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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
動け身体よ、身体よ動け
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隔離病棟は誰のため

番外編(登場人物のまとめ的なもの)を18時に投稿します。

本編とは関係がありませんが、裏設定とかネタバレがあるかも。

みなさまよろしく。

 ──ここから脱走するのにはベストなタイミングだね。


 芹沢博士は、キリっとした表情で妙な事を言い始めたんだ。

 退院じゃなくて、脱走だよ?

 それも、こんな時間──午前2時半なんだけど。


「脱走とかはいいけどぉ、おにいは動けないしぃ。どうにもならないって感じ?」


 そうなんだ。僕は全身マヒで療養中の身なんだよね。


 せっかくの新型スキンスーツだって、性能は未知数だ。僕が昼間、どんな目にあったか忘れてないよね?

 その後の調整で、問題ないって話だけど、動作試験すらしていないし。


 僕はどこにでもいる高校生のひとりに過ぎないはずだよ。

 なんでこんな目に会わなきゃならないんだろう……


「いやいや、キミはただの高校生じゃないのだよ、冬夜くん」

「えっ?」

「私がキミの遺伝子情報を解読したことは知っているだろう?」

「……その結果、出来上がったのはイミューン… ですよね」


 芹沢博士に初めて会った時に、僕は色々とサンプルを抜かれていたらしい。血液をはじめとして、色んなあれこれまでをね。

 目的は人間ドック──精密検査と病理検査──だったらしいけど、遺伝子サンプルの分析までやっていたと聞かされたのは8月の終わりころ…… だったと思う。


「遺伝子解析の結果、キミは純粋な男性──それも希少な人物だと分かったんだ。それも感染していない。これは奇跡以外の何物でも無いんだよ」

「そう言えば、感染ってなにかなぁ… おにいって何かの病気ぃ?」


 のほほ~ん、とした口調で美月が尋ねてきた。


 ったく、妙に鋭いところがあるかと思うと、能天気なボケをかましてくれちゃって。

 いや、あれが地なのかも知れ…… いや、間違いないだろうな、うん。

 うんむむ…… はっつ!? ちょっと待とうか。感染…… だってぇ?

 そう言えば、天野さんも感染って……


「ひょっとして僕はヤバイ病気にかかったとか?」

「いやいや、この病棟自体が隔離施設なのは間違いないのだが……」


 隔離施設… という事は、僕はかなりヤヴァい病気──チフスとかペストとかの法定伝染病──ってやつだよね?

 それなら看護のための人材を絞った理由もわかる。

 ヤヴァい病原体──細菌だかウイルスだか分からないけど──が、病院の外に漏れたら大変な事になるだろう。


 赤色帝国の細菌研究所からウイルスが漏れたのは、今から5~6年くらい前だ。赤色帝国に買収された世界保健機構の長官が、パンデミックの宣言をした時には世界中で死者が出ていたんだよね……


「その反対だよ、冬夜くん。この病棟は君を感染から守るための隔離施設なのだよ」


 芹沢はいやいや、と言うように手を振りながら、にぱぁっと笑顔を浮かた。


「そうですよぉ、この病室区画に入るために私たちは予防接種から腸内細菌の入れ替えまでしたんですから… すごく大変だったんですよ、あれ」


 と、言葉を継いだ岩本女史も、輝かんばかりの笑顔を浮かべている。 

 ええとぉ、細菌感染の対策でそこまでやるって…… なんか大袈裟な事になっていませんかね。僕って、そんなに病気に弱いなんて思いませんでしたけどぉ?


 ……と、いうよりも、そこそこ病気には強い方だ。

 悪性のインフルが流行した時だって無事だったし、怪我とかの治りは人一倍早いんだ。

 仮に他の人が骨折するようなダメージを食らっても、せいぜいのところ骨にひびが入る程度で済むんだもの…


「まあ、それはいいんだ。とにかく病院を出てからからにしよう。いいね、冬夜くん」

「何がどうなっているのか、きっちり説明してくださいね?」

「もちろんだとも。じゃあ…… そうと決まったらさっそく準備をしようか……」

「……何ですか、これ」


「うむ、菱見くん。君にはこれが何に見えるかね?」

「ええと…… なんとなく昼間の全身タイツの完成品… ですか?」


 ごそごそと、別の箱から何かを取り出しているようだけど、残念ながら僕には何をしているのかさっぱりだ。部屋の隅の方で、こっちに背中を向けられていてはVRゴーグルの視界が広くても見えな…… まさか、僕がそれを着るの?


「ちょっと待って。まさかそれって……」「もちろん君が着るんだが?」


 芹沢は何を言っているんだと言いたげに、あからさまに眉をひそめた。

 無言のまま、冬夜のカバーオールをむしり取ると、スキンスーツを着せ始めた。


「昼間のデーターを基に、調整は完ぺきに済ませてあるから大丈夫ですよ。これを着れば、冬夜くんも自由に歩けるようになる筈なんです」


 それはいいけどさ、いや、とっても有り難いことだけど。

 それに身体の線がすごく強調されるデザインですよね、それ。


 あと、イミューンが胸に張り付いたままですけど……



芹沢博士が作ったのは、冬夜くんの神経節を刺激する電極を内蔵したスキンスーツです。

自分で考え出しておいて、こんなことを言うのも難ですけど……

デザインはちょっと表現するのが…… きゃぁぁぁ。

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