪もいる。
僕たちはレジャーシートとターフを広げながら。その様子を眺めていて……
その脇には縄で縛られた2人のパイロットスーツ女が転がっている。
「さあ、ちょっと遅いけど朝ごはんにしようじゃないか」
今日はいい天気だな~あ。
この時期にしては暖かい方だ。絶好のピクニック日和だと思わないか?
僕の心の平安のためには、そういう事にしておいた方がいいと思うんだ。
現実逃避って? 知らないなぁ。それって仏教用語か何かな?
「はい、おにいの分」
美月がクーラーボックスから黄緑色のテトラパックを出してくれた。
って、 いつもの通り、オーヌカ製薬のカロリーリキッドだけどね。
でも黄緑色のパッケージは見た事がないなぁ。いつものは黄色いパッケージで、製品名の部分の色が違うだけだ。そこで味が分かるようになってるんだ。
プレーン・チョコレート・フルーツ・チーズ・メープル… ってね。
でも黄緑色は… 初めて見るなぁ。
山ノ谷博士の笑顔が、ものすごーく気になるんだ。なんか嫌な予感がしてきた。
大丈夫だよね? 毒なんか入ってないよね……
「大丈夫よぉ。カロリーよりビタミンとミネラル分を強化した処方なだけだから」
「はあ、それでは……」
いつものように、パッケージからストローをはずして… やけに太いな。
で、パッケージにプスっとな。
「……いただきmぶふぉぉおお!」
なんだなんだこれは! ひたすらに青臭いぞ? まるで刈り終えた芝生のよう… いや、もっと酷いにおいだ。そして、ひたすらに不味い! 不味いんだ!
「冬夜くん、味はどうかね? メーカーにレポートを出す約束になっていてねぇ」
そんな爽やかな笑顔にが騙されないぞ!
新製品──いや、試作品というより我慢大会のネタじゃないの?
「すんごく不味いです。味も香りも最悪ですね」
「そうかぁ… ムラサキウマゴヤシは採用見送り、と……」
何を手帳に書き込んでるんですか!
その様子だと、まだまだ持っていそうですねぇ? 試作品とやらをねえ…
あ、目をそらした!
「これは栄養価は高いので、宇宙飛行士に持たせようと思っていたのよねぇ」
ねえねえ山ノ谷博士…
ムラサキウマゴヤシって… 名前からして、とっても胡散臭いんですけどお?
「では冬夜くん、アルファルファと言えば聞いた事はないかね?」
「あーし知ってる! サラダに入ってるぅ、糸みたいなモヤシでしょ?」
「美月ちゃんは物知りだねぇ。だがサラダ用のはルーサンと呼んでいるのだよ」
アルファルファとはタンパク質、ミネラル、ビタミン類が豊富に含んだマメ科の多年草だ。そのスプラウト──ぶっちゃけモヤシみたいなもの──はサラダ用として食卓に上がっている。
そして十分に成熟したムラサキウマゴヤシは牧草の中では最高級の品種である。
しかし、それが人間が食べるのに向いているかと言われれば、それは別の問題だ。
かつて粉末化したものを健康食品として売り出したメーカーもあった……
しかし、所詮は牧草だ。
「ユーグレナというのもミドリムシ… まあいいか、それにしても酷い味だな」
「スミノフ軍の戦闘糧食かて、ここまで酷うはおまへんよね」
そうでしょ、そうでしょうとも。
スミノフ軍の戦闘糧食の事は良く知りませんけど、戦闘糧食って、基本的に美味しくないですよね。なんかこう、味が滅茶苦茶に濃いとか唐辛子かコショウがきつすぎて泣くほど辛いとか……
「……ってえぇえええ?」
やばい事になってるじゃないか!
縄で縛られていた筈のパイロットスーツ女が2人とも、レジャーシートの上で僕たちの事を見てるんだ。
それもバスケットから試作品を出して、試食してるんだよぉ?
日本で手に入る戦闘糧食(ミリタリーレーション。略してミリメシ)は、けっこう美味なのです。イギリス軍のは必ず紅茶セットが付いているし、自衛隊のは、何といっても缶詰ごはんでしょうか。おかずの缶詰は、沢庵漬けが美味しかったです。




