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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
動け身体よ、身体よ動け
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プリティ・マシン

番外編(登場人物のまとめ的なもの)を18時に投稿します。

本編との関係は別として、裏設定とかネタバレがあるかも。

みなさまよろしく。

 びっくりした。

 いや、そんな陳腐な言葉で表して良いような出来事じゃない。


 祖父は若いころに異世界人… 違うな、遭ったのは未来人だったのだろうか。

 2020年から来たと言っていたが、たぶん2020年後の未来かも知れないな。

 まあいい、少なくとも今日が2020年よりも後の日付というのは間違いないんだ。

 なぜなら、今日の日付は2026年2月の…… ああ、3日だね。


 ああ、未来人の話? それは本当の事だとも。もし彼らから知識を伝授されなかったら我々の遺伝子に関する技術は、ここまで進んでいなかっただろうねぇ。

 このことを知っているのは、限られた人物だけ。いわゆる国家機密というやつだねぇ。


 それにしても、びっくりしたのはだね…… 未来人と遭った人物の孫──つまり私が異世界人と出会うことになろうとは夢にも思わなかったというだけなのだよ。

 しかしねぇ… いっそ宇宙人だと言われた方が、ショックは少なかっただろうねぇ。

 いやいや、美月ちゃん… いや、サーリア神と言った方がいいか。

 彼女の言葉を疑う理由はないのだが。


「山之谷博士は…… どう思うかね」


 美月ちゃんの話を聞き終わった我々が、ようやく絞り出したのはその一言だけだ。

 まさか泉水 冬夜(いずみ とうや)という少年が、そのような存在だったとは夢にも思わなかったんだ。彼の遺伝子解読結果が、何よりの証拠なのだけどね。


 彼女の話によれば、彼は厳密には異世界人ではないという。

 異世界の冬夜くんと我々の世界の冬夜くんが一体化した──んんん。どう説明すれば分かりやすいだろう……


 そうだ、我々のいるこの世界? 時空… を世界線アルファ、冬夜くんのいた異世界を世界線ベータと呼ぶことにしようか。


 世界線ベータの冬夜くんが、こちらの世界の冬夜くんと入り混じってしまったわけだ。

 遺伝子情報の違いは、いわゆる『差分ファイル』とでも考えるしかない。

 それこそ神の奇跡だが、美月クンの話が本当の事だとすれば、ある程度の説明もつく。

 いや、信じるしかない。冬夜くんがもたらした『差分ファイル』は我々にとっても希望の灯になり得るのだから。


「……つまり、今の冬夜くんは異世界人、という認識で良いかも知れないわねぇ?」

「そーいうワケ。この世界に来たのだって、単なるグーゼンってね」


 すべてを話し終わったサーリアは内心の緊張を隠しながら、のんびりとした口調で話を続けている。仮に彼らが自爆した場合は冬夜と自身を結界で守るために。

 最初の爆発さえ凌げば、生き延びる芽はある。あとは臨機応変に対処するしかないが。


「確かにねぇ。美月ちゃ… サーリア様と言った方がいいかしら。あなたが上位の神だとすれば、いろいろと納得が出来るのよねぇ」

「そうだね。だとすれば 小坂部(おさかべ)姫の振る舞いも、わかるよ」

「姫様が美月ちゃんを見たとたんに怯えていたにゃぁ。あんな姿は初めて見たにゃ」


 ぴん、と、車内に張り詰めていた空気は、いつの間にか消え去っていた。


「そういう事であれば、なおさらねぇ。彼らに冬夜くんを連中に渡せないわぁ」


 ほんわかとした山之谷博士は、くくく… と含み笑いと共に目を細めた。

 それは、これから起きる事が楽しみで仕方がないという表情だ。


「ふふふ。まずは後ろのMSVを何とかしなくちゃ… ねぇ」


 後ろを走る2台のMSVとの距離は、すでに50メートルもない。

 このままでは追い付かれる事は間違いない。だって、この車の最高時速はせいぜ……

 ん? しゃぁーって、何かが漏れているような音が…


「わ・わ・わ?」


 1台のMSVが急に蛇行を始めたかと思うと、横転してガードレールにぶつかった。

 もう1台は、それに巻き込まれまいと急ハンドルを切った結果、バランスを崩して防音壁に衝突すると、どこかに姿を消した。


「ふふふ、特製のスリップ・オイルの効果は抜群だねぇ」「えええええ?」


 見ると、芹沢はぐふふ… と笑いながらバックミラーをのぞき込んでいた。

 してやったりとばかりに満面の笑みを浮かべる芹沢の姿は、悪の組織の大幹部のようだったと、美月の日記には記されている。


「さぁて、一気にここを離れるわよぉ」


 山之谷はそう言うと、車を一気に加速させる。

 同時に、がくん、と車体の後ろが揺れると、ふわふわと揺れ始めた。

 車体のあちこちから、モーターとギアボックスが動くような音が聞こえ始めて……

 はっとして窓の外を見ると、景色は飛ぶように後ろへと去っていくのが見えた。


「山之谷博士、加速は順調のようだ。速度は… V1…… VR… いまっ!」

「うふふ、主翼の展開も問題無いみたい」


 ええと、主翼…… って。そんなの自動車についてた?


「じゃあ、行くわよぉ」


 山之谷が何か操作したらしく、高速道路を疾走していた車体はふわりと浮き上がると、そのまま一気に上昇を始めた。

V1、VRなどの速度表記ですが、こういう意味だそうです。


V1:飛行機が滑走を始めて、離陸を中止できない速度。

VR:飛行機が離陸できる速度。機首上げ操作をすれば機体が浮かび上がる。

V2:安全に上昇を始める事のできる速度。ここまでくればもう大丈夫。


と、いうわけで、この章はここでひと区切りとします。

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