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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
動け身体よ、身体よ動け
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スキンスーツ、始動!

 世界史上の謎というのがある。

 たとえばプレ・インカ期のクマプンク巨大石造遺跡なんかだ。あの巨石──最低数トンもある岩石に施された超精密加工は現代でも無理かも、って言われている。

 要は誰がというより、どうやったら出来るんだ? ってやつ。


 イビム帝国にあった原子核分裂反応弾の研究所の消滅もそのひとつに数えられるかもしれない。研究所のあった所は、どこからともなく飛来した──目撃者はいたけど、細かい事は誰も憶えていない──巨大な飛行物体が何かをしたらしく、研究所を中心とした半径50キロは巨大なクレーターになったそうだ。


 そのクレーターの縁が崩れて海水が流れ込んだのは、僕が生まれたころの話だ。


「そういう訳だよ。私は彼とは違って、極めて善良な科学者だからねぇ」

「嘘だ!」

「いんや、嘘じゃないとも。私が作ったのは君の服だけだよ?」

「マジで服なんですか? これが?」


 今はオッペンハイマーの話なんかどうでもいいや。それよりも今は、この事実だ。

 グラドルとかセクシーな女優さんが着るような、コレがまともな服だと?


「ねえねえ、おにい。夏コミだともっと派手だよぉ…… これなんか、どぅお?」

「なぁっ!?」


 見せてくれたスマホの画像は……うん、派手だな。健全な男子がサルになっちゃうくらいには刺激的だよ。というよりもさ、これっておまわりさんに捕まらない?


「冬夜くん。あんな鶏ガラの衣装に比べたら、このスキンスーツは十分に地味だという事は分かってもらえると思んだけどねぇ?」

「いや、地味というか、十分に邪悪なものを感じるんですけど?」

「くくくくく…… 諦めるにゃ」


 ぐぬぬぬぬ……


 他の服を寄越せと言っても、彼女たちは首を横に振るだろう。

 そりゃあ、あのニマニマを見るまでもない。それに、僕の身体を動かす事が出来るとすれば、このスキンスーツしかないのも事実なんだ。


 あれには、僕の筋肉に電気刺激を与えるための電極が組み込まれている。

 電極の制御は、こけしサーバーがやってくれる… はず!


「冬夜くん。今こそ再び歩くことが出来る日が来たのだよ」

「今度こそ本当に、大丈夫でしょうねぇ?」


 ここは腹をくくるっきゃあ、無いんだよね……

 残る問題は、まともに動いてくれるのか? って事か。


「うむ。昼間のデーターを元に、ソフトの方は改良隅済みだ。それに見たまえ。これが君のためだけに、私たちが精魂込めて作り上げた君のための新型スキンスーツだ!」


 人間の筋肉とは、大別するとと不随意筋と随意筋の2種類に分けることが出来る。

 前者は意識しなくとも動く──心臓や内臓周りの──筋肉のことだ。自律神経(交感神経、副交感神経)によって制御され、生命維持や体内環境の調整を行っている。


 そして、随意筋は運動神経によって制御されているため自分の意思にで動かすことができる筋肉のことだ。そして冬夜の場合は、脳からの命令が運動神経を通る過程で、どこかに消え去ってしまう……


「精密検査の結果、脳の… 特に運動中枢や神経系、筋肉に異常はないんだ。そこで私は考えたんだ。灰色の脳細胞をフルに働かせて考えた。大好きな夜食の五郎家ラーメンを食べるのを忘れるくらいに、一生懸命に考えたのだよ」


 えええ? マジですかぁ? 夜食でアレを食べるって……

 スープは刻み背油とラードでギトギト、そこに大量のラー油で煮込んだ野菜をがっちり乗せた醤油とんこつ味の…… アレですよね。


「いやいやいや。私の好みは、みそバター味…… いや、今はそんな事はどうでもいいだろう。あらゆるトラブルねぇ、原因さえ分かれば、対策は簡単なのだよ!」

「それが、この新型スキンスーツなのですっ!」


 2人は、ばばーん! って、効果音が似合いそうな決めポーズで話を締めくくった。

 本当はもう少し自慢話を続けたかったんだろうけど、山之谷博士が来たからね。

 そして、この新型スキンスーツを着て、病院を…… 脱走する事になったんだ。


「さあ、冬夜くん。立ち上がりたまえ。なに、そんなに難しい事じゃない。普通に体を動かそうとするだけでいいんだ」

「そうですよ、脳が出した命令はVRゴーグルが拾ってくれますから」


 無理を言わないでよ。これは『言うは易し』ってやつじゃないか。

 ゴーグルを経由してこけしサーバーが小脳のサポートをして、スキンスーツに組み込まれた電極群を制御する。それで身体が動くと言うけど……


「おにい、頑張ってね」


 窓を背にして立つ美月は、薄く笑顔を浮かべて…… 何だか雰囲気が違うな。

 月の光を背に受けて佇む美月は、まるで… あの邪神──フェイリアそっくりだ。

 あの女神さまの方が出るとこはすーんごく出てたし、くびれていたけど。


「……むぅ。おにいが失礼な事を考えているような気がする」

「い… いや、気のせいだと思うぞ」

真夜中に食べるラーメンは、ほんとうにおいしい。もぐもぐ……

いや、食べるのは駄菓子屋さんで売っているアレですけどね。

アレって、時々食べるから美味しいんですよね。

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