荒ぶる乙女ども
飛行機から降りてきただろうパイロットスーツ姿の女性…… 見たとこ母さんと同じくらいかな。その人は、うっすらと笑顔を浮かべながら話しかけてきたんだ。
「とにかく、全員が無事でよかった。よくぞ冬夜くんを守ってくれたね」
そう言って、ふんわりと抱きしめてくれたんだ。
「もう心配しなくてもいいのよ」「ええとぉおお?」
「あんな野蛮人たちと一緒では、さぞ心細かったでしょう。もう大丈夫よ」
……聞いちゃいねぇ。
こりゃ相当、思い込みの激しいというか、唯我独尊な人に違いない。そうじゃなかったら、まず最初に名前を聞くくらいはする筈だもん。
嫌がる美月を無理矢理に抱きしめて…… あ、こりゃ死んだか?
「……ときに、ひとつ聞きたいのだが?」「何かしら?」
ふむ、知り合いっぽいな。
博士たちとは、お互いに喧嘩腰だけど雰囲気がね。特に芹沢博士とだけど。
僕の友達は不幸だけど、そいつのお陰でいくつかスキルが身についている。
そのひとつが、危険をかぎ分ける──何かを察するというモノなんだよね。
そのお陰で生命に関わるような災難でも、かすり傷程度で済む事が多いんだ。
まさか、僕があそこで命を落とす事になるとは思わなかったけど。
スキルが頑張って仕事をして、その結果がこれだとしたら、ちょっとなぁ……
おっ、芹沢博士が突っかかっているうちに、山ノ谷博士が美月を奪取に成功。
いいチームワークだね、うん。
「その男性を引き渡して欲しいんだが。これは男性護衛官としての……」
「違うもん!」「えっ!?」
あ、生きてたか、美月。
さっとパイロットスーツ女から離れた美月は、ぷるぷると、何かをこらえるかのように身体を震わせながらうつむいている。
あれは相当、怒っているなぁ。
「だっ、だが…… この野蛮人共と… あれは看護婦で、防護服を着ているのも病院関係者ではないのか? なら残された君が『冬夜』くんではないのかな?」
「あーしは、オ・ン・ナ・ノ・コ! だもん!」
うわあ、地面や近くの壊れかけた建物から、見た事もない、どんよりとした何かが染み出してきたよ。それは顔のない… でも何となく人間のような姿をして……
あれ…… 誰も見えてないの?
「……いいのよ、もう。そんな事をしなくても、あなたは…」
「あーしはぁ、超絶かっわいい、み・つ・き、ちゃんだし!」
影の中から姿を現したのは、黄色いヘルメットをかぶった埴輪の群れだった。
いん、どう見ても工事用のヘルメットだね。前の方に緑色の十字マークもある。
でも、その手に持っているのはもっと物騒な──左手に盾を、右手には三つ又の槍を構えている。
そいつらは美月を守るように、パイロットスーツ女の前に立ち塞がった。
「はっ!? なんだ、こいつらはっ!」
……ようやく異変に気が付いたか。
なんか鈍いというか、周りが見えていなかったのかな。友里さんは全身の毛を逆立てているよ。あーあ、耳まで…… こりゃあ、そうとう警戒してるぞ。
でも、何となくわかる。不幸という名の友達がくれたスキルが言っている。
あれは決して悪しき者──悪霊とか怨霊、魔物のたぐいじゃない。
いちばん慌てているのは、パイロットスーツ女… だった。
「こらぁ、野蛮人! あなたも講書教授なら、こいつら何とかしなさいよっ!」
「ほほぅ? それが人にモノを頼む姿勢かね? まあ、私には被害がなさそうだからどうでも良いのだがねぇ」
野蛮人呼ばわりされていた芹沢博士は、じつにイイ笑顔で腕組みをしている。
やっぱり、この人達はと博士たちは知り合いだね。
「きゃぁ!」
その場に立ち込めていた緊張は、鋭い… でも、どことなく可愛い悲鳴がすべてを吹き飛ばした。
「!?」
悲鳴が聞こえた方向を見ると、パイロットスーツ女が友里さんに組み伏せられているのが見えた。そう言えば、飛行機から降りてきた人はもうひとりいたなぁ……
おっ? 頑張るな。友里さんを振りほどくと回し蹴り… 外れたか。
それに続く鋭い蹴りはフェイク、か。本命はその反動を利用した裏拳だけど。
「甘いにゃ!」「ぎゃあああ!」
うん、友里さんを怒らせないようにしよう。
絶対…… 絶対にだ!
全天候航空機・秋津ですが…… 連絡機型と電子作戦機は複座がデフォ。
連絡機の方はコンテナ式のユニットもついていまして、貨物輸送コンテナなら無理をすればMSVも積めそう。他にも色々ありますが、そのあたりはおいおい……




